第6話 ミカエラ×女介護士?

 ミカエラside


  (厄介すぎるね)


 ミカエラは何かを察知したのか違和感を感じ始める。


「光琳、詩野の異界の生命ラインが飛んだね」


 異界の生命ラインとは、ミカエラの能力であり、スキルを取得した者の力を遠い距離でも感知出来る能力である。


(あたしだと、助けに入れない。さあ、どうする?)


 ミカエラは考え込む。


(とりあえず、落ち着かせて、みなちゃんの様子を見に行くかな)


 呼吸を一呼吸おきミカエラは美菜菊のいる階層に移動する。


(お、いた!?)


 美菜菊に声を掛けようとすると集中して何かを見ている。


「………」


 無言でミカエラは見守っていると美菜菊は電動車椅子にセットされた弓を持ち力強く何もない部屋に弓を引き矢を放つ。勢い良く放った矢は部屋のなかから煙のように消え去る。


「………みなちゃん何をしているの?」


「矢を撃ちましたが何か?」


「え、どこに撃ったの?みなちゃん」


「ユカエルさんの近くにいるモンスターに矢を撃って

援護出来るように石を送って状況を伝えました」


「………え?」


 ミカエラはわけがわからずにいる。


「みなちゃん、あたしユカちゃんのことは話したかな?」


 ミカエラは話した記憶がないので聞いて見た。


「いいえ、ユカエルさんのことは、ミカちゃんからは話しは聞いてはいませんでしたね」


「じゃあ、どうして、わかるの?」


「光琳からある程度は聞いておりましたので、心の形と色と糸はイメージ出来てましたのですぐわかりました」


 美菜菊は無表情で静かに答える。


「それですぐわかったんだね」


「ミカちゃんがスキル開花してくれて、さらに修行して成長出来たおかげで、一定の距離まで人の感知が出来るようになりましたね」


「みなちゃん凄いね」


「そんなことはないです」


「そんなことあるわよ」


「僕はミカちゃんに言われた通りのことをしただけです」


「言われた通りのことはちゃんとしていたけど」


 ミカエラはジト目でこちらを見る


「何かありましたかね?」


 わからなそうな様子でミカエラを見る。


「あたしに内緒にして追加メニューをしていたのはわかっていたんだからね」


 美菜菊に近づき頭を軽く何回か小突く。


「ちょっと痛いですよミカちゃん」


「………みなちゃんさあ、あたしはね一切気付かないふりはしていたけどね、内心ではめちゃくちゃ心配してたしヒヤヒヤしていたんだからね」


「ごめんなさい」


 素直にミカエラに謝る。


「………でも、みなちゃんは自分の身体の状態と限界を見極めながらやっていたから、まだ安心して見守れたかな」


「他の人は違うんですかね?」


「ああ、こうやんの場合はあたしのメニューもこなしつつ、さらに過酷なことをしていたのよね」


「そんなに凄いことしていたんですか?」


「ああ、そうだな」


「参考までにどんなことされていたんですか?」


「まず、5階でメニューをこなした後にこうやんは、あたしにナイショで50階に行ったのよね」


「ふぇ!?」


 美菜菊は驚く。


「あたしの感知で急いで向かったら50階のモンスターにやられて、こうやんは虫の息だったんだよね」


「その後はどうなったんですか?」


「その後は、応急処置して、教会にひきずって運んだのよ」


「そんなことあったんですね」


「そこから看病して目を覚ました瞬間にこうやんはとんでもないことを言ってね」


「何を言ったんですか?」


「(早く訪問介護したいから、また50階いくねと)言って起き上がってすぐ動こうとしたんだよ」


「光琳はそんなに無茶なことをしていたんですね」


「何とかその時は流石に止めたがな」


「その時は?」


「………こうやんなあたしに内緒で何度も50階行っていてな」


「え!?」


 美菜菊は驚いた表情をする。


「ただ、こうやんはあたしに気付かれてないと思っていたけどな」


「止めなかったんですか?」


「止めれなかったんだよ」


「ミカちゃんが止めれないのは余程ですね」


「能力でこうやんを感知して見たんだが」


「見てどうだったんですか?」


「守りたい信念と仕事(訪問介護)したい信念の二つで構成されていたんだよ」


「そこまで凄かったんですか?」


「全てを捨ててまでしたいという信念が凄まじすぎるから、あたしは止めずに見守ったね」


「………光琳はそんなに凄いんですか?」


「ああ、凄いさ」


「ミカエラさんが言うぐらいですから相当ですね」


「ただ、相当強い光琳でも、対策されたらあっけなくやられてしまってるからな」


「私の感知と目でも確認しましたが、タネがわからないとやられてしまいますね」


「でも、みなちゃんなら倒せるでしょうね」


「ええ、そうですね」


「みなちゃん、ぶっつけ本番で申し訳ないんだけど、みんなを助けて上げて」


「はい、わかりました」


 素直に美菜菊は静かに返事をする。


「みなちゃん、ダンジョン外での戦いに関して、どれだけ身体に負荷がかかるかわからないから、無茶しちゃダメだからね」


「そこは調整していきますので大丈夫です」


「それじゃあ気をつけて行ってきて、みなちゃん」


「ミカエラさん行ってきます」


「後、みなちゃん、コストの使い方には気をつけてね」


「大丈夫です。わかってます」


 美菜菊は電動車椅子を加速させ出て行く。


(みんな無事で帰って来てね)


 ミカエラは美菜菊の後ろを見守りながらみんなの無事を祈り始める。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る