暗夜商会強襲作戦ー3



✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎



東雲が田島と相対しているのとき。



湊、芹、葬狐の三人はサイクロプスと戦闘していた。




「ウオオォ」



短い雄叫びを上げた単眼の巨人は、眼前にいた芹に向けて拳を振り下ろした。



芹は地面を蹴り上げて、背後に回避する。



サイクロプスの拳は床を貫いて、大穴を開ける。




芹はカウンターで、サイクロプスに拳銃で応戦するが、分厚い皮膚の前に銃弾が止まってしまう。




半霊状態の湊が、脚部を蹴り付けるが表面の皮膚を抉る程度でダメージが殆ど入っていない。




「硬いっ」


「厄介ですね......」



今度は湊に拳を振り下ろしてくるが、半霊状態の湊をすり抜けて床の木材を粉砕する。



「西洋の化け物じゃ、気色悪いのぉ」




そう言ったのは葬狐だ。




葬狐は、人型の狼のような眷属を召喚する。



その眷属は、素早い身のこなしでサイクロプスの腕に噛み付く。



凄まじい顎の怪力で、腕の肉を引きちぎった。



「グオオォォ!!」



痛みからかサイクロプスはのぶとい声を荒げる。




サイクロプスは、眷属に両腕を振り下ろす。



だが、眷属はそれを容易く避けて再び首元に噛みついた。



眷属は、首肉を半分ほど噛みちぎったが、サイクロプスの剛腕に捕まってしまう。




そのまま剛腕の怪力に潰されて、手の中でバラバラになる。



「強いの......しかし問題なしじゃ」



葬狐は、再び眷属を召喚する。



体長10メートルはあるだろう白蛇と真っ白な体毛の白熊だ。



白蛇はサイクロプスの身体に巻きつこうとする。



だが、サイクロプスに身体を掴まれてしまい、そのまま引き裂かれる。




その瞬間にサイクロプスの片足を、白熊が鉤爪で切りつけた。



「グオォ」



足を切断され、サイクロプスが地面に倒れ落ちる。




「芹、刀借りるよ!」


「は、はい」




芹の腰にささっていた安全な方の刀を抜き取る。



湊はそのまま、倒れていたサイクロプスの首元に刀を突き刺す。




そのまま横薙ぎに首筋を切り裂く。



凄まじい硬度を誇るサイクロプスの皮膚だが、先程葬狐の眷属が与えた首の傷のおかげもあってなんとか切り落とすことができた。



サイクロプスはピクピクと身体を痙攣させて、完全に動かなくなる。




「やるの、この単眼でかブス随分と面倒くさい......」


「ミナト、お疲れ様です」



湊の元に二人が駆け寄ってくる。




湊は半霊化を解除する。



確かに身体中がギチギチと痛む感覚はあるが、吐血などはしていない。



随分と負担が減った。




「そっちも終わったみたいだね」



その時だ。



背後から声をかけられる。



そこには腹部を負傷した東雲が立っていた。



かなりの出血量だ。


傷口を抑えている片腕が真っ赤に染まっている。



「敵は殺した。私も不意打ち喰らって死にそうだけど......」



東雲よろよろとした足取りでそう言った。




「シノノメさん、それやばくない?」


「やばいね、悪いけど後方に私は下がるよ......血が止まりそうにない」


「誰か一緒に下がったほうがいいよね」



湊はそう言うが、東雲はそれを手で遮る。




「大丈夫、退路はあらかた制圧済みだろうし一人でも問題ないよ」


「でも......」


「平気平気、そんなに私やわじゃないし」



そう言うが、その傷では流石に心配する。



東雲はそう言い残して「あー、しぬ、まじで死にそう」などと言いながらきた道を戻っていった。



そう、去り際に手を振りながら。




「ちょっ、シノノメさん!?」



それを追いかけようとするが、葬狐に止められてしまう。




「心配はいらぬよ。東雲は常人より頑丈ゆえ平気じゃ」


「確かにそうだけども......」



言う通りだ。


だが、腹部からあれほど出血して心配にならないわけがない。





その時、湊の無線機に連絡が入る。




『こちら第二機動隊、洋館西側、制圧完了。被害は死者10名、重軽傷者31名、被害は許容範囲』



それに続くように立て続けに連絡が入る。



『こちら国防軍正面、こちらもあらかた制圧した。一部立てこもっての抵抗があるが、問題はない。被害は軽微』



次に入ったのは、日和の声だった。



『こちら、東側の第二分隊及び第三分隊、あらかた制圧は完了。第一分隊側に未制圧の区画があるのでそこに対応お願いしたい、途中敵の焼死体が散見されたーー味方、だとは思われる』



焼死体が散見ーー絶対にレイスの仕業だ。


にしても、一応無線で反応しておいた方がいいだろう。



未制圧の区間ーー恐らくだが、この先だろうか。


あらかじめ確認した見取り図では、今のいる廊下からでしかアクセスできない部屋があったはずだ。




「こちら第一分隊、把握した。えっと、こちら一名重傷、それ以外に損害なし」




一応それっぽい事を言っておいた。


これであっていると思う。




湊達は、先へ進むことにした。

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