第25話

円盤に近づくと一箇所がうっすらと白く光りハッチが開いているのが見えた。

「さあ、そこを入ってくれ」

ケンに促され、私はゆっくりと歩を進める。

扉を潜ると真っ直ぐの通路が奥へと続いていた。マダムとケンに前後を挟まれる様にして歩き続ける。

内部は思いの他に広く、通路は延々と伸びている。どこにも照明らしき物は見当たら無いが辺りは太陽の自然光に照らされているかの様に明るい。壁自体が何らかの仕組みで発光しているのかも知れない。何処からか得も言われぬ魅力的な音楽が微かに流れていて、仄かに森の木々の香りがする。気分がゆったりと落ち着いて行く。


かなり先まで進んだ時に前方に扉が現れた。

「さあ、研究室に着いたわよ」

先を行くマダムが左手をかざすと、扉はゆっくりと左右に開いた。

何時の日か、嗅いだ事のあるような薬品の匂いが鼻腔一杯に広がった。


部屋の中の奥側には書架、左側には診察台と思しきベッドが置かれ、右手には机と数脚の椅子が並んでいる。

妙齢の美しい女性が白衣を纏いデスクに向かっている。

こちらを振り向くとゆっくりと口を開いた。

「お待ちしておりました、猪木さん。ご足労をおかけして大変申し訳けありません。どうぞそちらの診察台の椅子に座って下さい」

鈴を転がす様な美しい声だった。

「猪木さん、その娘に魅了されちゃ駄目よ。彼女は医療用のアンドロイドなんだから」

マダムが笑いを噛み殺しながら、少し意地悪っぽく私に囁いた。

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