【長尺編集版】 澪から始まる異世界転生譚・少年編~手違いで死んだ俺、女神に最強の能力と武器を貰うも、スタート地点がド田舎だったのでスローライフを目指す事にした~
1-16【これが俺のファーストステップ】
1-16【これが俺のファーストステップ】
◇これが俺のファーストステップ◇
油断したよ
クラウ姉さんの戦いに
俺の
盗賊が盗賊らしくしてんじゃねぇよ!!
人質とか
「……ミオ!」
聞こえてるよ、うん。聞こえてる。
背後から掛けられるクラウ姉さんの声は、俺の耳にバッチリ聞こえているさ。
……そして案外冷静にもなれた。あんがとよ、クラウ姉さん。
先ほど盗賊親分に言われた通り、俺は持っていたナイフを遠くに投げた。
わざとらしく見えるように、思いっ切り投げた。
「こ、これで……いいですか?」
そして両手を上げて、何もない事をアピールする。
まるで刑事物のドラマかなんかだな。盗賊に通じるかは分かんねぇけど。
「よーし、そのままこっちに来い……交換してやる」
そうだろうな。
俺の知ってる展開なら、交換する振りをして両方を人質にするつもりなんだろ?
汚ねぇよな、盗賊さんよぉ。
俺はゆっくりと歩き、クラウ姉さんの位置を確かめる。
(よし、距離もバッチリ……クラウ姉さんに掛かってるからな、頼むぞ)
クラウ姉さんの光の剣が伸びて、しかも貫通するなら、まだ何とかなるはずなんだ。
全部が全部クラウ姉さん頼りで、なんとも情けねぇ限りだけどさ。
「来ました、ガルスを離して……くださ――」
ほらな。手が伸びて。
きっと俺を捕まえ――
ドスンッ――!!
「――ぐがっ!!……あ、うぁっ」
な、何が起きた?一瞬で、景色が回転した?
あれ……?痛ってぇ……腹が、めちゃくちゃ痛てぇよ。
「ミ、ミオぉぉ!」
「ミオ!!このっ!!」
「――おっと嬢ちゃん……近付くなって言ったろ?俺の靴には隠し刃が付いてる。このガキの頭ブッ刺すくらいなぁ、なんでもないんだぜぇ?」
靴……?頭……?
ガキって俺だよな、俺。くそ、そうか……この腹の痛み。
胃の中が逆流しそうなこの感じ。
腹パンじゃねぇか、ふざけやがって……黙って人質に取れよっ!
「ごほっ……げほっ……いっ、てぇな」
景色が回転したのは、その場で一回転して倒れたって事か。
マジかよ。この盗賊親分、あの巨体で十歳の子供を
下手すりゃ死んじゃうよ?
「このっ……クソったれぇ……」
俺の言葉は非常に小さかった。
クラウ姉さんには聞こえていないだろう。
だが、そりゃあ盗賊親分には聞こえるわな。
「このクソガキっ、大人を舐めたクソガキは、痛い目を見ねぇとなぁぁぁぁ!!」
あぁ……そうだよな。俺もそう思うよ。
俺に盗賊親分の顔は見えない。見えるのはその振りかぶった足だけだ。
何だっけ?靴になんか仕込んでんだっけ?
そっか……そうか……俺、また死ぬのか。
「――や、やめなさい!!やめてぇぇ!!」
クラウ姉さんの叫びが聞こえる。
ごめんな、クラウ姉さん……転生した俺の家族になってくれて……嬉しかったよ。
ザシュッ――!!
「……あれ、ここって」
あ~……死んだんだな。俺、また死んだんだ。
だってさ、
真っ白な空間だ。何もない、白い紙を合わせたような異質な場所。
そうだろそうだろ?転生前に見た最後の記憶と同じだよ、まったくさ。
「――ってことは、アイツがいるのか?」
あのポンコツがさ。
それとも何?また転生させてくれんの?
