配信7回目


 2日丸々休んでダンジョンアウトの後遺症からようやく回復したので早速草刈りの続きを行おうと思う。

 現在地は旧東京1番ダンジョンの入口の前だ。

 多少期間が空いてしまったので草刈りをどこから再開するのか悩みどころだった。

 恐らく低層階は問題ない。

 草刈り後の出現率が落ちた状態のほうが安全に狩れるA級がそれなりに居るらしいので一週間程度で元通りでは無いらしい。

 ただ、100階層からは大分人気もないらしくすっかり閑古鳥が鳴いているらしい。

 階層ボスがマジックゴーレムとかいう不人気モンスターなせいもあってもっと深く潜れる人はより深層に向かうし、適正以下の探索者は99階層までで狩りをするといった状態で500階層と同じようにある種の壁になっているようだ。

 モンスターのわき具合を見てからになるが、最悪100階層から再開もあり得るだろう。


 全力疾走すること1時間。

 ぶち抜き型の最大の恩恵を感じながらもたどり着いた100階層でボスフロアに入ったら、まさかの先客に驚いた。

 しかも先客は草刈り任務の時に気になっていた剣士系統四人の超脳筋パーティだ。


「あっ」

「ども」


 このお互い多分相手のことを認識してるけど名前は知らないくらいの関係性の人とどうやって話せば良いんだ。

 とりあえず挨拶だけしたが、どうやら相手のパーティはマジックゴーレムのリポップ待ちのようだ。

 オレ自身は前回の草刈り依頼の時点でマジックゴーレムを倒しているので通り抜け出来る。

 お互い顔見知りと言うにも微妙な仲なのでここは素直に通り抜けさせてもらおう。リポップ待ちしてるくらいだから多分オレが草刈りしなくても大丈夫だろ。


「じゃあ……」

「あのっ!」

「、はい」

「塩漬けさんですよね!?」

「えっなんで分かっ」

「その剣!どこのダンジョンでドロップした剣か聞いてもいいですか!?」

「圧が凄い」


 通り抜けようとしたら、まさかの声掛け。

 声をかけてきたのは禍々しい骨を継ぎ合わせたような剣を持つ青年。なんか……こう、全体的にシンパシーを感じる装備をしている。

 めっちゃ目がキラキラしてるけどこの人目線が剣にしか向いてない。


「ばかっ!失礼でしょ!」

「本当にごめんなさいこいつ剣キチで」

「悪気はないんですけど剣のことになるとマナーと理性が欠片もないゴミクズ野郎で」


 物凄い速さのスイングから繰り出された平手を食らって吹き飛ぶ青年を横目に一生懸命謝ってくるパーティメンバーらしき男女。

 凄い……何もかもがステレオタイプなラブコメの波動を感じる……!

 これが……陽!!


 圧倒的なチカラの差に戦いたオレは謝り倒す彼らの謝罪を素直に受けて立ち去った。



 下手なモンスターよりも強い存在に既にそれなりの成果を出したと錯覚してしまいそうだが未だ配信すら始めていない。

 あの調子なら100階層付近は陽のパーティが始末してくれることを信じて進むこと現在地200階層。

 前回もここらへんからスキルの通りが悪くなったが、オレ以外の人にとっても楽に稼げる狩り場ではないのだろう急に人気がなくなった。

 草刈り再開をするにはここからがいいと判断したオレは、配信設定を始める。


 今回の配信タイトルは「【作業配信】旧東京1番ダンジョン草刈り依頼、ダンジョンアウトまで2」。

 前回の物をそのまま流用した。

 各種設定確認して配信ボタンを押す。


「初めましての方もそうでない方もご視聴ありがとうございます。塩漬けちゃんねるです。今回も前回に引き続き旧東京1番ダンジョンの草刈りをして行こうと思います」


 いつもの視聴者さんのコメントや、初めてであろう人のコメントが雑多に流れていく。

 ちゃんねる登録者数13000人の力か、初見の人がそれなりに来てくれるようになった気がして嬉しい。


「今回は特に草刈り依頼という訳ではないですが、個人的な目標として、900階層ボスの討伐を目指しています。このダンジョンの階層ボスはどれも強敵揃いですが、階層ボスを草刈りできるくらいでないと完全制覇ダンジョンクリアなんて夢のまた夢ですからね」


 相性の問題もあるだろうが、800階層のイビルジャイアントはキツかった。

 ただただデカくて強い!みたいなボスは個人的には絡め手を使ってくるタイプのボスより苦手だ。


「さて、現在地は200階層です。ここからまた草刈りしながら潜っていくので、視聴者の方にはまた鬼のような作業をお見せすることになってしまいますが、お付き合い頂けると嬉しいです」


 草刈り再開だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る