第11話

 僕が目覚めてから、早くも二週間ほど経とうとしており、最初は動くことさえ辛かったこの体もかなり回復して今では普通に歩ける程度には回復している。


 クロエや、この家のメイドさんたちの真摯な介護、それとお見舞いに来てくれる彼女たちのおかげもあると言えるだろう。


 ミアと言えば、謝りに来た日の次の日から早速お見舞いに来て僕の周りの世話をしてくれていたり、回復魔法をかけてくれたりしていた。僕が何かしようとする度に、ミアが先回りしてしてしまうため僕が自分ですることと言えばトイレくらいなものだろう。何から何までされて申し訳なくなり、自分で食事をしようとすると


「ご、ごめんね、ロア。わ、私にお世話なんてされたくないよね?ごめんなさい、調子に乗ってしまいました。ごめんね、すぐ消えるから、ね?こ、これで許して?最後までロアの邪魔してごめんね?」


 とそう言って喉に果物ナイフを当てようとしたものだからすぐに止めて、ミアに世話をしてもらうことにしている。きっとあの時、僕が止めなければミアはあのまま死んでいただろう。それほど、彼女の眼は本気だった。


 リリアやエリー、アリアはどうかというと彼女達も同じように過剰なほどお世話をしたがるし、拒否をしてしまえば狂ったように謝りだして泣いてしまう。


 中でも一番ひどかったのはアリアだった。


 それは、トイレのお世話を拒否したことが原因だった。殺されかけてしまったとはいえ元はかなり仲が良く、そして異性の美人ともなればそれはもうクロエ以上に恥ずかしかった。


 そのため、当然のように拒否をしたのだが……彼女は僕が拒否をした瞬間自分の目に指をぶっ刺したのだ。僕は何が起こったのか理解できなかったが、もう片方の目へ指を向けようとしたところでアリアを手をつかみ、アリアを止めた。


「……止めないでください、ロア様。私はロア様に迷惑ばかりをかける塵のような人間なのです。ロア様がしてほしいこともわからず、邪魔をしてばかり。ロア様の一挙手一投足見逃さないためにこの目はあるはずなのに、そんなこともできないようなら、こんな目はいらないのです」


 そう片目から血を流しながらそういうアリアの表情は抜け落ち、ただそこにあるのは能面のような顔だけだった。


 僕が懇切丁寧にアリアを説得し、何とか理解を得ることができその場は収まり、彼女も自身の目を回復させて元に戻ったがまたいつ彼女があの状態になってしまうかわからない。


 アリア、ミア、だけでなくリリアも「ご、ごめんね、頼りないお姉ちゃんで。お姉ちゃん失格だね。もう、死んだほうがいいよね?こんなダメな人間」と言って窓から飛び降りようとするし、エリーには学校の授業を教えてもらっているが、彼女が天才なため凡人の俺が躓くところを理解できず説明に困ってしまい「私、せっかくロアに機会もらったのにそれすら生かせない。私、何のために、生きてるの?分からない」そう言って、徐に自分へと魔法を発動させようとしたり。


 その度に彼女たちを宥めていれば、流石に彼女たちが僕を罠にはめて殺そうとしているんじゃないかっていう疑惑もなくなってくる。彼女たちがあそこまで僕のお世話をしようとしたり、あんな状態になってしまうのは僕に許してもらおうと心から思っているからだろうから。


 …まぁ、その度に彼女たちを止めるのは苦労するけれど。そんなこんなで僕の体調も回復し、来週から学校へと戻ることができるようになった。


 


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