1-6

 俺は即刻シリンダーを叩き割った。栄養薬剤が床一面に飛び散り、眼球が転がっていく。スピーカーも沈黙した。


 殺してくれ、そう言われた。ならばこれ以上、無意味な会話を聞く必要もない。俺は依頼通り実行しただけだ。


 そして指定されない限り、いつどこで何をするかは、俺が決める。


 この眼球は今死ぬ、もう価値は無い。出会った記憶そのものが、ストレージ容量を圧迫する。俺は要点だけを記録し、直近の音声データを消した。

 最後に俺は、眼球を踏み潰す。完全に息の根が止まったことで、条件プログラムが作動し、口座入金がされた。通知された額の半分も無いが、この手の仕事ではマシな方だ。


 俺は何かに背を向けて、その住処から外へ出た。


 ニューヨコハマはまだ、クリスマス前の雨だった。

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