第20話

「俺のいない間に、何いちゃついてるんだ」

頭の上でカラスの姿をしたケンの声が聞こえた。

「まあ、あなたには関係ないことよ」

マダムは目を薄く閉じてすましている。ケンはカァとひと声間抜けな声を出した。

「マダムはお前が思っているほどお淑やかな女じゃないぜ。からかわれないように注意しな」

ケンは私の困った表情に気がついたのか、そんなことを言った。

「ご苦労さま」

マダムは波に足を近づけた。マダムの足は波にとられることなく進んでいく。ケンは犬の姿に戻って、マダムの後ろをついていく。

「お前もついてきな」

ケンは躊躇する私に頷いてみせた。

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