鬼退治

 配信で使えるような塩漬け依頼を探して各地の旧系ダンジョン管理ギルドを回っていたのだが、ようやくその中で目ぼしい依頼が見つかった。

 依頼は旧香川4番ダンジョンの残留モンスター討伐依頼である。


 旧香川4番ダンジョンは【冒険王】の全国巡礼にて完全制覇ダンジョンクリアされたダンジョンの一つだ。

 それだけだと完全制覇ダンジョンクリアされたはずのダンジョンの塩漬け依頼がなぜ現代にまで残っているのか?となるだろう。原因は当時のスタンピード事情にある。

 全国のダンジョンが一斉にスタンピードを起こした大災害の当時は今と比べると洗礼済の探索者は少なかったらしい。(少なくともほぼ全員洗礼済の現代と比較したら全く比べ物にならない程度には)

 そのせいで地方都市のスタンピードの解決まで時間差が大きく被害も甚大なものとなったそうだ。

 中でも旧香川4番ダンジョンは島という独立した立地という事もあり、特に解決までの遅れが酷かった。それはもう、当然のように溢れ出たモンスターが完全に地上に適応してしまうほどに放置された。

 後ほど巡礼で来た【冒険王】もダンジョンの破壊は完了したが、逃げ隠れする地上のモンスターの完全駆除までは出来ず結果的に地上にモンスターが残ったままになってしまったということだ。

 それから数百年が経ち、歴史家の人が【冒険王】の足取りを追う名目で無人島となっていたその島に調査に訪れた所、まだモンスターが生きていることが確認されたのが二年前。


 ダンジョンの外でモンスターに殺された場合本当に死ぬ事になる。

 生命の保証も安全地帯も存在しない状態で何体居るかも解らないモンスターの駆除依頼を受けたがる人は居ないということで塩漬けされていた。

 そしてついに誰も依頼を受けずにいた旧香川4番ダンジョンの残留モンスター討伐依頼をオレが受けたというわけだ。


 勿論蛮勇ではないし配信の話題のために命をかけるとかそういった事ではない、ちゃんと勝算がある。

 普通の人は探知系のスキルだと【気配察知】や【フィールドサーチ】といったマップ上に敵の位置を表示するタイプのスキルを使う。

 しかしその手のスキルは表示するということで、ダンジョンのマップ機能の対象外の地上で使えないことが大きく難易度を上げている要因だと思う。

 しかしオレの使うスキル【生命探知】は使ってもマップ上に表示がされないが、代わりにダンジョンの外でも使える。

 人間については何故か探知できたり出来なかったりとばらつきがあるがモンスターに関しては逃すことがなかったので島中虱潰しに探索して根絶させることが可能だろう。

 そして1番大きい要因が【王眼】だ。

【王眼】は通常の【鑑定】と異なりステータスの詳細まで見える。

 どの程度の能力かの判定で倒せる相手か否かを見極めることで相手がどうしょうもなく強くて倒せないと分かれば迅速に逃げることが出来る。

 学生かつソロに任せる仕事ではないと散々受付で反対されたがオレがS級であること、ちゃんと勝算はあることを主張して無理そうなら即座に撤退することを【制約】してなんとか依頼を受けることができた。


 それでも心配している受付さんにせめてパーティメンバーを……と言われそうになったが仲間殺しの宿命の鑑定結果を差し出したらスンとした顔になって取りやめてくれた。

 この装備便利だな。

 今後もパーティ組まされそうになったら仲間殺しの宿命の鑑定結果を見せてやり過ごそう。

 スンとした顔の受付さんは、ようやく諦めたのか事前情報として歴史家の人が記録した情報を提供してくれた。


情報について要約すると、

 ・目視されたモンスターはオーガ系のモンスター

 ・複数の集落のようなものを形成していた

 ・集落外では必ず3体以上で纏まって行動している

 ・夜間になるとモンスターも眠る

 ・全てモンスターが異常進化名前付きの可能性がある


 歴史家の人、恐らく学生時代は高レベルの斥候系のジョブだったんだろうな。

 職業探索者でもないのに身の危険を犯しながらも取れる限りの情報を取ってきてくれたのだろう。

 地上に適応して数百年経っている時点でそうではないかと思っていたが全てのモンスターが名前付きネームドモンスターの可能性ありは厄介だ。

 仲間殺しのジョヴィアックでもそうだったが理性を得て異常進化が進むと本来持たない特性を持つモンスターになる。

 オーガ系の名前付きネームドは初めてなのでできる限りの対策をして行かないとならないだろう。

 

 きっちり準備ができたら、鬼退治だ。

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