ははは……それはラッキーだね――投げやりじゃねーよ。
「おーい、女神さま~?いるんだろ~」
名前なんだっけな。
確か……ア、アイ……アイスクリーム?
『――アイズレーンだっつーのぉぉぉ!!』
ああそうそう……【女神アイズレーン】だ。
確か、そうだ。アイズって呼べって言ってたよな。
皆、覚えてる?俺は
「あ、お久しぶりです……アイズ……さま?」
俺の目の前に、あの時と同じ光の球体で現れたアイズだが。
なんだか
「あ、あれ……?」
『あんた……何してんの?』
何って。死んだんじゃないか。
『違うわよ。そうじゃなくって……ジャミングよ、ジャミング!』
ジャミング?妨害って事か?誰に対してだよ。
俺はそんな事してませんけど?
『――してたのよ!私に対して!!』
女神にジャミング?
なに?この女神、俺に連絡を取ろうとしてたって事か?
『そうよ!
「――で、なんなんだよアイズ。俺に何の用だ?俺、死んじまったけど……その用件意味あんの?」
『
え、マジ?俺……まだ死んで無いの?
『今はまだ……ね』
なんだよその、これから死ぬみたいな言い方。
いや……まぁ、どっちでも一緒か。
『……
だってなぁ、あの状況だぞ?
目の前に迫ったあの靴……仕込み刃だぜ?
あのまま行けば、絶対死ぬじゃん。
「無理だって。あのままじゃあ何も出来ないよ……それでも、ガルスはクラウ姉さんが助けるだろ?なら、解決じゃねぇか」
例え俺が死んでも……さ。
『……あんた、もしかして転生前よりも
そうかもな。理不尽な世界に転生して、赤ちゃんからやり直したんだ。
人格がもう一つ出来たと言っても
『それでも、まだたったの十年でしょ?あんたは前世で三十年生きてきた……手違いなんて言う理不尽に、殺されるまではね……』
そうだけどさ、でもどうするんだよ。
このままでは何も出来ないって事くらい、それは俺が一番分かってるんだ。
『そうね、だから……私、【女神アイズレーン】が来たんでしょ?正確にはあんたに来てもらったんだけどさ』
ん……?どういう事だ?この状況で、まだ俺には何かが出来るのか?
俺にはまだ、何かをするチャンスがあるのか……!?
『――そうよ。だから、さっさと私の助言を聞いて……あっちに帰って戦いなさい!!
へっ……前世の名前なんて、呼ぶんじゃねぇよ。
しかし女神が言う……俺にはまだチャンスがあると。
死の
『――正直に言うわ。私は、あなたにとんでもない事をした!それはごめんなさい。悪いとは思ってないけれど!』
おいちょっと待て、サラッとなんて言った?
なんで謝罪から入るんだよ!しかも堂々としてんな!せめて悪びれろ!
『い、いいでしょ!間違えたものはっ!あと機密事項で言えないから!追及は禁止!』
『――あー!あー!聞こえないー!聞ーこーえーなーいー!!』
こ、子供かよ、このポンコツ女神!!
『――
やっぱ聞こえてんじゃねぇーか!!ふざけんな!
しかも前世の情報を出すんじゃねぇ!もう違うんだよっ!!
『ふざけてんのはあんたでしょ!黙って聞けよ!!』
あ……す、すみません……ブチギレられたんですが。
つーか、初対面の時の
『――いんだろーが目の前によぉぉぉ!』
どこだよ!どこだよぉぉぉぉ!!
あと、俺が見えるのは球体だっつってんだろ!十年前もしたなこのやり取り!!
『私にとっては十ヶ月前だっての!!』
は?なんだよそれ、ズルくないか!?
――って……そんなこと言ってる場合なのか?
『……そ、それもそうね。私としたことが、人間
分かったよ……もう何も言わねぇよ。
それでいいだろ?
『よろしい。あたしがあなたに
ん?なんだ……何を戸惑ってる?
