第17話 まりさんと小田切のマネージャーとぼく
収録が始まった。
マネージャーの僕は撮影セットの脇で待機している。
さすが有名音楽番組。テレビで見たことあるミージシャンがところ狭しと座っている。
「ミルフィーユは今日から新メンバーが加入なんだって?」
司会者の大物芸能人がリーダーのまりに話しかける。
「はい!半年に一回の恒例入れ替えです」
「まりちゃんはファン投票1位だから安泰でしょ?」
「そんなことないですよ〜!今回の新人はめちゃかわです。わたしはもうあったんですがメンバーのみんなはまだ会ってないから今日初顔合わせです。
うかうかしてられないと思いますよ」
「ほぉ〜、それは楽しみだね。ではさっそく呼ぼうかな。ミルフィーユ、新メンバーの『奈央ちゃん』でーす」
ステージから離れていたところで観覧していた俺は「奈央」という名前に反応してしまう。
(まさかな、同じ名前を聞いただけでドキッとしてしまう。
ほんとうに好きなんだろうな、ぼくは)
「はじめまして。ミルフィーユ、新メンバーの奈央です」
「え!!」
ぼくは驚きを隠せなかった。僕の瞳に映ったのは正真正銘、幼なじみの『奈央』だ。
そういうことか。まりさんがやたらとぼくに変な言い回しを続けていたのは。
まりさんは小田切がミルフィーユに加入すること知っていて今日僕を御道路書くつもりだったんだ。
(まりさん、めっちゃこっち見てる。僕の驚いた顔見て喜んでいる)
「奈央ちゃん、緊張してる?」
司会者が声を掛けた。
「はい。TVに出るのも初めてなので」
小田切は緊張で声が震えている。
「まりちゃんの言うとおりかわいい子だね。奈央ちゃんはまりちゃんと同じ大学で同じサークルだそうだね」
「はい。すごくお世話になっています」
「僕も大学生だったらそのサークルに入りたいよ。2人に囲まれてダンスするんでしょ?」
「そうですね。ダンス未経験者の子には手取り足取り腰取りと
つきっきりで教えたりもしますよ」
まりさんが無邪気な目をして合いの手を入れる。
こんなことを平気で言えるから人気が出るのだろう。いやらしさがない。
「腰取りまで教えてもらえるなんてうらやましいねぇ」
「だって後輩はかわいいですもん。お姉さんとして頑張っちゃいます!」
まりさんはファンサも完璧だ。
まりさんの声、まりさんの言葉のチョイス、まりさんの笑顔、
すべてがファンを魅了するのだろう。
「奈央ちゃんもまりちゃんみたいに頑張ってね。それでは新曲
『新入生を虜にするぞ』です。どーぞ」
(なんだ、そのタイトルは。さすがアイドル曲。でも小田切は新曲なんか歌えるのか?初顔合わせって言ってたぞ)
でも見事に歌いこなしたのだった。
無事に初収録を終えた小田切。完璧にセンターを務めたまりさん。
2人が僕の元に駆け寄ってくる。
「ねぇ、私と奈央ちゃんどっちがかわいかった?」
またまりさんのとぼけた質問が飛んでくる。
小田切もその質問にびっくりした表情をしている。
「もちろん、両方ともかわいかったですよ」
「ええぇ!そこは奈央ちゃんでしょ?」
「はあ!?いつも小田切って言うとすねるの誰ですか?」
「やっぱり奈央ちゃんの方がかわいいんだぁ」
小田切を見ると真っ赤に顔を赤らめて下を向いていた。
「いや、小田切、ちがう、ちがうよ。これはまりさんの陰謀で」
「じゃあ、かわいいと思っていないんだ。今日デビューなのに」
「いや、かわいいに決まってるじゃないですか。誰よりもかわいかったですよ」
小田切の顔からは湯気が立つほど真っ赤になっている。
「ち、ちがう。小田切。忘れて、わすれて」
「もう、いいじゃない。イチローくん。認めなさい。
認めたらいいことあるよ、きっと」
「もうわかりましたよ。まりさんには敵いません。
小田切はかわいいです。これで満足ですか」
「けっこうけっこう。では本題です。
本日付で星野まりのマネージャーになったよね」
小田切が顔を上げて驚いた表情をしている。
「はい。無理矢理ですが」
「それでは改めて正式に処遇を言い渡します。
本日をもって鈴木イチローを星野まり兼小田切奈央のマネージャーに任命します」
「は、はぁ!?」
「今日から私たちのまねとしてよろしくね。奈央ちゃん良いよね?」
「はい。まりさんにお任せします」
「ちょっと僕に選択権は.......」
「あると思うの?」
「ないです」
「よろしい。では今日から二人分しっかり面倒見てね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとがき
まさかのまりさんと小田切のマネージャーに。
これからのストーリーに期待をしていただける方は
ぜひ☆レビューをお願いします。
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