※3カ月前 過5話 詩野×スキル開花
詩野side
(何が始まるんだ?)
詩野は暗い中、呼吸を整え構え始める。
「あなたに問います?」
響き渡るように女の声が聞こえる。
(何を答えるんだ)
「あなたの生きた道筋を教えて」
「………自分は生まれつき両腕両足がない状態で生まれて酷い、いじめを受け、親からも虐待も受けて、最悪過ぎた人生の始まりだったね」
「ふむ」
「本当に生きるのが嫌で辛くて生まれて来なければ良かったとずっと思っていた」
「………ふむ、」
「ただ、それでも生き続けた。理由はわからないが何とか生きながらえることが出来たね」
「それであなたは何を糧に生きてるの?」
「………自分は両腕、義手であるが、最後の最後まで一生懸命生きたいんだ!!」
「何故そうするの?」
「義手、義足作った先生が言ってたんだ(地獄を見て来たからこそ、あなたの真の強さがある。定期的にメンテナンスも含めてお代はいらないから一生懸命足掻いて生きて見ろ)と言われてね」
「………」
「だから今に至るかな」
「生きることが辛くないですか?」
「3年前から環境が代わり辛くて、辛くてしょうがないさあ」
「………」
「だが、それでも、生きているんだ最後の最後まで厄災級モンスターを倒すところを見届けるまで生き残ってやるさ!!」
「………あなたが求める物は?」
「自分は自由な手足が欲しいと願い続けています」
「永遠に叶わない可能性があってもですか?」
「ダメでも義手、義足があるからな生き方に困らないさ!?」
突然詩野の心臓が圧迫されるように恐怖に包まれ寒気を感じて意識が薄れる。
(なん?)
過去のことが映像のように流れて行き、詩野は混乱し始める。
「があああ」
意識が壊れそうな恐怖と何かに飲み込まれそうな感覚に襲われ良くわからない声を出してしまう。
「ああああああああ」
詩野は悶えて気絶しそうになるなか意識を何とか保とうと努力する。
(生きてやる。生きてやる。こんなところで負けられるか!!)
詩野の叫び声をあげる。何とか目を開けようとするも数分間だけ気絶して、すぐドクン、ドクンと心臓の音が静かになり響き目が覚める。
目を開けると何もない部屋でありさほど変わらないように思い無意識に手で汗を拭おうとする。
「え?」
汗を拭うと触った皮膚の感触がわかる。
「う」
立ち始めると歩いてる感覚と痛覚が全てを感じとれる。
「う、う、う、う」
両手、両足があることに嬉し涙をあげる。
「やあ、気分はどう詩野?」
ミカエラがドアを開けて声を掛ける。
「自分の腕、足がある?どういうことだ?」
「それは試練を乗り越えて、詩野がスキル開花した力よ」
「力?」
「そう、詩野の能力は両腕(義手)、両足(義足)を異世界化して作り出す力だよ」
「両腕、両足を作り出す。じゃあ今ある手足は?」
「異世界化した本物の手足だから、普通の人との手足とさほど変わらないよ」
「う、う、う、う、ありがとう、ミカエラ」
「何であたしにお礼を言うのよ」
「だってミカエラの冷たい声の問いの中、見守っていてくれたでしょ?」
「………ええ、そうね」
詩野の目線を反らす。
「照れてるね」
「ああ、だまれ!!」
ミカエラが怒り口調になる。
「まあ、これ以上は突っつくのはやめておくけどミカエラ」
「うん?」
「感情が芽生えた分、試練をするのが辛いんだよね?」
「………ええ、そうよ」
「確かに複雑だけど」
「うん」
「それを乗り越える姿を見れるからこその感動と嬉しさも見えるから良いでしょ」
「くす、違いないですね」
お互いに笑いあって、光琳のいる場所に戻った。
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