第13話 ※男介護士×彼女の目的×ミカエラの価値観

 光琳side

 「目は覚めましたかね」


 ベッドに寝ていた彼女に声を掛ける。


「………あなたは誰?」


 じーっと光琳を見る。


「私は光琳です。隣にいるのはミカエラです」


「どうもどうも、ミカエラです」


 ミカエラも話に入る。

 

「あなたの名前は?」


「………僕は美菜菊みなぎくです」


「美菜菊さんですね、よろしくお願いします」


「………よろしくお願いします」


「さて、美菜菊さんはどうしてダンジョン外に倒れていたんですか?」


「ええと、掲示板に書かれてた介護士(訪問介護)の募集を見たのと、後それに併用してライトグレイさんを探しに来ました」


「………介護士の募集は確か掲示板に3カ月前に書かれてはいましたね」


「その募集した人が、もしかしたらライトグレイさんと思って調べて見て、こちらに来ましたな」


「………なるほどね」


「ですので、あなたがライトグレイさんですか?」


 じーっと光琳の目を見る。


「………まあ、そうですね」


 光琳は静かに答える。


「美しく綺麗な心と信念がありますね」


「!?」


 突然、美菜菊からわけのわからない言葉を向けられる。


「全てを捨ててまで守りたい」


「おい?何を言ってるんだ」


「あなたの目を見れば、嘘偽りのないことはわかります」


「………勘違いだと思いますよ」


「そんなことはないはずです」


「なぜそう思うんですか?(何者ですかね?)」


「僕は見えているんですよね」


「何が見えるんですか?」


「目を見ることで糸のような物が見える」


「え!?」

 

 驚き、ミカエラに目線を合わせる。


「………ダンジョン外でもスキル開花することは出来なくはないけど、これは希なケースだね」


 ミカエラは話に入る。


「それじゃあ、スキル開花しているということ?」


「良いやスキル開花しかかってはいるけど、枯れちゃいそうな雰囲気だね」


「枯れちゃう?」


「ええ、そうね」


「枯れることはあるの?」


「ダンジョン外の開花はやはり全部が異世界化されてない分、枯れる可能性は高いね」


「ちなみに枯れてからスキル開花はすることはあるの?」


「枯れたらスキル開花はほぼ無理だと思うね」


「出来なくはないんだ。ミカエラ」


「………例え出来たとしても、伸びないかな」


「そうなんだ」


「とまあ、みなやんは、こうやんに何を頼みに来たのかな?」

 

 ミカエラは美菜菊に聞く。


「僕も介護士(訪問介護)になりたいです」


 美菜菊の言葉を聞きミカエラは光琳に目線を向けてアイコンタクトで(どうするんだ)というのが伝わる。


「………美菜菊さん、すまないが介護士(訪問介護)は募集はもうしてないんだよね」


「それは嘘ですよね、本音を言って下さい」


 真剣な目で光琳を見る。


「………本音を言えば美菜菊さんの身体のことを考えたら無理だと思います」


「いいえ、僕は出来ます」


「………失礼ながら、ベッドで寝ている間に美菜菊さんの身体の状態をミカエラさんの能力で調べさせて貰いましたな」


「え?」


 美菜菊が驚く。


「みなやん、あなたの病気は把握しているかな?」


「………」

 

