第5話 まりさんのルール0とぼく

「これが最後。ルール0」


「ルール0?」

驚いた僕はまりさんの言葉を遮ってしまった。


「そうだよ。一番大切なことだからルール0だよ」

まりさんは人差し指を立てながらお茶目に発表する。


5まで進んだルールがいきなり0に戻るとなると相当なルールが制定されるのだろう。

僕は固唾をのんで見守る。


「ルール0:私に手を出してはいけない!」


「............」


僕は無言になってしまった。


「その顔は、さては困ったかな?私に手を出したいよね?男の子だし」

さすがアイドル。自分に自信満々だ。


「いえ、逆です。そのつもりでしたし、僕が手を出せる訳がありません。

 逆に無理難題では無くてホッとしました」


「ええ!?『それは無理です。僕も男です』とか言うかと思った」

まりさんは驚いて口が開いたままだ。


「いやいや、僕は女性の扱いを知らないので安心してください。

 なにもできないです。ノーブラだけでご飯3杯いけますから」


「はははっ!なにそれ。でもよかった。わたしガードが甘いからすぐにゆるしちゃうんだよね。いろいろと......」


(なんですか。その新情報は。じゃあ男と同棲しちゃだめでしょ)


「なんか気付いたらまりさんのペースで同棲することになっちゃいましたね」

ぼくはその話を深掘りしてはいけないと思い話をそらした。


「ごめんね。でも人助けだと思って。それにイチローくんにもきっとメリットがあるから」

まりさんは何かが含まれているような笑みをこぼした。

それがわかったのは次の日の朝だった。


僕のアパートは2DKだ。急遽同棲することになったので荷物部屋だった一部屋を空けてそこにまりさんには住んでもらうことにした。


新生活も始まったばかりで荷物も少なかったことが功を奏した。ルームシェアは比較的簡単にできそうだ。


もちろん別々の部屋で寝る。布団は2セットある。ママと妹がこの部屋に遊びに来るために予備布団を購入していたからだ。


二人の話し合いは終わり、僕はシャワーを浴びてダイニングを通った。

そのときまりさんは楽しそうにテレビを見ていた。


まりさんはどこから持ってきたのかなぜかラフな格好の部屋着に着替えていた。顔には白いパックをしていて腕の肌にはなにかクリームらしきモノを塗っている。

髪の毛が垂れないようにイチゴのヘヤピンをしていた。さすがにイチゴのヘヤピンはロリっぽく見えてしまう。見た目なんか気にせずに自分の部屋でくつろいでいるようにしか見えない。都会の女性はなんにでも対応できるんだなあと感心さえしてしまう。


「まりさん、おやすみなさい。明日はまりさんに合わせて動きますのでよろしくお願いします」


「イチローくん、おやすみ~。明日もよろしくね。………ってその前に匂いかいで」

まりさんが白パックお化けのような顔のまま首筋を広げる。


「わかりました。気絶したら看護お願いしますね」

僕はそういうとまりさんの首筋に顔を近づけた。


白いパック姿だと母親のパック姿を思い出す。

まりさんへの抵抗感が爆下がりだ。


……………ちゅっ。


勢い余ってまりさんの首筋に僕の唇があたる。


「ごめんなさい。ごめんなさい」

僕は一気に緊張状態になり平謝りをする。


「さっそくルール0を破った!」

白いパックの向こうで頬を膨らませているのがわかる。


「ごめんなさい。ほんとうにごめんなさい」

僕は謝ることしかできない。


「うそうそ、いまのは気にしなくて良いよ。

 イチローくんも気絶しなかったし

 おやすみのちゅってことにしとくね」


「ほっ、ありがとうございます。以後気をつけます」


「あれくらいはいいよいいよ。

 それともほんとうにおやすみのちゅっ、

 する?」


「えっ?」

僕は心臓が一気にドキドキし始める。

今のやりとりの間にまりさんはパックを取っていた。

まりさんのすっぴんが目の前に。

パックの後で肌がテカテカだ。すっぴんでもかわいさが増している。


「い、いえ。大丈夫です。僕はまりさんに

 そんなことしないです。安心してください。

 おやすみなさい」

ほんとうはドキドキなのに平静を装う。僕はまりさんのすっぴんが

かわいすぎて顔が真っ赤になってしまっていた。

僕はそれを隠すかのように部屋に小走りで走っていった。


そして朝起きたらとんでもないことになっていた。


……………………………………・・


(う~ん。寝返りが打てない)


僕は身体が重くて目を覚ました。


(なんか腰のあたりに柔らかい感触が......)


「えっ!まっ、まりさん!」


まりさんが僕の下半身に抱きついていた。


「ま、まりさん」

僕の身体にシャツと下着姿のまりさんが抱きついている。

僕は大きく目を見開いてしまう。寝起きなのに一気に頭が冴えてしまった。


「ま、まりさん、起きてください!」


まりさんの身体を揺らして起こそうとする。


「もうちょっとだけ〜」

まりさんは寝言を言いながら目を覚さない。

さらにぎゅっと僕の身体に抱きついてくる。


(!!)

抱きついてきたまりさんの腕が僕の股間に当たる。


僕の下半身は寝起きでパンパンだ。

直にまりさんの腕が僕の股間に伝わってくる。

もちろん人生初めての経験だ。

僕は固まる。

動いたら大噴火をおこしてしまうかもしれない。そうなってはアクシデントどころではない。

昨日のおやすみのちゅっに引き続きルール0を破ってしまうことになる。

噴火してはいけないと思えば思うほど僕の意識は活火山に集中する。

全ての血流が股間に集まっていく。


あとはもう噴火まで時間の問題だ.........



…………………………………


あとがき


第5話をお読みいただきありがとうございます。


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