第30話
「里菜……」
目の前の彼女は黙って頷くだけだった。
「私は、君に謝りたいことがあって……」
私は次の句を継ぐ前に、息を呑んだ。それが私の決心だった。ところが、その瞬間にぐらりと椅子が揺れて、世界が反転する。私の手は宙を彷徨った。彼女の戸惑った顔が見えたがどうすることもできなかった。
私はそのまま冷たい水の中へと落ちていった。
水中で、私は様々な記憶を見た。
初めて里菜に会ったときのこと。私の祖母の膝枕。マダムとケン。断片的な記憶が浮かんでは消えていく。私が見てたのは、マダム?祖母か。いや、里菜か。
手探りで追いかける記憶の中に、ことさら輝いてみえるものがあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます