第15話 美菜菊×スキル開花の試練

 美菜菊side


 部屋に入ると何もない空間である。


(ここで失敗すれば僕はモンスターになる)


 気付いたら手足が震えている感覚になる。


(不思議だ手足にまだ感覚があるのかな)


 考えていると部屋が真っ暗闇になる。


(な、何?)


 数秒?数分間の間、沈黙になる。


(………)


「あなたに問います?」


(ミカエラの声だよね?)


「あなたの生きた道筋を教えて」


「僕は生まれた時から、家族や人にも恵まれていた」


「………ふむ」


「そして、身体的にも健康的で勉強も優秀でした」 


「………ふむ」


「あの時の僕は幸せでした。仕事も上手く行ってて本当に充実して最高の人生でした」


「………」


「ただ3年前のモンスター、ダンジョンが現れる前に僕はALS(筋萎縮性側索硬化症)になりました」


 そこから転落人生が始まり、今の状況に至ります。


「………あなたは何を糧にして生きてるの?」


「僕は自分が生きたという証がほしいんだ」


「何故そういう生き方をするの?」


「僕は一生懸命に生きたいからです」


「今の生き方はつらくないですか?」


「つらいです。けど」


「?」


「今の世界がどう変わって行くかを見届けて行って、厄災級モンスターを倒すまでを確認してから僕は最後まで生きたいです」


「………あなたが求める物は」


「ALS(筋萎縮性側索硬化症)を治したい」


「それが永遠に叶わない願いでもですか?」


「はい、叶わなくても良いので全力で生きたいです」


 ドクンと美菜菊の心臓が大きく鼓動がなり呼吸が苦しくなる。


「あああああああ」


 涙と吐き気がして、過去のALS(筋萎縮性側索硬化症)になった時の回りの目にさらされ、恐怖を感じた時の過去がフラッシュバックする。


「◯なせて、助けて、お願い、神様」


 暗い中、美菜菊はどこかへ叫び続けて車椅子から落ちてしまい苦しみ続ける。


(ぼ、僕は、負けたくない、生きたい、◯にたくない)


 絶望の中、心は蝕られずにあがき続けて気付いたら失神して倒れる。


「…………」


 美菜菊の意識が覚醒し始める。


(僕はモンスターになってしまったのかな)


 目を覚ますと車椅子から落ちていた。


(まずいな、僕一人の力では)


 無意識に車椅子に手を伸ばそうと動作をする。


(あれ、手に力が入る)


 手で車椅子を掴み立とうとすると


(え?)


 足にも力が入りスムーズに車椅子に座ることが出来た。


「え、え、どういうこと?」


 美菜菊は出来なかった動作ができるようになっていたことに驚く。


「手が自由に動く足も立てる?」


 立ち上がり足で歩こうとすると、身体がふらつき倒れてしまう。


「痛いよ」


 痛みを感じて突然涙が出始める。


「手足が動かせるし立つことが出来るなんて嬉しいよ」


 余りの嬉しさに美菜菊は号泣してしまう。


「大丈夫?」

 

 ドアを開けミカエラが入って来る。


「み、ミカエラ、うああああん」


 余りの嬉しさからなのか、ミカエラに抱きつく。


「僕、モンスターになってないし、手が動くようになったし足も立ち上がれるようになったよ」


「うん、良かったね。おめでとう。みなやん」


「ありがとう」


「みなやん、スキルに関してだけど」


「うん」


「あなたの能力は心の糸を読み取る力だね」


「?」


「言うなれば人の心理状態がわかることですね」


「なるほど」


「後、あなたの身体からALS(筋萎縮性側索硬化症)が失われてるわね」


「え」


 美菜菊は驚く。


「身体の部位が異世界化しているからあなたは生きて行くことがこれから出来るから安心しても大丈夫だよ」


「ミカエラ、あ、ありがとう」


「あたしは何もしてないよ」


 ミカエラは照れ臭そうに顔を赤くし始める。


「ミカエラがスキル開花の試練を提案してなかったら僕はどうなっていたかわからなかったからね」


「………ううん、あたしもね、最初にあなたに◯ぬように進めたことをしてしまって申し訳ない」


「大丈夫ですよ。気にしてませんから」


「………でも」


「ミカエラさんは僕のためを思って話をしてくれたんですよね」


「ええ、そうだね」


 お互い笑顔になる。


「さあ、みなやん、こうやんのところに戻るよ」


「はい」


 こうしてスキル開花の試練を美菜菊は無事に終えることが出来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る