第0話 小田切奈央の過去とぼく
「本当に無理……
私、ビジュ必要だし」
僕はまたしてもフラれた。
ついに5回目だ。
僕をフッた【小田切奈央】は僕の幼なじみだ。
田舎で一緒に育ったにも関わらず、
小田切は1人だけ都会育ちのような洗練さを身にまとっていた。
髪の毛はロングでそれに見合うだけの背の高さ。切れ長の綺麗な目。
足はスラっと長く、スカートの丈も短めで透き通るような白い足が
一際目立つ。
小田切が通り過ぎると誰もが振り返ってしまうような美少女だ。
実際、複数のスカウト会社がこんな田舎までスカウトに来たのはこのあたりでは有名な話だ。
そんな小田切とは中学生の時に一度お付き合いをしたことがある。
1回目の告白は小学生5年生の時だ。
僕はいじめられっ子だった。
修学旅行でよくある『好きな人誰だよ、全員1人ずつ言おうぜ』でまんまと僕だけ発表させられた。
「おい、イチロー!小田切に告れよ」
いじめられっ子だった僕には断ることができなかった。事実、僕は小田切が好きでもあった。
「無理......」
その一言で玉砕した。
小田切とは仲は悪くない。幼なじみだからお互い知った仲だ。だから遠慮なく僕をフれる。
小学生6年生の時、いじめっ子達にもう一度告白を強要された。
「卒業式だ。イチロー、告ってこいよ!」
もちろん拒否はした。
でもいじめっ子達には到底勝てない。
告白場所も指定された。
今思えばおそろしいいじめだったと思う。
卒業式の最中、それも卒業証書を受け取るときだった。
「小田切さん、好きです。付き合ってください」
ザワザワザワ。卒業生も在校生も保護者も一斉に僕を見る。
「おいっ。鈴木!」
舞台袖から担任の先生が止めに入る。
「いや、だから無理」
透き通るようなその声はみんなの耳に響く。
またしても玉砕だ。
僕が小田切に告ってフラれたことは学校だけでなく、
この小さな町では有名になった。
しかし奇跡?は中学生の時に起こる。
「イチロー!小田切がお前のこと好きだって。
大チャンスだ。告ってこいよ!」
えつ!?僕のこと好きなの?
疑うことを知らなかったお人好しの僕はその話を信じてしまう。
「小田切、やっぱり好きです。
付き合ってください!」
「いいよ。」
まさかの告白成功。
そして付き合うことになった。
何をすればいいのかわからない。
毎日電話することもなく、
LINをすることもない。
学校ですれ違うだけ時に会釈をして終わるだけだ。
間違いなく告白はOKされた。でも何も進展しない。
それでも好きな人と付き合っているということだけで僕は幸せだった。
勇気を振り絞ってLINをする。
「来週どこか遊びに行かない?」
「ごめん、用事があるんだ。また今度」
………………その次の週、
「来週どこか遊びに行かない?」
「ごめん、用事があるんだ。また今度」
………………さらにその次の週、
「来週どこか遊びに行かない?」
「ごめん、用事があるんだ。また今度」
もうすぐ付き合いはじめて1ヶ月が経つ。
未だに進展はない。
その次の週にLINを送ることはなかった………
その前にフラれてしまったからだ。
「イチローくん、奈央が別れてほしいってさ」
小田切の親友が僕に声を掛けてきた。
「えっ!?……… なんでかな?」
僕は心臓がドキドキする。付き合い始めてからは逆に何もしていない。何もできていない。
僕がしつこく誘いすぎたから?
好きって言ったのは小田切なんじゃないの?
いろんなことが脳裏に勝手に浮かぶ
「奈央が前に言ったのは『イチローくんのことは嫌いじゃない』なの。それを男子たちがいつのまにか『好き』って奈央が言ったって勘違いしてたの。奈央はイチローくんに恋愛感情はないの」
「えっ、えっ………、じゃあ、なんでOKしたの?」
俺は心臓がバクバクしながら目が回りそうだ。
「別に嫌いじゃないし、イチローくんは害はないし、高校卒業するまでだれとも付き合う気はないからイチローくんを彼氏にしておけば他の男子から告白されないしそれなら良いかなってOKって言っちゃったんだって。
でも冷静に考えたらそれも違うかなってさ」
「あっ、そういうことなんだ。僕のこと好きじゃなくて無害だからダミー彼氏にしておきたかったんだ。それならダミー彼氏のままでもいいよって小田切に伝えおいて。その方が小田切が助かるなら僕はそれでいいよ」
もちろん僕はショックを受けた。でも気弱な僕は小田切にフラれても小田切が僕のことを好きじゃなくても小田切の役に立ちたいと思ってしまうしょぼい僕がいる。
ダミー彼氏でも小田切の彼氏には違いない。中学生の僕にはそれだけでも大満足だった。
しかし返ってきた答えは違った。
「ダミーでも無理」だった。
僕の儚い初めての恋人は電話をすることも、デートに行くことも、プライベートで顔を合わせることさえもなかった。
そして中学の卒業式でもいじめっ子達に告白を強要された。
もちろん卒業証書を受け取る壇上でだ。
状況と結果は小学生の時と全く一緒だ。
次の日には町中にこの話が拡がったのは言うまでもない。
高校生3年生の時の卒業式にも告白させられた。
小田切も僕ももう慣れっこだ。
小田切の優しさなのかいつもの「無理」からもう一言付け足してくれた。
「私、ビジュ必要だし」。
僕はかっこいい顔をしていないのは自分でも理解してる。
高校の卒業式では僕が小田切に告白すると生徒も町民のみんなも思い込んでいる。
なんなら卒業式なのに告白を見に来るギャラリーもいたほどだ。
ある意味その期待に僕と小田切は応えたのだ
高校で小田切との関係は終わると思っていた。
それが違った。
僕がこれから通う青川学院大学には芸能学部がある。
なんと小田切奈央も推薦で青川学院大学に入学するのだ。
まさか同じダンスサークルに入ることになるとは思いもしなかった。
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あとがき
小田切とぼくの小中高時代はいかがでしたか?
週間ランキングが後退したので☆レビューいただけると
助かります。
よろしくお願いします。
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