エピローグその2 彼女は 

 1年ぶりの、我が家。いや、1年と半年か。

 あたしは久しぶりの我が家を前に、はああ、と深呼吸する。

 帰ってきた。帰ってきたんだ。

 ドクン、ドクンと心臓が強く鼓動している。

 里帰りした人って、こんな気持ちなんだろうか。

 あたしはもう1度深呼吸をして、気持ちを落ち着かせてから改めて家の門を開く。

 ギイ、と懐かしい音がした。

 玄関へと続く飛び石を1歩ずつ踏みしめていく。

 きちんと掃除されているようで、向こうの世界とは違い、苔などの汚れは一切ついていなかった。

 玄関まできたあたしは、恐る恐るドアの取っ手に手をかける。

 そして、ゆっくりとドアを開いた。


「あの……」


 あたしが声を上げると、リビングから母が顔をのぞかせた。


「あら、綾音。随分と早かったじゃない」

「……!」


 久しぶりのお母さんの声。お母さんの顔。私は思わず泣きそうになって、うつむいてしまった。


「……?」


 ああ、お母さんだ。いつものお母さんだ。

 心臓がキュウ、とする。


「どうしたの、綾音」


 お母さんが心配そうにあたしに寄って来る。

 あたしは顔を上げた。

「大丈夫」と呟きながら目元を腕でごしごしと擦って、涙を払う。

 そして、とびっきりの笑顔を向ける。

 ずっと言いたかったことを、今。




「ただいま!」






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私の心の怪物は 香屋ユウリ @Kaya_yuri

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