暗夜商会強襲作戦ー2



東雲達は武器庫を通り抜けて、またさらに廊下を進んでいた。



時折現れる敵は、東雲の銃弾の餌食になり反撃を許すまでもなく殲滅していった。




「意外と敵そんなに強くないね」


「そうですね。練度はそう高くないように思えます」




強敵と言える強敵とは遭遇していない。


相手が人間主体の組織だからと言うのもあるだろうが。




「随分と殺してくれたようだな」



その時だ。


正面の廊下からゆっくりと男が歩いてくる。




その男は周りの雑魚とは様子が違った。


手に持っているのは短刀と拳銃だ。背中にもライフルらしき銃器を背負っている。




「私は田島だ、お前のことは知ってるぞ東雲。対策庁の主力の一人だな」



東雲は、そう言うとすかさず拳銃で発砲する。



男は銃弾を容易く避けると、一気に間合いを詰めて短刀を振り下ろしてくる。



東雲は咄嗟にそれを拳銃でガードする。



「めんどっ」


「それはこっちの台詞だ。流石はあのシノノメだ、なんと言う早撃ち、反応速度っ」



男は嬉しそうに微笑を浮かべた。



「東雲さんっ!」



湊は加勢しようとするが、廊下の暗闇から何が近づいてくるのに気づく。



それは体長5メートルはある単眼の巨人だ。


身体に体毛は生えておらず、それが不気味さを助長していた。



天井に頭がつきそうなほどの大きさの巨人は床を鳴らしながらもこっちに近づいてくる。




「あれはサイクロプスだ。欧州から商品として輸入したのだがーー緊急事態だ、兵器として運用させて貰う。お前らの相手はそっちだ!!」



サイクロプスーー確か西洋のどこかしらの神話に出てくる巨人だったはずだ。



「私には構わないで、あいつをどうにかして。こんな雑魚相手にならないから」



東雲は余裕そうな額で、汗一つかかないでそう言ってみせた。



「のう、あのダイダラボッチみたいな化け物を処理せんとな」



葬狐はそう言う。



「やりましょう。ミナト」



芹もそう言っている、ならば相手にするべきはあの単眼巨人だろう。



「負けそうになったら、助けに入るからね!」


「そんなことならないよ」



湊は念の為、東雲にそう言ってサイクロプスに対峙した。




「いつまでも余裕ぶれると思うなよ」




サイクロプスの方へと向かっていった三人を横目に、東雲は目の前の敵と対峙する。

 


田島と名乗った男はそのまま短刀を押し当ててくる。


ギチギチと銃身が火花を出しながらも削れていく。




東雲は拳銃を相手に押し付けて、そのまま距離を取る。




背中に背負っていた自動小銃を手に取ると、フルオートで田島に射撃する。




田島は身体中に風穴を開けて、その場に倒れ伏せる。




だがその次の瞬間、死体が消えてなくなっていた。



「な......?」



その瞬間、背後から発砲音が響きたわたる。



東雲は咄嗟に回避するが、一発の銃弾が頬を掠める。




「くっ......!?」





東雲は咄嗟に自動小銃で反撃する。




田島は身体中に鉛玉を受けて、床に崩れ落ちる。



だが、また倒れた田島は消滅する。



次の瞬間、背後から射撃される。



東雲は咄嗟に回避して、壁際の物影に隠れる。



田島を見てみれば、左腕から血を流していた。恐らく東雲の銃弾によるものだ。




(怪我している......? 不死者の類ではない。幻術師か)



恐らくあの系統からして、不死身の能力者ではなく幻術使いの可能性が高い。




東雲は、弾切れの自動小銃を投げ捨てて拳銃に切り替える。



そのまま、数発の弾丸を的確に田島の頭に撃ち込む。




「うっーーぐっ!?」



だが次の瞬間、背後から東雲の腹部に短刀が突き刺さる。



すかさず背後に銃弾を撃ち込んで、距離を取る。




「最近怪我してばっかなんだけど、最悪っ!!」



東雲は背後に立っていた田島に追加で二発の銃弾を撃ち込む。



田島は地面に倒れ伏せる。




そして東雲は間髪入れず、背後に銃弾を放った。




「うっ!?」



そこには田島が立っていた。



田島の胸部と首を拳銃弾が貫いた。




血を巻き上げながら、田島は地面に倒れる。


幻術じゃない、本体を攻撃したーー東雲は確信した。



「な、何故......本体の位置がば、バレた?」



田島は血を吐きながらもそう言った。



「幻術で作った分身が目の前にいるーーだったら本体は背後に回ってる、幻術師はみんなそうする......あとは、敵のいる位置を予測して撃つだけ。対幻術使い相手には有効な戦法だよ」




このレベルの幻術使いなら過去に何度か相手したことがある。


短刀での攻撃を喰らったのは不覚だったが。



「見ごとっ」



田島が喋り終える前に、頭部に銃弾を撃ち込んで射殺する。



仕事柄仕方がないが、人を殺すのはとても不愉快な気分になる。




「いたたっ」



東雲の受けた傷から血が滲み出てくる。



「これ、まずいな......血止まらないかも」



短刀は急所を的確に、貫いていた。




応急処置ではどうにもならない。


後方の医療施設が整った陣地まで撤退しないと行けないだろう。

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