第4話 ミア
「ロア、本当に私はどうかしていたの。あなたの事をもう傷つけることはしないと誓うわ」
まず言葉を発したのはミアだった。
ミアは僕の幼馴染であり、僕と同じ平民だ。正直、僕にはもったいない程の幼馴染だ。顔は学校でも頭一つ抜けて可愛いし、黒い長髪はとても綺麗で艶やかで、目つきは少し鋭いが、笑った時のふにゃっとした顔がとても可愛い。それに僕よりも魔法の才能もあるし勉強もできる。
彼女たちの中では一番過ごした時間が長いといえるだろう。
そんな彼女だったが、今となってはその面影はない。黒く綺麗だった黒髪は、艶がなくなってしまい、目には隈が出来ている。
「ごめんなさい」
本当は僕との距離をつめたいと以前のようにありありと伝わってくるが、怯えてしまうのを理解しているからなのか近づいては来ずその場で床に座り、土下座という形で頭を下げた。
「ごめんなさい、私がしたことは許されないと分かっている。けれど、私はこれから少しずつでもいいからロアとの関係を戻したいの。そのためには何でもするわ。例えば、私があなたにしたことをしても構わないわいえ、それ以上をするのが償いというものだと思うの」
頭を地面に擦り付けそんなことを言い出した。
ミアにされたことを思い出すと、今でも体が震えあがって泣きそうになってしまうし、ミアを憎いと思ってしまったり、怖いと思ったりしてしまう。
勿論、僕も聖人ではないのでやり返してやりたいと思うが………
「それは、できない。確かに僕はミアに酷いことをされたし、何かに操られていたと仮定しても許せるかと言われたら多分難しいと思う。だけれど、ミアにあんなことはできない」
ミアともほかの人とも思い出があって、僕は彼女たちの事を友達だと思っていたから。
「じゃあ…じゃあ、私はどうすればロアともう一度仲良くできるようになるの?昔のようになれるの?私は……私はどうすればいいの?」
ミアは下げた頭を上げた。
顔を見るとぐちゃぐちゃに歪めて泣いて、縋るようにミアがこちらに視線を向けた。
「ねぇ?私、いやだよ?私は他の誰かが私の事を嫌っても侮辱しても何でもいいけれど、ロアにだけは距離を置かれたくないの。嫌われたくないの。都合がいいことは分かってる。けれど、どうしても、ロアと離れるのだけ死んでもそれだけは嫌なの!!」
ミアはだんだんと感情的になっていき、僕の方へと近づいてくる。
「いや、絶対に嫌だから。私はずっとロアの隣にいたいんだもん。これから先もずっと私が隣にいるべきだから!!私は絶対に誰かに操られていたの。信じて!!」
癇癪を起こしたように叫んだので、思わず体がビクッとして体中から汗が吹き出してしまう、呼吸も早くなっていきだんだんと過呼吸になってしまい胸が痛くなる。
「ミア、それ以上ロアに近づかない方がいい。落ち着いてロアの状態を見てみろ。すごく怖がっているだろう?」
僕の様子がおかしいことにいち早く気付いたクロエがそう言って、こちらに来ようとしていた彼女の事を止める。
クロエのおかげで何とか呼吸を整えることができて、やっとミアの方へと顔を向けると彼女は絶望した虚ろな顔をしていた。
「あ、え、あ、ご、ごめんね?ロア。ごめん、違うの。ロアを怖がらせようとしていたんじゃなくて。本当にロアと仲直りできないのがい、いやで。ごめんなさい」
その場にぺたりと座り込み、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいとずっと壊れた人形のように繰り返す。
僕は何も言ったらいいのかわからず、ミアの事をみているしかなかった。
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