01 チョウチョと巨大タコ
「わー! 待って待って
「授業中にやっとけよな」
4時間目の授業が終わっても、
黒板が消せないので、日直の理玖はしかたなく円が
「それなに?」
ひまをもてあました理玖は、科学部で最近
円はちらりと目をやり、理玖にたずねる。
「『ブレイブ・エレメンター』っていう、
「周期表って、理科で習ったあの周期表?」
「そう。
「ふうん。ゲームなのに勉強かよ」
円に言われ、理玖はむっと口をとがらせる。
「いま人気なんだぞ。
「もういい、もういい。ノート写してるから」
そっちが話しかけてきたくせに、と思ったが、理玖は言葉をのみこんだ。
円の耳に、キラリと光るものが見えたからだ。
「円、それどうしたの」
「ピアス開けた。兄ちゃんが記念にってくれたんだ。ダイヤモンドだぜ、これ」
校則違反だ、と思いながらも、理玖は再び言葉をのみこんだ。
理玖と円は、保育園からのくされ縁だ。
まじめな理玖と、やんちゃな円。
性格もしゅみも合わないのに、昔からの知り合いというだけで、なんとなく今も一緒にいる。
「どうせ、ニセモノだろ」
「お前なぁ! 本物だってっ!!」
だからこそ、
理玖の言葉に、円は立ち上がって理玖を押し倒そうとした……が、その反動でボードゲームのバッジがばらばらと床に散らばった。
「ゲーーッ!!」
「拾っとけよ。僕のせいじゃない」
「おい、理玖ーーー!!」
「黒板も消しといて」
付き合ってられない、と理玖は理科室を出た。
そして教室に戻り、自分の席についたとたん。
理科室にいるはずの
「
円は青ざめた表情で、放り投げられた理玖を見上げている。
(ほんと、なんなんだよ……)
空中に放り投げられた理玖の身体は、大きな
と思ったら、理玖の身体は空中に浮いたまま止まった。
助かった。
理玖はとりあえず、ほっと息を吐いた。
「キミが、
突然、女の子の声が聞こえた。
声の出どころを探すけど、女の子の姿はどこにもない。
「うしろ、うしろ」
……と思ったら、いた。
理玖の背中で学生服をつかんだまま、パタパタと宙に浮かぶ女の子。
身体は小さく、20センチくらいしかない。
そのうえ、背中には
「ちょうちょ……?」
「チョウチョじゃないし。ネオンだし」
どうやら彼女が、理玖の学生服をつかんで、落下を止めてくれたらしい。
でも、こんなに小さい身体で、どうやって?
「り、り、理玖~~!! 死ななくてよかった……!!」
ネオンと名乗った
円は泣きそうな顔で、理玖に抱きついてくる。
「ここどこ? 僕、どうなったの?」
「理玖、あいつにつかまって放り投げられたんだ」
「あいつって……」
ネオンのオレンジの光のおかげで、周囲が少し確認できるようになった。
見回すと、巨大なタコのような生物が暗闇の奥でうごめいている。
「な、な、なんだ、あいつ……!!」
体長は、10メートル近くはあるだろうか。
巨大な
「うわぁっ」
すると、理玖の声に反応して、巨大タコがふたたび長い脚をこちらに伸ばしてくる。
2人は声を上げ、出口を探して走り出した。
「もう、全然理解できない。光るちょうちょと、タコのバケモノ?
ここはどこで、なんなんだ!?」
「ええと、ええと……
ダメだ、ネオン。もう一回説明してくれ!」
タコから逃げながら円が言うと、ネオンと呼ばれた妖精の女の子がハァ、と息をはいた。
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