第12話 小田切奈央の身体とぼく

(ちょっとまてぇ、なんてキラーパスを出すんだ!

 やっぱり泥船じゃないか)

ぼくはまりさんの行動に怒りさえ覚えた。


「まり先輩は組まなくていいんですか?」

「私は今日講師だから振り付けの確認しておきたくて」

「わかりました」


小田切が立ち上がり僕の方に歩いてくる。

ドキドキドキ。

まりさんへのドキドキとなんか種類がちがう。

息が苦しい。胸が締め付けられるようだ。


「鈴木くん、聞いてたよね」

「うん」

「もう一度足開いて」

僕は無言で足を開いた。


小田切の手が僕の背中に触れる。

初めての体験だ。

好きな人に触れてもらえる感動がいまここにある。

ドキドキが苦しいながらもうれしさもある。

もしかしてこれは最高のキラーパスだったのかもしれない。

まりさん、代わってくれてありがとう。


そして僕の感動はこれだけではまだ終わらなかった。


むにゅ~!!


小田切のおっぱいが僕の背中に押しつけられる。

まりさんほどは大きくはないが

ブラの感触とともにおっぱいの柔らかさもわかる。

まりさんのおっぱいは恥ずかしかったのに

小田切のおっぱいはなぜかうれしい。


まりさん、代わってくれてほんとうにありがとう。

まりさんのキラーパスのおかげで小田切の小ぶりなボールが2つ

僕の背中に転がってきました。


「力抜いてっ」

小田切が耳元で僕にささやく。

小田切の息が耳にかかる。

さっきまりさんが僕にしたことと同じことをする小田切奈央。

好きな人のおっぱいが当たって力が入らないわけがない。


ふぅ~


ぼくは一呼吸して力を抜く。


むにゅ~


また小田切のおっぱいが僕の背中を襲う。

小田切は見様見真似でまりさんの真似をしているのか。

それ以外考えられない。

あのクールな小田切がおっぱいをおしつけることも

耳元でささやくことも想像ができない。


ちなみに僕の股間はぱんぱんだ。

これは仕方ない。生理現象だ。

悪いのはまりさんだ。そう言い聞かせる。


「じゃあ、代わって」


(え?僕が小田切の身体触って良いのか...

 いや、だめだ。今は動けない。

 なぜならぼくが男真っ盛り中だからだ)


「もう少し押してもらっていいかな?」


「わかった」


「おい、イチローのやつおかわりしたぞ」

「まりさんの次は奈央ちゃんか」

「マジで空気読めよ、あいつ」


恐ろしい声が聞こえてくる。

僕は身体が震えてしまう。


「周りは気にしないで。次は押しつけないから」


(え!?わざと押しつけてたの??)

ぼくは小田切奈央がわからなくなった。

ふとまりさんの言葉を思い出す。

(女の子は好きな人に触られるのはすきなんだよ)


僕に触るってことは、僕におっぱいを押しつけるってことは

僕のことが好きってこと?

僕は勝手に想像して耳まで真っ赤になる。


「は~い。準備体操しゅうりょ~う」

花菜さんが大きな声を張り上げた。


ふぅ~、おわった~。

僕はホッと一息をつく。


「小田切、ありがとう」

「いいえ」


立ち上がっている小田切が僕に手を差し出す。

これは手を貸して起こしてくれるっとことかな?


僕も手を差し出す。

小田切が手を握りしめてぐっと引っ張り上げてくれる。


「ありがと」

「いいえ」


相変わらず淡泊な受け答えだ。

さっきの耳元でのやりとりはなんだったんだろうか。


今日はまりさんが講師でジャズダンスの日だ。


もちろん僕はついていけない。

他のイケメン達は難しい振り付けにもなんとかついていっている

女の子達も一生懸命だ。


ひときわ目を引くのが小田切だ。


高校時代にはスカウトもされていて芸能界入りが決定している。

小田切は昔からダンス教室に通っていた。

まりさんにも負けず劣らずダンスが上手だ。


僕1人、みにくいアヒルの子みたいだった。


「イチローくん、ここの振り付け苦手だよね」

「はい。難しくて」

「ここの手はこうして腰はこうだよ」

まりさんのマンツーマンレッスンが始まった。


またおそろしい声が聞こえてきそうだ。


「はーい。みんなはさっきの振り付けもう一度やっておいて」

まりさんはみんながおしゃべりできないように

僕に気を遣ってくれたらしい。踊らせてみんなを黙らせた。


まりさんは気にせず僕の背中を触りまくる。

(声は聞こえなくなったけど、その分視線が鬼強になってます)

「なんとなくわかりました。後は自分でやります」


「そう。わかった。

は~い、みんなもう一度復讐しま~す」


もちろん僕は振り付け通りに踊れない。

何人かはついていけない。


「じゃあ、ここからは選抜メンバーで練習するよ」

指導者のまりさんがかっこいい。

あんなに天真爛漫ですこし天然なまりさんが

しっかりしている。想像とは違った。


選抜メンバー以外は見学だ。


早い、激しい、かっこいい!


とくに小田切奈央とまりさんは別格だ。

部長の花菜さんもうまかった。


一糸乱れずその3人は自分が主役よと競うように踊り続けた。

ぼくは小田切に釘付けだった。

真剣そのもので他のダンサーよりも激しかった。


「奈央ちゃん、無理しないで」

息を切らしながらまりさんが小田切に声を掛けた。


「大丈夫です」

小田切も息を切らしながらなんとか返事をする。


「2人とも頑張りすぎ。無理しないの」

部長の花菜さんもそこに割って入った。


「なんかダンスバトルしてるみたいだな。あの2人」

となりで同学年のイケメン達が話している。


ライバルなんだ!あの2人は。

これから芸能の世界で戦う前哨戦がもう始まっているんだ。

ぼくはふたりのやりとりに妙に納得してしまう。


選抜メンバーのダンス練習も佳境だ。

まりさんも小田切もペースが落ちない。ハードだ。


グラッ...


ついに小田切がひざまづく。


「あっ」

とっさに僕は声がでてしまう。


となりで踊っていたイケメン先輩が小田切の腕をつかみ

持ち上げようとする。


パチンッ………


小田切が先輩の手をはたいた。


一瞬でその場が静まりかえった......



………………………………………………………………………


あとがき


第11話をお読みいただきありがとうございます。


まりさんと小田切の無言のバトルはいかがでしたか?

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