不幸な少女 4人用台本
ちぃねぇ
第1話 不幸な少女
【登場人物】
遥(はるか):不幸体質の少女
愛(あい):遥の妹
凪(なぎ):遥の友達。最後の方にナレーション担当部分あり
女:強盗犯
0:病院のベッドで寝ている遥。そんな遥を見舞いに来た妹の愛。
愛:姉さん、痛む?
遥:当たり前でしょ
愛:ホント姉さんは運が悪いよね
遥:うるさい
愛:今日はビルの看板が外れて落ちてきたんだっけ?
遥:不幸だ
愛:何言ってるの姉さん。姉さんが不幸なのは今に始まったことじゃないでしょ。むしろあの2m越えの看板落下で生還してるんだから、ラッキーだと思わなきゃ
遥:理不尽よ
愛:理不尽も不幸もすべてを受け止めて生きてきたでしょう?
遥:一度も願ったことなんてないけどね!なんで私ばっかり
愛:生まれた時からツイて無かったんだっけ?いや、生まれる前からか。確か、姉さんがまだ母さんのお腹で8か月の時に家が火事になって
遥:隣から燃え広がってね。いっつも原因は外部にあるのよ。なんで私だけがこんなに不幸体質なの?
愛:その時は姉さん以外に母さんも一緒に巻き込まれたじゃない
遥:そりゃそうだけど。…って、まるで私のせいで母さんが巻き込まれたみたいな言い方しないで
愛:姉さんがこの病院に入院するの何回目?私看護婦さんに「またですか、可哀そうに」って言われたんだけど
遥:憐れまれてる…
愛:前回は確か3か月くらい前だっけ?通学バスが事故って全身傷だらけで1か月くらい入院生活してたよね?…あれ?姉さんって、無事に高校何日通った?出席日数足りてる?
遥:レポートにつぐレポート提出でなんとか進級していいって…
愛:入学式の日にマンションから落ちてきた植木鉢が直撃して1週間意識不明の重体になった時は、先生達慌ててたよねぇ…今は慣れっこだけど
遥:…そんなこともあったな、懐かしい
愛:普通の人ならこのエピソードだけで無限に語れると思うんだけど…まあそこは姉さんだよね。やっと退院したその日に駅のホームから突き落とされて、危うくミンチになりかけたんだから
遥:私前世で重罪人だったのかしら
愛:奇跡的に足の骨折だけで助かったけど、今度はついていた松葉杖がぽきっと折れて階段から転げ落ちたよね
遥:あの杖貸し出し品だったから「杖を弁償しろ」だの「むしろそんなもの貸し出すな」だのお父さんが病院で喧嘩しちゃったせいで、私の行きつけの病院が一つ減っちゃったのよね
愛:行きつけの病院って何。全てのイベントで雨を降らす姉さんが夏の部活動合宿で奇跡的に晴れに恵まれて、家族総出で喜び勇んで送り出したら…まさかの火だるまになって帰ってくるし
愛:キャンプファイヤーで飛び火するとか前代未聞よ?病院から電話もらった時私、すっごい心配したんだから
遥:愛…
愛:ただでさえ体中生傷の絶えない不幸体質なのに顔に火傷なんて、もうこの先誰にももらってもらえないよー!って
遥:あんたいつか殴るから
愛:そんなことしたら手の骨にひびが入るんじゃない?
遥:あり得るからそんな不吉なこと言わないで
0:遥の友達、凪登場。
凪:よ!見舞いに来たよーはいこれ、見舞い品
愛:凪さん!ありがとうございます
遥:…返すわ
凪:えー?なんでよ
遥:前回の入院の時に凪にもらったお菓子、賞味期限切れてて腹痛で3日間のたうち回ったんだけど?
凪:あー!あったねそんなことも!でもあれ賞味期限切れてたって言うか店側の偽装表示だったんだけど?私に非はないのに~
遥:ええそうね、ないわね。でも自衛のためにお断りさせていただきます
愛:…ちょっと待ってください、これって…あの、なかなか買えないことで有名な幻プリンじゃないですか!?
遥:えっ
凪:大正解!前回は悪いことしたな~と思って、朝から並んでなんとか2つゲットしたんだよねぇ!できほやの幻プリン♪
愛:すごいです!
