第7話リリア

 三人がこの部屋を去り、最後に残ったのはリリアだった。


 リリア。


 クロエと同じように貴族であり、この国の三大貴族の一角を担っているアスフォード家の長女である。因みに言うとクロエ家も三大貴族とは行かないもののかなりの権力を有しており八大貴族の中に入っている。

 リリアの容姿は他の三人に引けを取らないほどの美女であり、この国を動かすほどの権力を持っている三大貴族の一角であるにも関わらず、驕ることなく平民、貴族関係なく皆に平等で、お淑やかで聞いたことは何でも教えてくれ、真摯に寄り添ってくれるリリアは、女生徒、そして男子生徒から高い支持を得ており、アリアは天使、聖女と呼ばれ神格化されているのに対し、親しみ深いみんなのお姉ちゃんとして認知されている。


 青い長髪、深い海を思わせるような見通すような澄んだ青い瞳。全てを受け入れて、飲み込み甘やかしてくれる大きな胸、本人は気にしているようだが大きなお尻も相まって男子学生を虜にしている。


「ロア君、本当にごめんなさい。ロア君のお姉ちゃんだ、なんて言っていたのにこんなことして最低だよ。本当にごめんね」

「......リリア」


 目尻に涙を浮かべたリリアの顔はミア達同様に目は虚ろであり頬は痩せこけていてまともに何も食べておらず何日も寝てないんだろうなという事が容易に想像が出来てしまう程だった。


「..............リリアお姉ちゃんって呼んでくれないんだね。そうだよね、こんなダメなゴミくずみたいな人間の事お姉ちゃんだなんて思いたくないし、もしそうだとしたら恥だよね、ごめんね」

「い、いや、今はクロエがいて前にも言ったけれど二人きりじゃないから恥ずかしいだけっていうか.....」

「大丈夫だよ、隠さなくても良いから。私もロア君のお姉ちゃんにはふさわしくないって自分でもわかっているから」


 あははと壊れたように、何もかもに疲れてこの世に執着何てないと思わされてしまう程の乾ききった笑い声を出し、涙を流す。


「ねぇ、ロア君。私、もうあなたのお姉ちゃんにはなれないよね?もう二度ともとには戻れないよね?もう、友達にすらなれないよね?私もう.....生きていけないよ」


 リリアの顔は次第に俯き始め、声も段々と尻すぼみになっていき今にも消えてしまいそうな程か細い声でそう言った。


 僕に対して酷いことをする前まで、いつも甘やかして、だが誰もいないところでは甘やかされていたかつての面影はなくただの人生に絶望して行き場のない少女がそこにいるように思わされた。


「私、ロア君がいなきゃ何にもできないゴミ屑なのに、恩を仇で返す屑でごめんね?私、いない方がいいよね?死んだほうがいいよね?死ぬね?」

「落ち着いて、リリア。死なないで欲しい。自分を傷つけるようなことを僕は望んでいない」

「…優しいね、ロア君。あんなことした私にもそんな言葉をかけてくれるんだ。…でもね、私は私を許せそうに無いんだ。どうしようもなく自分が憎い」


 リリアの瞳が憎悪に染まった瞳でそう言う。


 リリアに何を言えば自分を許してもらえるようになるだろう?


 ミア、アリア、エリー、リリア


 彼女達は罰を欲しがっている。自分が自分に与える罰ではなく、僕が彼女達に与える罰を。


 であるのなら、気休めでしか無いとしても…


「…リリア、落ち着いて。リリアの言うように元には戻れないかもしれないけれど」

「…そう、だよね。だから、もう私……」

「でも…また、新しくやり直すことはできるから」


 リリアの増悪に染まった瞳は少しだけ元の澄んだ青色へと戻る


「で、でも私は私を許せないよ…。ロア君に甘えているだけだもん」

「だから、そうだな…リリアには、僕が歩けるように補佐を頼みたいかな。見ての通り、僕は今歩くことができないんだ。だから歩けるように補佐をしてほしい」

「…いい、の?」

「ロア、大丈夫…なのか?」

「あぁ、大丈夫だよ、クロエ。…だから、おねがいできないかな?リリアお姉ちゃん」


 僕がそう頼むとリリアは驚いたような顔をして、優しげな元のリリアを思わせるような顔をして小さく「うん、分かった。ロア君の頼みなら、当たり前だよ」と確かにそう言った。


 


 


 





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