第34話

ツーツー

ジーーー

甲高い機械の音が小さく低い音に変わった。

私は、それを合図にモニターにコードを打ち込む。

『ANTONIO』

閉ざされた白亜の扉が青く光る。

「いらっしゃい。アントニオ」

私を出迎えたのは、白衣のアンドロイドだった。彼女は、優しく微笑む。

「あなたは、少し休養が必要だわ。意識の混濁があるわよね。パワーの配分が上手くいっていない。このところ、仕事に行き詰まっている?」

私は、無言で頭を振った。

行き詰まっているわけではない。

ただ、足りないのだ。私の心を満足させる何か。

「新しい任務がほしい」

私はそう呟いていた。

目の前の彼女が、機械的ともとれるゆっくりな動作で瞬きをした。彼女は看護用アンドロイドで、私に指示を渡す役割はない。だから、困って反応できずにいるのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る