 ミカエラの言葉に静かに頷く。


「みなやんは介護士(訪問介護)したいならあたしからもやめた方が良いと言うかな」


「僕の寿命が残り長くなくても介護士(訪問介護)したいんです」


 真剣な目で光琳を見る。


「………残念だが無理だな」


「お願いします」


「とりあえず、身体休めたら家まで帰るから送るよ」


 光琳は無視して、話をする。


「………僕は社会的弱者だから帰る場所がどこにもないです」


 落ち込んだ様子で美菜菊は話をする。


「かと言ってダンジョンには、美菜菊さんをおけませんよ」


「うーん、だったら見捨てるのであれば、あたしが苦しまずに◯すことも出来るよ」


 ミカエラが話に入る。


「ミカエラ待ってくれ!!」


 美菜菊にちょっと二人で話すと聞こえない場所にミカエラ、光琳は移動する。



「こうやん、介護士(訪問介護)させるのも、帰ることも出来ない、面倒みきれないんだったら、素直に◯したほうが楽だよ」


「なら」


「こうやん、人を苦しみながら生かすのはどうなのよ!?」


「ミカエラ、生きたい人間がいたら苦しんでいても生かすのは当然だろう!!」


「こうやん、その価値観が間違いなんだよ!!」


「別に間違いではないだろう!!ミカエラ」


「こうやん、今の世界は社会的弱者を切り捨てるのが当たり前の世界なんだ。延命させるのは人の人生を不幸にさせるだけだ」


「それでも、私は生きたい人間に介護をしたいんだ」


「こうやん、今、現実世界での高齢者は保護されずに孤独◯が当たり前で異世界人になっている」


「ああ、そうだな」


「異世界人は感情を持たない人形ではあるが、こうやん見たく一生懸命、介護することで感情をとり戻している」


「ああ」


「だから、逆に◯して異世界人にして介護して行った方が幸せじゃないか」


「それは、違うだろう!!ミカエラ」


「違わないだろう!」


「結局、◯して異世界人にしたら美菜菊は、でなくなるんだろう」


「まあ、そうなるし、人の本質も性格も変わるな」


「そんなのは違うだろう!!ミカエラ」


「………こうやん、異世界人になればALS(筋萎縮性側索硬化症)が失われて解放されるし身体が良くなる」


「ALS(筋萎縮性側索硬化症)が失われる?ということは治るということなのか?」


「異世界側ではALS(筋萎縮性側索硬化症)は存在しないからこそ異世界人になれば失われるんだ」


「………そうなのか」


「こうやん、あたしはさあ、今の現代で治療が不可能な難病に関しては、苦しまずに◯してさあ、異世界人にしたほうが生きやすいと思うんだ」


「しかし、その人の今まで生きた経験や知識がなくなって人生が失われるんだから意味がないだろう!!ミカエラ」


「いや、あるね!」


「ないだろう!!ミカエラ」


「こうやんが一生懸命さあ、介護して行けば、異世界人に感情が芽生えて新たな人生を作り出せるだろう!!」


「………確かにそうだが」


「こうやん、その人の現代の生き方が失われても、異世界人になって第二の人生を作り出せた方が幸せだとあたしは思うね」


「………」

 

 光琳は無言になり納得行かない表情になる。


「というわけで、こうやん、◯して異世界人にしちゃおう」


「………せめて、美菜菊に選択肢を選ばせて上げてくれ。ミカエラ」


 光琳は悔しそうに目に涙を溜め込んでいる。


「こうやん、泣くな」


「………確かに介護することで、延命させてるだけかも知れないし、私がしてるのも正しいとは限らないからな」


 光琳はミカエラの言葉に折れてしまい、美菜菊が寝ているベッドへ向かう。


「さてさて、みなやん、おまたせして申し訳ないが今後のことだが」


「………はい」


「あなたの残りの人生どれくらいかはわからないけど、ALS(筋萎縮性側索硬化症)で苦しんで亡くなって、異世界人になるよりは、あたしの能力で苦しまずに◯すことで異世界人にした方が良いかなと思うんだよね」


「………つまりは安楽◯ですかね?」


「まあ、そうなるかな。ひなやん」


「………」


 美菜菊は無言になる。


「今の現代の環境では、生きながらえることが出来ないからこそ、あたしはね、ひなやんに苦しまずに◯して異世界人にする方法を提示してるの」


「もし、異世界人になったら僕はどうなるの?」


「あなたの今まで生きた情報や人生は失われてしまうね。ひなやん」


「………」


 美菜菊は静んだ表情を見せる。


「ただ、異世界人になればALS(筋萎縮性側索硬化症)は失われる」


「ALS(筋萎縮性側索硬化症)が失われる?」


「そうだ、異世界側ではALS(筋萎縮性側索硬化症)は存在しない。だから治るのと一緒だし、そうすることで新たな人生を歩めるんだ」


「………」


 美菜菊は無言になり考え始める。


「だからね、みなやん、あたし的には◯して楽にさせたいの」


「………」


 美菜菊は無言になり迷っている様子になる。


(ミカエラ、それは選択肢ではなく。一方的に◯して異世界人にする方向に持っていてるだけだろう)


 光琳は止めたい気持ちが湧いて来るが力強く両手を握りこらえようとする。


「………ミカエラさん、すいません」


 美菜菊が謝り始める。


「?」


「僕は今のまま一生懸命生きたいんです」


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