第19話 イチローくんのエゴサとぼく
「じゃあ、キスは改めてね。まずはTV収録に集中しましょう」
TVの内容は青川学院大学とこのサークルのことがメインだった。
その中の一部としてサークルの部長とまりさんと小田切とぼくがインタビューを受ける。
「では青川学院大学のサークルの方々にお越しいただいています。
では早速インタビューをしていきましょう」
女性司会者がテンション高めに取り仕切っている。
司会者、花菜さん、まりさん、小田切、ぼくの並びだ。
話は普通に盛り上がっている。今のところぼくへは話が振られていない。
「部長さんとミルフィーユの二人のことはよくわかりました。
では最後に紅一点のイチローくんにも話を聞きましょう。
イチローくんはダンス初心者だけどサークル活動はどうかな?」
「は、はい。先輩の皆さんは素人のぼくでも優しく教えてくれます。
本当に優しいです」
「まりさんみたいな国民的なアイドルでもいろいろ教えてくれるの?」
「は、はい。ぼくを男の子扱いしないみたいで気にせず何でもしてくれます」
「たとえば?」
「え~っと、すっぴんでぼくの周りうろうろしたり、ノーブ」
「ちょ!っとイチローくん、話がそれてるよ~」
まりさんがすかさずカットイン。
「あっ。ほんといろいろと助けてもらっています」
「じゃあ、そんなイチローくんのダンスシーンを見てみましょう」
「え!撮ってたんですか?」
「はい。この日のために一部隠し取りをしていました。もちろん大学側と部長さんには了承を得てですが」
ぼくの下手くそなダンスシーンが流れる。
それを丁寧に教えてるまりさん、これは好感度があがる。
まりさん、サークル、大学すべての好感度があがりそうなくらい
素晴らしい動画だった。
あれだけアイドルのまりさんが丁寧に汗水垂らしながら教えている様は
国民はみんな好印象にしか思わないだろう。
「いいシーンでしたね。たしかにイチローくんはやらせではなくて初心者でしたね。
では最後に準備体操から一生懸命なまりさんと奈央ちゃんの好感度が爆上がり、みんながドキドキするシーンでお別れをしましょう」
ぼくの映像が映る。そしてまりさんがそこに現れた。
「え!?このシーンは.........」
なんとまりさんと小田切に準備体操を手伝ってもらったお色気準備体操が流れ始めた。
たしかにまりさんと小田切は一生懸命だが、このシーンはおっぱいが押しつけられるシーンだ。世間一般がよしとするわけがない。
「はーい、カット~~」
ここで収録が終わった。
「みんなお疲れ様。最後はちょっと悪意のあるシーンだったけど許してね。
視聴率が最優先だからあの映像を使わないわけにはいかないのよ」
「はい。あのシーンを使うのは大学側からも聞いています。現役アイドルがあそこまで密着してサークル活動するシーンはそうそう撮れないとのことで使うようにと言われていますので」
「じゃあ、この収録は3日後に流れますので楽しみにね。ではお疲れ様でしたぁ」
「みんな、おつかれさまでした。TVはサークルの時に上映会をしようと思うから3日後にみんなでみましょうね。それとイチローくんへのご褒美の件は上映会後にしましょう。みんな前日にニンニクは厳禁で」
花菜さんが面白おかしく話をしてくれる。
「イチローくん、だれからするか順番は決めておいてね。奈央ちゃんは嫌だったらその分私が2回しておいてあげるから言ってね。イチローくん、2回目はディープにしてグレードアップしてあげるから安心してね」
「そんな激しいのはできないです。それにもうキスなくても良いです」
「あれ?奈央ちゃんとしたくなかったの?」
「し、したいですけど」
「じゃあ、当日を楽しみに待ちましょう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
上映会当日、17時から特集シーンでTVから僕たちの収録した映像が流れ始めた。
部員達はうれしそうにたのしそうに見ていた。
番組も終盤、ぼくがまりさんと小田切に密着されて準備体操をされているシーンで
ちょっとした事件が起こる。
男子部員がスマホ片手に声を上げる。
「やばい。めっちゃ炎上してる。イチロー!おまえ殺されるぞ」
「え?? どうしたんですか?」
「今のシーンでミルフィーユのファンだけでなくて一般人もみんなおまえにぶち切れだ。ツイでもイチローを特定しろ、探し出して殺せ、あいつをさらせ、とかめっちゃかかれているぞ」
みんなが一斉にスマホを見始める。
!!!
ぼくは血の気を失った。
とんでもない内容が書き込まれている。
もうすでに名前も住所も特定されているようだ。
携帯番号は前のものがさらされている。
不幸中の幸いでこの前のまりさん暴行事件の時に携帯電話は変更したので
この新しい番号はほぼ誰も知らない。
「はいはいはい!ここにいるみんなは仲間でしょ。イチローくんが困ったらたすけあうのが仲間。みんなこのあと気にかけてあげてね。
イチローくん、まりちゃん、奈央ちゃん、別室に来てくれる。
みんなはこれで解散で。お疲れ様」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「まさかこんなになるなんてごめんね。イチローくん」
「はい。怖いですがなんとか乗り切ります」
そうはいったものの芸能人がエゴサして精神的に追い込まれる気持ちが
痛いほどよくわかる。怖すぎる。一般人ていうのはこんなにも破壊力があるのか。
「それでイチローくんのテンションがさがっているので盛り上げたいと思います。
それではお約束のキスタイム!では誰からするか教えてちょうだい」
「えっ?ええ~~!!」
ぼくは一気に感情が明後日の方へ揺さぶられた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
炎上ほど怖いものはないですね。
ついにイチローのファーストキスが。誰からするのでしょうか。
次がどうなるか気になった方は☆レビューをお願いします。
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