凪:遥要らないみたいだし、愛ちゃん、一緒に食べようか?
愛:はいっ!
遥:そんな!やっぱ食べるっ
凪:だーめ♪
愛:安易に他人を疑った罰だよ、姉さん
遥:…うう…やっぱ不幸だ
凪:にして、ほんとあんたツイてないよね。あんまり頻繁にお見舞いに行くから私「病弱なお友達なのね」っておかんに言われたわ
愛:病弱ではなく九分九厘、怪我入院なんですけどね
遥:もうさ、来るなら一生分まとめてきて欲しいわよ
凪:ええ?
遥:こんな細々と轢かれたり焼かれたり吹っ飛ばされたり…もう嫌!来るなら一生分一気に来い!
凪:来る前提で話すんだね
愛:そんなこと言うと姉さん、本当に大変なことになるよ?
遥:いーわよ、どうせ私の願いなんて絶対に叶わないんだから
0:手にナイフを持った女乱入。
女:騒ぐな
遥:何!?
凪:なんだ!?
愛:誰ですあなた!?
0:外からの「完全に包囲されているから大人しく投降しろ」の声に吠える。
女:うっさい!妙な真似したらこの病室の患者刺すわよっ!(3人に向き直り)……あんた達、運が悪かったわね。私今、警察に追われているの。悪いけど、人質になってもらうわよ
凪:ホントに一生分来た!?
愛:ちょっと!姉さんが余計なこと願うから!
遥:なによ神様!普段ちっともお願いなんて聞いてくれないくせに!
女:だからうるさいってば!…あれあんた何、重病人?包帯ぐるぐる巻きじゃない
遥:いろいろありまして
愛:だから傷に障るといけないし、他でやってもらえませんか?
凪:ほら、こんなに傷だらけの患者を人質とか、ちょっと可哀そうじゃないです?
女:何言ってんの!むちゃくちゃラッキーじゃない私!あんたベッドから動けないんでしょ?逃げられないんでしょ?最高だわ!
凪:あちゃー!逆効果だったか
遥:あちゃーじゃないわよっ
愛:大丈夫よ姉さん、私、守るから
遥:愛…
凪:私もだよ、遥
遥:凪…
女:涙ぐましいわね
愛:大丈夫、私たち
凪:自分の身は!自分で守るから!!
女:え?
遥:…はぁ!?私じゃないの?動けない私を守ってくれるんじゃないの!?
凪:あんた守っても、近いうちにその不幸体質で命落とすって
愛:姉さん、私姉さんのこと忘れないからね。ありがとう、さようなら
遥:ちょっと二人とも!?私動けないんだってば!
凪:だそうです
愛:人質、姉さんだけでいいでしょう?
凪:私たち動けるし逃げれるし下手に攻撃したら捕まった時の罪状増えるだけだし相手にするの大変だと思うんですよ。なんで、この重病人一人いればよくないですか?
女:あんたたち…鬼?
愛:何かを成し遂げるためには犠牲はつきものなのです
凪:お願いですよーね?ねっ?
女:…いや!いやいやいや!やっぱダメ!この病人、ほっといてもすぐ死にそうじゃない!こんなの人質にして、もし死なれたら罪状パワーアップ間違いなしじゃない!
愛:姉さんはこう見えて生命力強いですよ
凪:あれだけ事故に遭ったり溺れたり色々経験してまだ息があるんだもんな~大した奴だよホント
遥:全然喜べない!
女:とにかく!あんたらもここにいなさい!じゃないと私、この女刺すわよ!?あんたらのせいで死ぬのは流石にいい気がしないでしょ?
愛:それは、まぁ
凪:呪われてもやだし
遥:死ぬこと前提で話すな!
女:……あんた、可哀そうね
遥:憐れむくらいなら巻き込まないでください
女:……あら、これって
0:女、机に置かれていた幻プリンに気が付く。
遥:あーそれ
女:これ、幻プリン!?
愛:知ってるんですか
女:知ってるも何も!ねぇ、これ食べていい?
凪:え?
女:私これ一度も食べたことないのよ!うわぁ…こんなところで出会えるなんて
愛:だめです!それは私と凪さんの分です!
女:ずっと食べたかったの、お願い
愛:ダメです!
女:お願いっ!
