第18話
マダムの足取りは優雅で、有閑階級の婦人が散歩しているようにしか見えなかった。その後ろに付き従うのは、ごく平凡な私と尻尾をふりふりするコリー。
私は自分の将来に不安を感じながらマダムの足跡をなぞるように歩いた。
まだ歩くのだろうか。ちょうどそう思った頃、マダムが立ち止まった。
マダムが海に向けて右手を水平に伸ばした。ケンは短く吠えると、次の瞬間にカラスとなってマダムの手の甲に止まった。
ケンはそのまま海へと真直飛んでいった。
呆気にとられる私をマダムはちらりと見て笑った。
「⭐︎✴︎✳︎、貴方はケンと呼んでるみたいね。ケンが船を呼びに行っているから」
潮風が吹いて、マダムの黒い服が揺れた。ロングスカートから覗いたマダムの足首は半透明だった。
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