第5話

始め一本だった黒い指はその物の中指だったのだろうか。指は次々と増え続け既に三本になっていた。

今や手首まで露呈しようとするそれは、決してヒトの物では無い。

異形の物である。


そしてそれはジワリジワリと確実に私に向かって伸びていた。

あまりの不気味さに逃げ出そうと思うのだが、身体がすくんで動かない。

心臓の鼓動だけが高鳴るが、手足は硬直して自由が効かない。

全身に嫌な汗が滲み出す。

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