愛:包丁握りしめて寄ってこないでください!
女:お、おお、これがあったんだ…じゃあ…そのプリン、寄こさないと刺すわよ
愛:脅すんですか!?最低ですよ!
女:やかましい!もう食べられなくなるかもしれないんだから、寄こしなさいよっ
愛:知りませんよ!私はね、何度も何度も並んで並んで、でも買えなくて…今!ようやく!出会えたんです!渡せるわけないでしょう!?
凪:愛ちゃん、そんなに食べたかったんだね
遥:愛、私のこともそんな風に守ってほしかったな…
女:並んで並んで売り切れ~なんて、そんなの私だって同じよ!
愛:私なんか2時間並んで前の人が4つも買い占めて売り切れになったんですよっ!?今日こそ買えるってわくわくしてたのに4つも買うなんて!
女:私だって3時間並んで目の前の親父が「あるだけ全部」とか言った時は…燃やして灰にしてやろうかと思ったわよっ!
愛:私は気温38度の酷暑日の2時間でした!
女:12月の雪のちらつく3時間耐久レースやってみなさいよぉ!
凪:……はぁ。そんなに食べたいなら2人で食べなよ
女:え!?いいの!?
愛:そんな!凪さん、いいんですか!?幻プリンですよ!?
凪:いーよいーよ、元々遥と愛ちゃんに買ってきたんだから
遥:なぜか私は食べられないけどねっ!
凪:まーまー、また買ってくればいいんだからさ
女:また買ってくればいいってあんた
愛:このプリンに出会えるチャンスはもう2度と無いかもしれないんですよ!?
凪:ん~……てかさ、土曜日の12時からもそれ売られてるって、2人とも知ってる?
女:えっ
愛:ええ!?
女:そんなはずないわ!月水金の9時から限定500個生産のはずよ!?
愛:そうですよ!ホームページにもそんな記載はありませんでした!
凪:そうなんだけど、そのプリンが買いたくてもあまりの人気ぶりで買えないご近所さんの為に、シークレットで土曜日12時から300個追加販売始めたんだよね、先月から
女:そんなことって…
愛:知らなかった
凪:まあ買いたいって言いだしたご近所さんの一人ってうちのじぃじなんだけどね。…ってことで、私はまた今度でいいから2人で食べな
女:あなた、名前は?
凪:三浦凪
女:凪さん…ありがとう、いただくわ
0:スプーンを持ち、目を輝かせる二人。
愛:それでは
女:いただきますっ
愛:!
女:っっ…!
愛:おいしーーっ!!
女:こんなに美味しいものが存在するなんて!
愛:幸せ……!
女:あなたは女神よ凪さん!この恩は生涯忘れないわ
凪:そんな大げさな
愛:大げさじゃないです!私凪さんに出会えて幸せです!生まれてきてくれて!姉さんの友達になってくれて…ありがとうございます!
遥:おい
女:ふぅ…美味しかった
愛:ごちそうさまでした
凪:喜んでもらえてよかったよ
女:…ところであの、私が言うのもなんなんだけど
愛:なんですか?
女:どうしてスプーン持ってるときに攻撃してこなかったの?包丁、床の上に置いてたけど
愛:あ
凪:あ
遥:あ
女:スプーン置くまでずっと包丁のこと頭から抜け落ちてたんだけど…まさかあなたたちも?
愛:…プリンの前に人間ごときが正常な判断を下すなど不可能なのです
凪:いやなんか、すっかり毒気が抜かれちゃって
遥:…あの、質問いいですか?
女:なに?
遥:あなたはどうして警察に追われてるんですか?
女:…銀行強盗して逃げてきたから
愛:強盗
遥:めちゃ重罪人だったんですね
凪:なんで強盗なんか
女:なんでって、お金よお金。お金が欲しかったの
愛:どうしてあなたが…あんなに美味しそうにプリンを食べる人に悪い人はいないのに!
遥:それは違うと思うよ
愛:あなたには凶悪性を感じません!だから包丁のこともすっぽ抜けました!
遥:さらっと自己を正当化した
愛:なんで強盗なんか
女:……どうしてもお金が必要だったの。みっくんのお母さんの病気を治すお金が
凪:みっくん?
女:三丁目のホスト
愛:三丁目のホスト?
