第15話 小田切奈央の『こんどね』とぼく


…………………


……………


………


ガラガラガラ


「イチローくん!どうだった?」

まりさんがいきなり医務室に飛び込んできた。


「あっ、」


「え!?」


僕も小田切もまりさんも一瞬、時が止まる。


まりさんからしたら僕が小田切にキスしようとしてるように見えただろう。


「ごめん……… 続きをどうぞ」

会釈をして私を気にせず続きを続けてくださいと手を前に差し出している。


「え、い、、いや」

僕は慌てふためくのに小田切はぴくりとも動かない。


そしてまりさんはなぜか握り拳をグッと握って僕の方に向けてきた。

それは頑張れってことなのか?


まりさんはどこかに走って行った。



「ごめん、小田切。まりさんていつもあんな感じなんだよね」


「そう。まりさんもきたことだし、わたし帰るね」


「え?」


「まだなにかあった?」


ぼくはまだ小田切の匂いを嗅いでいない。

匂いを嗅いで気を失わないか確認したい。

それはうそだ。

ただ単に小田切の匂いを嗅いでみたい。

それだけだ。


「うん、気絶しないかまだ調べられてないから」


「また今度にしましょう。まりさんも近くにいるかもだし」


さっき走って逃げたのに近くにいるのかと辺りを見回してしまった。


いた!


なんてわかりやすくのぞいているんだ。

まりさんは医務室の扉越しに半分顔が出ていた。


僕とまりさんの目が合う。


まりさんは驚いたかのような顔をして扉の向こうへ顔を隠した。


バレバレだ。

それは小田切も気付く訳だ。


まりさん、せっかくのキラーパスが台無しです。

むしろオウンゴールしてますよ、それ。

僕はため息をついた。


ふぅ〜〜………


小田切が急に振り返る。

僕と目が合う。


なんかドキドキした。


(こ、ん、ど、ね)


小田切が口パクでそう言った。

間違いなく『今度ね』だ。


まりさんに内緒で小田切とは一緒に行う共同作業。それが約束された。


まりさん、ボールはラインギリギリに残ってました。星野まりの1㎜です。


「じゃあ、わたしいくね」


小田切は颯爽と何事もなかったかものよう

部屋を出て行った。


あからさまに引き違いの扉のガラスの向こう側にまりさんの頭のシルエットが丸見えだ。


あれで書かれているつもりなのかな。

やっぱり天然なんだろう、まりさんは。


「まりさん、そこにいるのわかってますよ」


「やっぱり?わたしも女の子だし、続きは気になっちゃうよね?」

たしかに僕が反対の立場でもあの後2人はどうなるのだろうと気になってしまう。



「それでも。わかりやすすぎます。そこにいるのバレバレです。だから小田切は帰ったんですよ」


「ごめんなさい。ところでわたしがくる前にいいことはあったの?」


「ありませんよ。まりさんが現れた時がピークでしたよ」


「そっかぁ、もうちょっとシャワー浴びておけばよかったかな」


「ほんとにそれ。あんなパス出したら観客は総立ちでブーイングですよ」


「ごめん」

まりさんが深々とお辞儀をした。


おっぱいの谷間がゆさゆさとゆるいTシャツ越しに見える。


「まりさん!おっぱいみえちゃう!」


「えへ。シャワー浴びたからブラもつけたくなくって」


「僕が困ります!」


「奈央ちゃんのが良かった?」


「い、いや、それは、その………」


「あっ!シャワー浴びたし、匂い嗅いで」


「えっ?ここで?」


「うん、さっきは気を失ったけど

シャワー浴びたから大丈夫か検証しよっ」


「わかりました。やればいいんですよね」


「やったー」

まりさんは僕の方を向いてベットの上に正座した。動きや仕草がいちいち可愛いのがまりさんだ。

小田切がいなかったら僕の心はイチコロだっただろう。


まりさんが上を向いて首を大きく開ける。

真正面からは初めてのパターンだ。


「えっ!?」


まりさんが片手でTシャツの首元を大きく下に下げている。


そこまでしなくても首の匂いはかげるのに………


僕の顔がまりさんの首元に近づいたその時、


んぎゅ〜〜!


