第35話
「ここのセクションナンバーは?」
彼女が答えられる質問に切り替えると、速やかに返事が返って来た。
「α-①、メインワールドから一つだけα軸に分岐した世界よ」
私の意識の靄が晴れて行く、舌が滑らかに動く。
「ここに移動する前に居た世界は、確かβ-①だったな、少し中心部に戻って来たと言う事だな」
「そうね、コードネーム・アントニオ。貴方はβ-①では、猪木七哉と云う名前で、何時もの相棒達、マダムとケンと一緒に潜入していたわ」
「そうだ、あそこで追っていた反宇宙分子生物に不覚を取って、幻覚剤を足首に打たれて混乱していたという訳けだ」
「あら、もうすっかり覚醒したみたいね、念の為、一応検査して行く?」
「いや、もう大丈夫だ。新しい任務がほしいと言うのは嘘じゃない、ボスー長官の所に行って来るよ」
「お大事に、無理しないで」
白衣の袖をヒラヒラ振りながら、看護用アンドロイドは微笑んだ。
良い女だ。俺の彼女の里菜をモデルに作られたその顔は接吻したくなる程魅力的だ。
「ありがとうよ、里菜似のかわい子ちゃん、長官は執務室にいるのかい?」
「ええ、さっき部屋に入った所だわ」
可愛い笑顔を後に、私は研究室を出た。通路を直進すれば、執務室である。
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