何か、言っていい事と悪いことを探り探りなような、そんな感じに取れるけど。
『――あ!そうそう、【
――【
しかしその使い方も、効果も一切分からなかったんだ。
と、言うよりもだな……俺は一人になれる時間が無さすぎて、試す事すら出来なかったんだ。
そもそも、俺はまだ子供だ。未熟も未熟……だから、まだ使えないって考えてもいた。
だが、クラウ姉さんは使えていた――光の剣【クラウソラス】を。
『
だったら初めから教えて……って断ったの俺じゃん!!
『――だ、だって!転生者の能力付与はランダムなのよ!あんたが特別だっての忘れたのぉぉ!?』
あぁそーかよ、俺が悪いのかよ!じゃあいいよそれで!
だから、教えてくれ!!その【
『ご、ごほん!……いいわ。覚えなさい、あなたが獲得した、その能力の力は……――』
三十歳の誕生日……訳も分からないまま刺されて死んで、しかも手違いだ。
そんな俺が転生して、はや十年……俺は、ようやく一歩を踏み出す。
転生者……
女神に呼び出され、強制的に意識を手放していた俺だったが、時間はまったく経っていなかったようだ。
アイズに能力のヒントを聞き……戻って来た。
そして、俺がパッ――と目を覚ました時。
眼前に迫っていたのは……盗賊親分の靴に仕込まれた刃物だった。
や、やべぇ……ここからどうやって
意外と冷静になっていた俺だったが、この状況ではどうしようもない。
しかし、そんな俺の
「――や、やめろぉぉっ!!あんっぐっ!!」
ガ、ガルスっ!?
ザシュッ――!!
幼馴染のその声と共に、俺の
「――いっ……てぇ」
ガルスが盗賊親分に嚙みついたのだ。
そのおかげで、攻撃がズレたんだ。
「――がっ!痛ってぇぇ!このクソガキぃぃ……嚙みつきやがったなぁ!!」
痛がる盗賊親分。
何言ってんだよ、俺の方が痛てぇよ!おっさん!!
あ、なに?ブーメラン?おいおい、言うなよ良い所なんだからさ。
腹に力を込めて立ち上がろうとする。
いててっ……そう言えば腹も殴られてたな。
そんな痛む腹に力を込めて、俺は必死の形相で立ち上がった。
「――へへっ……サンキュ、ガルス」
「ミオっ!」
少し離れた所にいたクラウ姉さんが駆け寄ろうとしてくれた。
だがしかし、俺は右手で制してそれを
「このぉぉ!クソガキがぁぁぁぁ!!」
「う、うわぁぁぁ!!」
「ガ、ガルスっ!」
ドガラッシャーン――と、ガルスがボロ
盗賊親分が、思い切りガルスを投げ飛ばしたのだ。
投げ飛ばしたガルスを見ることなく、盗賊親分は俺を
「このクソガキどもがぁっ……俺を舐めやがってっ!!ぶっ殺してやらぁぁ!!」
ジリリ――と、盗賊親分が俺に詰め寄る。
そんな中で、俺は冷静さを忘れないよう心掛け、後ろの姉に叫ぶ。
「――クラウ姉さんっ!ガルスをお願いっ!見て来てっ!!」
「で、でも……!」
「いいから!僕は大丈夫だから!!」
クラウ姉さんは不安そうにしながらも走り出して、
よし、これでいい。
「なんだぁクソガキ、ぼくちゃん一人でも大丈夫だってかぁ!?舐め腐りやがって!あぁん!?」
大人ってさ。大きな声で怒鳴れば、子供は静まるって思ってる節があるよな。
実際そんな事、全然なくてさ……子供は、大人の
だから、どんなに怒鳴ったって……言う事を聞くことはないんだ。
「黙れよ。おっさんさぁ……俺がガキだからって、怒鳴られて黙ると思ってたら大間違いだぞ……」
急変する態度に、盗賊親分は眉を
「――な、なに!?お前……急に」
ガルスが
物凄い勢いで、ボロい壁を突き破って行った俺の幼馴染。
だ、大丈夫だよな?