凪:ホストって…
女:あ、ホストだからって色眼鏡で見ないで?みっくんは他のホスト達と違うの。お父さんが高校生の時に亡くなって、それ以来病気がちなお母さんと3人の妹の為に身を粉にして働いているんだから!
女:ホストになったのだって妹さんの学費の為に仕方なくなんだから!こんなにいい子は今時見たことなんだから!
凪:それ
遥:マジか…
愛:今時そんな
女:ね!今時そんな好青年他にいないわよね!
遥:いや、違くて
凪:うーん…どうする?
愛:どうしましょう
遥:…あの、すごく、ものすごーく言いにくいんですけど
女:何?
凪:それ絶対
愛:嘘だと思いますよ?
女:え?…もー!そんなわけないでしょ?
愛:えっと…そのみっくんって人、どんな人でしたか?あ、中身じゃなくて外見の話で
女:外見?そりゃすらっとしててかっこいいわよ~いつもパリッとしたスーツ着てて、ネイビーも黒もとっても似合ってたし~あ、何より時計がおしゃれだったわね
女:でも彼がその時計を見るのは嫌いだったわ…「桜さん、ごめんなさいそろそろ行かなきゃ」って彼との時間の終了を告げるアイテムだったから
遥:さりげなく名乗っちゃったよ
凪:桜さんって言うんですね
女:あっ
愛:桜さん、お母さんと3人の妹の為に稼がなきゃならない人が、そんないい時計つけてると思いますか?パリッとしたスーツを何着も持っていると思いますか?
女:それは…商売道具だからでしょ?ホストだもん、身なりには気を付けないと
愛:では彼のお母様の病名は?何年くらい病に伏せっているか聞いたことは?
女:それは…聞いたことないけど
愛:彼の家に行ったことはありますか?
女:え?ええ、何度か
愛:彼の家には医学書がありましたか?お母様が病気がちであるならば、何らかの情報を得ようとするのが普通じゃありませんか?
女:それは…ないけど……でも!それは彼が一人暮らしをしているから!ご実家にはきっとたくさんあるはずだわ
愛:では彼はご家族と一緒に暮らしていないんですね?
女:ええ、そうよ!
愛:写真はありましたか?
女:え?
愛:お母様や妹さんたちの写真を見たことがありますか?
女:それは…
愛:妹さんのお名前は?歳は?学年は?…そういう話を、何か一つでも聞いたことはありますか?
女:……ないわ。そっか…そっか!全部嘘か!
凪:桜さん
女:ホストだもんね!そりゃそっかぁ!いやぁ…バカだなぁ…私
愛:……桜さん、自首しましょ
女:え?
愛:罪は償うべきです。日本の警察は優秀です。逃げても無駄です…最後は必ず捕まります
女:…最初から捕まるのなんて覚悟の上よ。でも、そうね…このお金を彼に渡してからって決めてたから…私…なんのためにこんな…あーあんたたちも見る?ほら、すごいでしょこの札束の山!まるでドラマみたいでしょ!すっごく重たかったんだから
遥:桜さん…
女:…もう私、生きてる意味ないのかも
遥:え?
女:お先真っ暗じゃん?もう、いいや…
0:女、包丁を自分の首にあてる
凪:ダメですよ!死んじゃだめです!
遥:そうですよ!桜さんまだ若いんだから…それにほら、心残り!結末知りたい漫画とかあるでしょ!ちっちゃくなった探偵の末路とか休載に次ぐ休載の狩人の話とか
女:私漫画は読まないの。それに…一生に一度食べてみたいと思っていたプリンにも出会えたしもう思い残すことはないわ
遥:凪!
凪:ええ?私のせい!?
遥:あんたがプリンさえ持ってこなければ!
愛:なんてこと言うの姉さん!凪さんは女神様よ!
凪:遥やっぱ自分だけ食べられなかったの怒ってるでしょ?
遥:そりゃそうよ!私へのお見舞いだったのに!
愛:今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!
遥:あれだけプリンに固執してたやつが何言ってんのよ!プリンと同じくらい姉も愛せよっ
女:ごめんなさいね、こんなことに巻き込んじゃって
遥:あーもう!大体勝手なのよ!死ぬなら他所でやってよ!今から血塗れ首切りスプラッタショー見せられるこっちの気持ちも考えなさいよ
愛:ちょっと姉さん!
