第3話

「待て.」

待て待て待て.

あぁーのほほんと考えてた.


「半分こしよう.」

取り付かれた思いに…

全て捨て去ろうかと思ってしまった.

何らかの理由がないと納得しないかもしれない.

ただ,納得とかいるか?

こっちが決めた事に従わせれば良いんじゃないか?

ぐるぐる回る.ぐるぐる回す.


お前の判断は正しい.

何で先に食わせようとしたんだろう.

「これね.

これが食べたいやつ.」

それを,ぶつぶつと断ち切りながら,

米がぼろぼろ形を変えながら.

半分にする.

片方選ばせて持たせる.それに片手を被せた.

片手を口に運ぶ.

「悪いが,お先に.」

横向きに少し首を傾ける.


・・・

小さい瞳が覗き込む.

・・・

普通に美味しい.

「美味しかったよ.

選んだお稲荷さんに間違いなかったよ.」

特に味はおかしくない.

被せていた片手を取り払ったら,

半分血を引く物が食べた.

「本当に美味しい.」

笑った.

瞬間,顔が歪むんじゃないかってバクバクしていた.

血の気が引くかと思った.

大抵,代謝は良いから大丈夫なはずだけど,

半分蝙蝠族がどう作用するか分からない.

全て半分こして食べていくか悩んだ.


「何が入ってるか分からないね.」

無邪気に言った.

「龍族は結構何喰っても消化する.」

「この食べ物は食べた事ない.」

あぁ.そういう意味で言ったのか.

「僕は半分だけ.」

半分だけ.

そう.

半分だけ.

龍族だ.

「これ…食べ続けるか…?」


「あの時…

食べないなら断れば良かった.」

一緒に黄昏る…

一生懸命小さいのが頭悩ませてんのが見える.

見えるけど,何で,

この小さいのに判断を委ねてるんだろう.

もし何か入っていて,

こいつが駄目になったとしたら.

ほら,お前が選んだんだと.

だから,こうなったんだとでも言うつもりか.


目を閉じて,上を向く.


「俺は,あの時.

受け取る判断をした.

どの結果でも責任は俺にある.」

ルーレット式に大丈夫なのにあたったのか.

何だかもうよく分からなかった.

口に出して言う事で何か変わる事があるのかと思った.

口にした事で覚悟は決まる.心積もりは十分だ.


「一つを半分にして食べていこう.

それでいいか.

勿論,地面に埋めて行っても良いし,

食べない選択肢もある.

君が1つ丸ごと食べたいと望めばそれも良い.

何事か起これば,里1つ消す事くらい造作ない.

後始末は任せとけ.

安心していこう.」

言っててよく分かんなくなった.

「えっと,

1つ半分こ

2つ埋める

3つ全部.

後は…」

「もーそれが全部.

選択肢が多い?

あー後は,城に帰って食べるか.」

食いもんって意外に微妙だなと思う.

信頼は純粋な美味しさだ.

ケチ付けて悪かったな.そう言いたい.

何事もなく笑って美味しかったなって言いたい.

分からない食べ物になってくる.

見た事ある食べた事があるのに.


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