理想のパーティ
ガーディアンの生成が止まったことを確認してこちらを見る【勇者】レプリカに気付く。
ガーディアンはダンジョンコアが増援で呼んだ扱いで、つまり最初から発見状態扱いということで【不可視不在】は効かないという訳か。
『
こちらが動くよりも先に、【冒険王】のレプリカが動いた。
いや初手【狂化】って、マジか。
冒険王さんが特殊ジョブになる前はゴリゴリの【狂戦士】だったのってマジだったのか。
このダンジョンのレプリカの再現性について正確さを確かめる術はないが、ダンジョンというある種公平な存在であることから生前そのままの可能性が高い。歴史の謎を確かめられるかもしれないと喜ぶ歴史オタクも居るだろうが、今対峙しているオレからしたら勘弁して欲しい限りだ。
スキル【狂化】は別に理性を失うといったデメリットはないが全ステータスを大幅に上昇させる代わりに他のスキルを一切利用できなくなるバフスキルで、つまりただでさえ馬鹿みたいなガーディアンのステータスが更に上昇したということだ。
「くっ!」
当然、もはや残像を追うことが精一杯ということになる。
動き出したのを見てなんとか正面に構えた剣の上から全てを破壊する拳の一撃が振るわれた。
尋常ではない強化をされた拳は【魔剣製生】で作られた剣を砕いてそのまま腹に叩きつけられる。ガードの上から与えられた暴力は壁までオレをふっ飛ばした。
全身の痛みもさることながらヒットした腹がヤバい。内蔵が全て破裂したのではないかと思うほどの痛みを堪える。
『【バインド】、【エンチャント】、【フレイムバースト】』
こちらの立て直しなんて当然待ってくれない【勇者】のレプリカが実体化させたポーションを飲もうとしたオレを【バインド】で拘束して、【エンチャント】でバフをかけた【フレイムバースト】をぶっ放す。
お手本のような複数ジョブを跨ぐ殲滅コンボに避けることすら出来ないオレはスキル外スキルでなんとか貼った障壁で【バインド】の
障壁が破られて即座にこんがりと焼かれたが、ポーションを浴びたことで即死は避けることが出来た。
防戦一方ではこのままダンジョンアウトするしかなくなる。
今現場にいるのは言葉そのまま
【冒険王】レプリカについては【狂化】のおかげで遠距離攻撃をほぼ考慮しなくて良いが食らったら即死でかつ目で追えない速度ということで距離なんて関係ない。
そして、今のところ動きを見せていない【小夜啼鳥】レプリカはヒーラーなので直接攻撃には参加してこないだろう。
しかし、この場で最も優先的に倒すべきは【小夜啼鳥】レプリカだ。
【小夜啼鳥】レプリカ、それはこのダンジョン史において初めて死者の蘇生を可能とするスキルを得た回復術のエキスパートだ。
彼女が蘇生スキルを得てからダンジョン史におけるダンジョン内の死が無くなったとされていて【無死の日】として世界の祝日になっているくらいには認知されている。
ただ悲しいことに小夜啼鳥教とかいうカルト教団が生まれたり国際問題になりかけたり色々と後世に置いては本人に関係のない問題が多発している。
パーティ学でもセオリーとしてはヒーラーから倒せというのは鉄則で、なおかつ蘇生スキルを持っている【小夜啼鳥】レプリカはまず最初に倒さなければ無限に蘇生する【勇者】と【冒険王】を相手にすることになるので最初に狙うべきは【小夜啼鳥】レプリカだ。
今も【勇者】レプリカは【小夜啼鳥】レプリカを護衛するように立っていて、攻撃は【冒険王】レプリカに任せている。
あらゆるステータスで負けている状態で【勇者】の守りを突破して【小夜啼鳥】を倒さないとならないってこれなんてクソゲーか。
正面からぶつかれば確実に負けが確定する【冒険王】を避ける為、ジグザグと不規則に走る。
全身の血管がブチ切れるかというくらいに魔力をぶん回して強化をする。早すぎるせいで逆に直線的になる【冒険王】に読まれないように距離を詰め、【勇者】へ向かって剣を振るうと同時にスキル外スキルで範囲魔法を再現する。
例え当たっても即死なんて不可能だろうが、ダメージをどれくらい与えられるのか確認しておきたい。
そんなオレに向かって【勇者】の無情なスキル発生。
『【ディフェンスアップ】、【肩代わり】、【不動】』
【肩代わり】によって拡散しようとしていた魔力全てが【勇者】へと向けられ、【小夜啼鳥】を守る。
【ディフェンスアップ】と【不動】の防御バフによってこちらが向けた攻撃は全て無に帰した。
【不動】の効果で動けない【勇者】をアシストするように突っ込んできた【冒険王】。
ただのタックルでもその速度と筋力にかかればゴム毬のように吹き飛ばされた。
恐らく【虐殺者の証】の3割を引けたのだろう。接触時のダメージだけ無効化され、ダメージは壁に叩きつけられた事による痛み程度だった。
虐殺者の証のこと微妙とか言ってごめん、間違いなく即死級の一撃だったことを考えれば今過去一番役に立ってる。
ポーションを浴びながら、ガーディアンを見る。まだ戦闘開始から数分も経っていない。
だが、勝ち目など到底見えなかった。
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