第4話 草むしり
「うわ!今何時?寝坊した?」
窓の外はもう暗い。ってことは私、寝過ごしたんだ?!遅刻しちゃうよ
「お母さん、アオ、なんで起こしてくれないのよ、もう夜じゃん!」
八つ当たり気味に言いながら部屋のドアを開ける、そこで、ハタと自分が寝ぼけていることに気が付いた。あーもう恥ずかしさで座り込むと、その先に青樹が居た。
「イツ 大丈夫?」
「ごめん。なんか寝ぼけてた。もう夜だよね?」
えーと、学校でトコ先輩が霊を視ることができるか確かめようとして、で、視えたんだっけ?確かめる前に真っ暗になっちゃったけど、どうだったんだろう?
「トコ先輩、視えてると思う。でも、受け入れられなかったんじゃね?イツの事、振り払ったんだよ。高校生にもなってヘタレだよなあ?」
何も言ってないのに青樹が状況を説明してくれる。
ちょっと、待て青樹、今トコ先輩をヘタレって言ったけど”霊なんて信じない”ってきっぱりと言い切る人がだもん、自分の手の上に霊が乗っているの見たら驚くよね。振り払ったのは霊であって私じゃない、よね?
「私達は慣れているけど、トコ先輩は霊とか見るの初めてだろうから狼狽えるのもしょうがないよ」
青樹は何でそんなにあからさまに嫌な顔をするんだ?先輩もあの霊も悪い気配は無かったけど青樹は何が気に入らないんだろう?
**
単身赴任で週末だけ帰ってくる父さんは、娘が学校で倒れたと聞かされて驚いていたけど
「部活に入ってなくて呼び出された?そりゃあ お前たちが悪いなあ」
海南高校の卒業生でもあるから生徒会の味方だった。ま、ほんとに部活の事をすっかり忘れてたのが悪いんだけどさ
「で、イツは貧血を起こしたのか。環境変わって疲れてるんだろ?明日は焼肉でもするか?」
私は環境変わってむしろ絶好調だけど焼肉はいいね!と青樹とサムズアップする
「保健室に運んでくれた上級生にはお礼を言っておけよ?あと、学校に迎えに行ってくれた夏おばちゃんにもお礼を言わないとな」
え?保健室に運んでくれた上級生?青樹を見ると青樹は目をそらした。
***
「私 焼肉に喜んだのは失敗だったって今思ってるよ」
「…ぼくもそう思ってるとこ」
庭でのバーベキューの第一歩である草取りをしながら愚痴をこぼしあう。
私達としてはホットプレートで十分なんだけど、お父さんは私達に庭の草取りを命じてお母さんとウキウキと買い物に行ってしまった。
「さぼる?」
ちょうど腰を伸ばした時に自転車が二台入ってきた。
「ちわっす」
「こんにちは」
門の方へ行くと、秋晴君ともう一人は秋原君のお友達かな?
「「こんにちは」」
「お、流石双子、声がそろったね~ アマミンが謝りたいって 」
「「あまみん?」」
「天海副会長って言ったらわかるだろ?」
わからん、副会長はトコ先輩じゃろう?青樹と顔を見合わせて首をふる、何なら肩もすくめる
「その、もう大丈夫?昨日はごめん」
秋晴君の後ろから顔を出したのは、誰ぞ?
「トコ先輩!」
青樹は驚いた声を出したけど、トコ先輩ってこんな顔だっけ?ってか私いつもクマに気を取られてたから顔覚えてなかったわ。
「ねえ 秋ちゃん、なんで先輩が?」
声を潜めて秋晴くんに聞く青樹の横で私も頷く
「ああ さっき偶然会ってさ、元気ないからどうした?って聞いたら昨日の事気にしてるって言うから連れてきた次第」
「あー分かりました。ありがとうございます。姉は元気なので大丈夫です」
青樹が蓋をするように言った横で私もペコリと頭を下げた。
その時に我が家のワンボックスが帰ってきて、お父さんがニコニコしながらこっちに来る
「秋ちゃんのお友達?」
「ちわっす コッチ、昨日の副会長の天海君です」
「天海。もしかしてお父さん、社会の先生じゃない?」
「はい、もう退職して今は神職と園芸やってます」
「そうなんだ アマミン、会いたいなあ」
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