まぁでも、今は心配してらんねぇよ……俺は俺の心配をしねぇとな。
そうして、このおっさんをブッ倒すんだ。
「がっはっは!!そんなフラフラで……この俺様を倒すつもりでいるのか!?」
ああそうだよ……倒してやるよ。
まだ知ったばかりで……加減なんて出来ねぇからな!
「――【
「なに?」
ボソッと
しかし、それは発動のキーでもあった。
ふらつく俺の思考には、その発動のUIが見えている。
スマホゲーなんかで見る、ユーザーインターフェースってやつだ。
「さぁ……いくぜ?」
発動しちまえば、効果は永続。
【
「――
その名を口にした瞬間――俺の異世界での物語が動き出したんだ。
俺の脳裏に出現したUI――このユーザーインターフェースには、様々な項目の数値が
何十列にも並んだメモリの
そのメモリは、この場に存在する
1の時点で、そこに存在する事が出来ているのだ。
そして、そのメモリはスライドさせる事が出来る。
そうだ――俺の能力【
「な、なんだその意味の分からない言葉はっ!!」
【
略して――【
簡単に言えば、
その資源数値は無数にあり、強度や質量、威力や魔力など
組み合わせの選択は……まさしく無限だ。
つまり俺は、転生時に勝手な
蓋を開けてみれば、それ以上に恐ろしいチート能力。
複数の物体を変動させて、地形や形状そのものを変える事が出来る……やばいよな。
しかも地面に
そんなアホでも分かるチート能力、
しかも、俺はまだ身体が未成熟の少年だから、今は一回か二回使えるかどうか……と、アイズはありがたいお言葉をくれたよ。
「き、聞いてんのかっ!クソガキっ!!今なにを言った!?答えやがれっ!!」
盗賊親分は【
だから言ってやる。
「――分からねぇなら、そこで座ってろ!!」
俺は、UIのメモリを脳内でスライドさせる。
選択したのは……盗賊親分の足元、地面の一ブロックだ。
「な、なんだと……このガ――キ……な、んだぁぁぁぁぁぁぁぁっじ、地面がぁぁぁ!!」
盗賊親分の足元……その地面の高低数値を、下にマイナス180、横幅の数値を90スライドさせた。
【
指定した範囲内の地面を、俺は自由に
そういう操作をすることで、一瞬で落下していく盗賊親分。
まるで落とし穴にはまったかのような動きだった。
「うおっ……!!くそ、落とし穴だとっ!いつの間にっ!」
「……ご
盗賊親分は、
しかし、大の大人が本気になれば、自分の身長と同じサイズの落とし穴など登ってこれるだろう。
だから。
「――
「なんだとっ!!ふざけ――な、なんだっ!!土が……横から!!が、がぁぁぁぁぁ!!
俺は横の数値だけを元に戻した。
そうすることで、盗賊親分を囲むように、
そうすることで、首だけ残された
「――へっ……ざまぁみろ」
「くそっ……出せっ!!このぉぉ!!うおぉぉぉぉぉ!!」
無駄だって。ついでに、土の
俺が数値を戻さない限り、半径50mくらいを掘り返さないと出てこれねぇよ。
「はっ……殴られたお返しだよ、盗賊のおっさん。せいぜいそこで反省してな!!」
俺は、思い切り右足を振り上げる。
「――おらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
全力の力を込めた蹴りを、おっさんの
いくら十歳の子供とは言え、
「まっ――」
待つわけねぇだろっ!くらえボケェェェェ!!
「てっ――ぎゃふんっっっ!!」
ガクン――と盗賊親分の顔が沈んだ……よしよし、完全にノックアウトだな。
ちょ、ちょっとやりすぎたか?
いやいや……腹を殴られたし、顔を斬られたんだし、これくらいいいよな。
よし……!後は、この状況を怪しまれないように、どう説明するかだな……外にいる――クラウ姉さんに。
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