まりさんのおっぱいに顔が埋もれた。頭を上から押さえつけられている。


「ん〜!ん〜!」

僕は声が出せない。


ぷは〜っ!


「ちょっとなにするんですか!」

僕は急なことにおっぱいに顔が埋もれていることを忘れている。


「だって、わたしのせいで奈央ちゃんといちゃいちゃできなかったでしょ?

だからその代わりにと思って」


「なんなんですかそれ」


「わたしのおっぱいはきらい?」


僕はその言葉に人生初のおっぱいに顔が埋もれていたことを思い出す。

いや、とっさのことでもう覚えていない。

それでも一気に僕は顔が赤くなり

ドキドキが急激に激しくなる。


「い、いえ、嫌いじゃないですけど」

いつものようにまじまじとしてしまう。


「じゃあ、すき?」


「たぶん………でもさっきのは一瞬だったのでもう覚えてなくて………」


「じゃあ、もう一回する?」


「えっ………?」

僕の目に輝きが戻ったみたいだ。


「イチローくん、し、た、い?」

まりさんが僕の感情を読み取るかの如く

色っぽく誘惑してくる。


僕はもうドキドキが止まらない。

目の前にあるまりさんの豊満なおっぱいに釘付けだ。


「は、はい………」


「残念………」


「ざんねん……?、はっ!しまった!!」


「そうなの。ルール0発動しちゃったね」

まりさんは満遍の笑みで僕のミスを楽しんでいる。


僕は同じ過ちをした。2回目だ。

したくないって言えばまりさんのルール1発動で

今ごろ僕の顔はおっぱいに揉みほぐされていただろう。


なんてミスを犯したんだ。

僕は後悔しきれない。

顔に悔しさが滲み出ていたのだろう………


「イチローくん、顔やばいよ」


「ごめんなさい。つい、自分が許せなくって」


「ラストチャーンス!質問です」

僕のやばい顔を見てもう一度チャンスをあげようと優しいまりさん。


え!?この流れは敗者復活なのか?


「小田切奈央ちゃんと星野まりちゃん、

どちらが好き?さあ、答えなさい」


なんかとんでもない質問がきたぞ。

純粋には小田切だ。でももう一度チャンスをくれる女神様が目の前にいる。まりさんと答えるべきか。まりさんに気持ちよくなってもらったほうがいいのか………


あっ!まりさんて答えたらさっきと一緒で僕がまりさんに好意があるから手出し無用になる。

これも罠か!


「小田切………」


「やっぱ、奈央ちゃんのほうがいいかぁ。

 そうだよね。イチローくんの好きなのは奈央ちゃんだよね」

まりさんはあからさまにテンションが下がっている。


「あのぉ、答えは間違っていましたか……?」


「パフパフはなしだよ。だって奈央ちゃんに負けてるんだもん」


がーん!また間違えた。

とことん反対に行ってしまう。


「ちなみにまりさんて答えてたらどうなったんですか?」


「ん?もちろんルール0発動だよ」


!!!

なんて人だ。どのみち無理じゃないか。


僕の驚く顔を見てまりさんは楽しそうにニヤついている。


やられた!これは楽しみたいだけか。


「わたしのおっぱいでも気を失なわなかったし、今日はもうおうちに帰ろうか?」


「はい、帰りましょう」


ようやく波瀾万丈な1日が終わった。


そして次の日、またまりさんにハメられる。



………………………………


あとがき


ここまででひとまずは一区切りです☆


ちょっとでもまりさんか奈央ちゃんが好きって思た方は☆レビューよろしくお願いします🥺













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