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 トラックが停止した。荷台はサスペンションに傾き、廃材の山を吐き出す。その全てを区別無く処分場へぶちまけると、扉は閉まった。トラックの振動はすぐに遠ざかり、何の灯りも無い中に、動くものも無くなる。


 その静寂を確かめた後に、それは動き出した。回虫の如く身を捩るそれは、肩から先の無い一本の腕だ。指先だけで廃材の上を這いずり、埋もれていた俺――――の頭を掴むと、転がっていた胴体へ取りつけた。

 そのまま腕は、俺の肩に通電する。元は1番のものだが、規格に問題は無い。その手で1番の頭を拾い上げる。


「侵入できたな」

「ああ」


 安物の、それも劣化した元セクサロイドだ。パーツ単位に分解すれば廃材にしか見えない、その中に紛れるのは容易かった。

 互いのパーツを拾い集め、やがて俺たちは立ち上がった。


「来い」


 1番は処分場を出ると、迷わずに通路を進み、更衣室に入った。


「一人は裏口から進む、だったか」

「もう一人はIDカードと変装で、守衛室のセキュリティを無力化する」


 IDカードは一枚だ。それに同じ顔のアンドロイドが二人もいれば、間違いなく怪しまれる。目的の最奥区画までは、別行動を取るべきだった。

 1番は更衣室のシャワーを指した。同時にロッカーを開け、作業着を俺に渡す。


「廃材の臭いを落とせ。これを着ろ」

「俺がか」

「お前が行け」


 1番の思考速度は俺よりも優れる。重要な役割は、1番が果たすべきだ。


「1番の方が適している」

「やれ」


 低く、無機質な口調だった。1番は何事もそのように言う。

 だが、俺に重要な役目を回すのは、これまでも一度や二度ではない。その1番の判断が、間違いだったことも無い。

 俺は作業着を受け取った。


「わかった。IDカードをくれ」

「渡した筈だが」


 持っている筈がない。潜入すると聞いたのはたった今だ。

 作業着を確かめるが、カードは入っていなかった。


「落としているぞ」


 1番が指したロッカーの隙間、IDカードが挟まっている。俺はそこに近づいていない。


「いや……」

「幽霊でもいると言うのか」

「すまない」


 1番は何も返さず、更衣室を後にした。


 落としたのは間違いなく1番だ。電子的にメモリ制御されたアンドロイドの記憶に、誤謬はあり得ない。俺はIDカードを渡された覚えもない。

 電子回路そのものの経年劣化、メモリの揮発、記憶媒体の異常。あの1番が。

だが兆候はあった、耐用年数に近い1番には、いつどんなエラーが発生してもおかしくはない。そんな1番がこの計画を建てた。このまま行っていいのか。


 違う、だからこそだ。1番には金が必要だ。

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