第5話

例え白目を向いたとしても

お前は俺が連れ帰るよって意気込みを、

乗ってるお前は知らなくてもいいよって。

思いながら。

何事もなく城へ降り立つ。

うっとか、あっとか言って

眼下へ吸い込まれていく所を急降下して拾う

シミレーションはシミレーションだけに留まった。

有難い。


姿を戻して直ぐ声が出迎える。

「どうでした?」

待ち迎えていたコウより訊かれるが

「お前の目論見通りだよ。」

と応える。

「僕は何も言ってない!」

チビが間髪入れずに飛ばす。

「クツナは上手に説明できた。

そしてそれを誰から授けられたものか割らない。

お蔭で眷属だ。」

「あ」

一文字だけコウは発した。

「縁故が出来たという事で。」

タカが呟く。

「人狼如き繋がりが役に立つかは皆目。

手土産は稲荷。

我らの若は皆で食べたがってる。

分かれ。


若が残らず喰われるか、

人狼里が残らず喰われるか。

どちらも選ばなくて良かったのは及第点。」

あの場で動ける手は持ち合わせてなかった。

ゆっくりと瞬きをして、姿が目に入る。

クツナと話す姿が。

「クツ、


ただいま。」


「おかえりなさいませ。」

あぁ帰って来たよ。

俺を待っててくれたんだね。

あぁもう難い話は終わり。

肩を抱いて、休憩モードだ。


「重いっ!」

ん?

あぁ…

タイミング悪い。

狙ったか。計ったか。

「自らの戦利品を重く感じるとはー?」

振り返りながら出す。

「持ちましょうか?」

タカの愛の手をクツナが断る。

「違う!

持って!持てない!!」

視線は、ずっと合ったまま。

ほぉ。

この俺を選んで使うとは、なかなか。

「はいよ。

持てない王子様。

持ちましょう。」

走って来て軽々渡せるんだな。

「やばいー

持てないー

コウー持ってー。」

「ご冗談を。」

ご冗談ぐらい言うだろ。

よし問題無いな。

クツ行こ行こ。


「あー!」

今度は何だっ!

「どうした。」

「歩けないー。」

「えー」

「背中」

「お前、変化で飛べる言ってただろ。」

少し手が震えてくる。

まさか…

まさかっ!

「息苦しくないか!

痺れてるとこは!?」

顔色は!?唇の色は!?爪は!?

ひゅっと息を呑む。

「俺が…あの時食べさせたばかりに…

こんな…」

地面を打つが一瞬で。

医師を、医師の手配を呟く。

ざっと周囲も構える様子が分かる。

「とにかく寝かそう。

そうだ。あぁ。」

「苦しくない!痺れてない!」

断ち切るような声に注目せざるを得ない。

両肩を力強く掴んで

「大丈夫か!大丈夫なのか!?」

そう吐きかけるしか。

「元気だけど僕を背負って!」

「元気だけど?

元気なんだな?

変化で?背中乗りたいの?」

「今のまま、おんぶ。」

「おんぶ…

おんぶね。

おぉ…ほら。こい。」

何だか良く分からないまま、背中向けてしゃがむ。

両手を受け構えて待つ。

どんって小さな塊が背中にぶつかって、

お尻抱えて立ち上がる。

温もりが首に巻きつく。




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魔王様は小さい子がお好き?人狼族里へ詫びに行く巻 食連星 @kakumi

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