第7話 まりさんのおっぱいとぼく
ドクン、ドクン、ドクン、
僕の鼓動が高鳴る。
(こら!震えるな!)
緊張で震える僕の手を叱咤激励する。
心臓はバクバクだ。
手にも力が入って震えている。
側から見たら顔は真剣そのものだろう。
絶対に起こしてはいけない。
気付かれたらそれでジ…エンドだ。
触らない選択肢はない。
なぜなら僕は男になるからだ。
「すぅ、すぅ、はぁ〜」
呼吸を整えながら目指すべきはポチッとした乳首だ。
手で揉むと起きてしまうかもしれない。
指先だ!ほんの少しだけ触るだけでいい。
僕は右手の人差し指の先っぽに全神経を集中する。
ドキドキ………
ドキドキ…………
もうすぐ触れそうだ。
僕の指は足踏みをする。
心のどこかでまりさんが本当に起きないかどうか不安だからだ。
「…………はぁ、はぁ、はぁ」
なぜか緊張のあまり息が止まっていたらしい。
耐えきれなくなって息継ぎをする。
(落ち着け、もうすぐだ。少し触るだけでいいんだ)
……………
ツンッ。
(触れた!)
僕の細胞たちが歓喜の祝杯をあげている。
(おまえは勇敢な勇者だ!)
(やってくれると思ったぜ)
(今日から大人だな)
僕は達成した高揚感のすぐあとに、
この場から早く逃げ出したい恐怖感が襲ってきた。
これが限界だ。僕はやりきった。
(つぎだ!!! これくらいで満足するな)
悪魔が僕の細胞たちの祝杯を蹴散らし耳元で発破をかける。
(おまえならもうワンランク上の男を目指せる)
僕の中の悪魔が悪い顔をして僕を見ている。
まりさんはいまだ無防備だ。
たしかにチャンスはいましかない。
(よし、もう一度だ!)
僕は1回目の成功で味をしめてしまった。
2回目はもっと簡単に触れるだろうとたかを括っていた。
でも緊張感は変わらない。いや、むしろより高い。
なぜなら次のミッションはおっぱいに手のひらをあてがうと決めたからだ。
「すぅ、すぅ、はぁ」
極度の緊張感が僕をゾーンに導く。難関にチャレンジする僕は一流アスリートの仲間入りをした気分になっている。
よく見るとまりさんのおっぱいはまりさんの呼吸に合わせて上下運動をしている。
これだ!これに合わせることが成功の秘訣だ。
「すぅ、すぅ、はぁ」
まりさんの胸の膨らみに合わせて僕はエアーで手の位置をシミュレーションする。
僕は極度の緊張によりゾーンに入ったままだ。もうすでに一流アスリートのつもりだ。
一流の触り手として僕の頭の中ではすでに情熱大国の音楽がながれている。
そーっと手を胸に近づける。
ちょうどおっぱいの真上だ。
あとは少しずつ下降するだけだ。
完成間際に並べる残り数個のドミノ。
それを並べるような気分だ。失敗は許されない。
Tシャツに触れるか触れないくらいまで手を近づける。
(そーっと、そーっと)
僕はまだそこからは手が動かせない。
まりさんの呼吸に合わせてまりさんが起きないように手をおっぱいに乗せるいう試練が待っている。
(落ち着け、ぼく。これからが本番だ)
メインイベントの前に精神を新たに集中させる。
トゥトゥトゥ~トゥトゥ、トゥトゥットゥトゥ~……
情熱大国の音楽の音量が頭の中で大きくなる。
「ふぅー、ふぅー、」
僕は今、人生で一番集中している。
さあ、ここからだ。
!!!!
「ん〜っ!おはよう」
まりさんが両手を伸ばしながら目を覚ます。
サッ!
瞬間に僕は手を引っ込める。
僕の心臓はドクドクドクドクドクドクだ。
情熱大国の音楽はどこかへ飛んでいった。
身体も金縛りにあったような状態だ。
驚いて顔も動かせない。
バレてしまったかもしれないと考えるだけで心臓が飛び出しそうだ。
「イチローくん、おはよー」
まりさんはもう一度声をかけた。
「お、おはよー、ご、ございます」
「どうしたの?私のおっぱいでも触ってたの?」
まりさんは横向きになり楽な格好で僕を見ている。
この言葉で僕は死を悟った。
(バレてる!終わった。手を出さないと公言したのに即効で出してしまった。それよりも僕がしたことは変態だ。どうしよう………)
「ごめんなさい。誘惑に負けてまりさんのおっぱいを触ろうとしました」
僕は真っ赤に顔を赤らめながら素直に謝った。
「ねぇ、知ってる?女の子はみんな、好きな人から触られるのは嬉しいんだよ」
下から覗き込むように僕を見上げながら言った。
………………
僕はまりさんに見惚れてしまった。
すべてを包み込んでくれる優しい顔をしたまりさんに。
まりさんの言葉も僕の心を鷲掴みにした。
僕の心のメモにその言葉が追加された。
それってまりさんを触ってもいいってこと?
それってまりさんが僕のことが好きっていうこと?
いやいや、そんなはずはない。
仮にそうだとしてもルール0が存在している。
手を出してはいけないのだ。
「まりさん、僕は約束を破りました。
まりさんを触ろうとしてしまいました。
同棲は解除してください」
「うーん。今回はセーフで!」
「えっ!なんでです?」
「私も悪い気がする。だって私がこんな格好でイチローくんの布団に潜り込んだしね」
「いや、でも………」
「ルール1:私がノーブラでも文句を言わない。改め、私が何をしても文句は言わない。
これでどう?」
「まりさんを触ろうとした僕には何も言う権利はないです」
「じゃあ、決まりね。私が下着姿で部屋の中をうろつこうが、朝、イチローくんの布団に入って抱きつこうが、これから私が何をしても文句を言ってはいけません。いい?」
「はい。でもルール0を破ってしまいました………」
「今回はノーカウントで。私も悪いしね!
でもこれからはお互い守ろうね」
「僕は何も文句を言えません。従います」
もう悪いことはしないと実直な瞳でまりさんを見つめた。
「いい子。じゃあ起きて大学いこっ!
あっ、その前に嗅いで」
まりさんは首を大きく開けた。
僕はまりさんの首のあたりの匂いを嗅いだ。
気を失わない。でもクラクラする。
寝起きの女子の匂いはなんとも興奮する香りだ。
シャンプーでもない、柔軟剤でもない、その人の香りそのものだ。
(ああ、いい香り………)
「イチローくん、倒れそう?」
「あっ、すいません。大丈夫です。
ちょっと寝起きでクラクラしました。
いい香りですので安心してください」
朝から僕の心と体は大忙しだった。
緊張と興奮とご褒美の連続だ。
まりさんは僕が気絶しなかったので安心して一緒に大学へ向かった。
そしてそこで僕はまりさんとキスをすることになる……………。
……………………………………………………………………
あとがき
第6話をお読みいただきありがとうございます。
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