女:……それもそうね、じゃあ隣の病室で死んでくるわ。さっき人いなかったし
凪:だから死んじゃダメだって!
愛:姉さん!なんで姉さんはそんなに冷たいの!
遥:うっさい!私のお見舞いだったプリン美味しそうに食べてたやつに言われたくないわっ
凪:プリン……そうだよ、プリン!
愛:え?
凪:桜さん!幻プリン、美味しかったですか?
女:え?…そりゃあもう!あんなに美味しいプリン食べたの生まれて初めてよ!だから本当にもう心残りは無いわ
凪:そうですか…でも残念だなぁ
女:なにが?
凪:あの幻プリンの店、近々「天上天下唯我独尊プリン」を作るんですって。いや~「幻プリンの上を行くまさに奇跡の味にする」って店主のおじちゃん張り切ってたのになぁ~そっかそっか、桜さん要らないのか~
女:天上天下唯我独尊プリン!?
愛:あの幻プリンよりもさらに美味しい奇跡のプリン…
女:そんな…そんなことって!……でもだめよ、強盗だけじゃなくて人質まで取って病院に立て籠った凶悪犯よ?私が出所するまで何年かかる?そんな頃までお店が残ってると思う?
愛:は?あの美味しさですよ?一個千円するのにオープン当初から変わらず秒で売れて行くプリンが、簡単にこの世から消えるとお思いで?
遥:一個千円!?ちょっと!私にもよこせー!
凪:遥ストップね~
愛:それに桜さん、あなたは人質を取って立て籠ったりしてないでしょ?
女:何言ってるの?現に
愛:あなたは、姉さんの見舞いに来てくれただけ。強盗はした、でもすぐに思い直して自首することにした。そして出頭する前にどうしても知人の見舞いに顔を出したかった…そうでしょう?
女:あなた…
愛:私はここで桜さんとお話ししてプリン食べただけです
遥:私は食べてないけどね
凪:遥、シーね、シー。
女:そんな…でも…
愛:強盗は確かに重い刑罰です。5年以上の有期懲役、執行猶予もつきません。…でも、あなたは初犯ですよね?あと…もしかして強盗した際、誰か傷つけちゃいましたか?
女:いや、誰にも怪我なんて負わせてない…けど
愛:ではそのボストンバックのお金、何かに使いましたか?
女:使う暇なんてなかったわよ
愛:よかった…桜さん改めて言います。自首しましょう。私たち証言します、あなたは涙ながらに自分の罪を告白して警察に行こうとしてたって
遥:…でも確か、この人ここに入ってくるなり警察に怒鳴ってなかった?
凪:気のせいじゃない?
遥:なわけないでしょ!
愛:あの時は売り言葉に買い言葉、強盗した自分に酔って、警察からお決まりのセリフが飛び出したからお決まりのセリフを返してしまっただけ…そうでしょう?
遥:恐ろしい子
女:私…私…っ
凪:大丈夫!天上天下唯我独尊プリン、また近所のよしみでシークレット販売日聞きだしてあげるからさ!5年でも10年でも、待っててあげるから
愛:私たち、もう同じプリンを食べた友達じゃないですか
遥:私食べてないけどね!
凪:遥~?
遥:…今度は絶対!私の分も買ってきてよ!どうせ不幸な私はしょっちゅう事件事故で病院に入退院繰り返すんだから!今度こそ私にもお見舞い、食べさせてよね!みんなでプリン、食べるんだから!
女:……はいっ
凪(ナレ):その後桜さんは、警察にボストンバックだけを持って投降した。ちなみに遥は強盗すら呼び寄せてしまうその不幸体質に、ついに病院を出禁になった。
凪(ナレ):ところで…私は一つ、みんなに嘘をついた。天上天下唯我独尊プリンなどというものは、実は存在しない。もちろん、発売予定もない。
凪:桜さんいつ出てこれるかな…それまでにご近所パワー発揮しておじちゃんに天上天下唯我独尊プリン作ってもらわなきゃ。さぁて、どうやってねだろうかねぇ
凪(ナレ):一つ2千円で売れていくプリンの誕生は、もう少し先のお話
不幸な少女 4人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207
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