第4話

婦人は吠えている犬を放置して逃げていった。犬は婦人を追うこともせずに吠え続けている。私は、恐る恐る犬に近づいた。二輪のハマヒルガオ、その根本に細くて黒い指がちょうど第一関節まで顔を出していた。私は自分の見間違いかと思って、目を閉じる。

クツクツクツ…

波音に混じって微かな音が聞こえる。私が目を開けると、その黒い指はさらに背を伸ばしていた。

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