暗夜商会強襲作戦
暗夜商会強襲作戦。
秘匿名称ーア号作戦
暗夜商会の本部施設がある山城家私有地、その海と山に挟まれた間にある洋館の制圧が任務だ。
比較的手薄の東側からは対策庁第一機動隊ーー少数精鋭の12名。
西側からは対策庁第二機動隊ーー150名。
海側からは強襲揚陸艦を起点とした国防軍特殊部隊員300名による奇襲を行う。
山側にも国防軍の特殊部隊100名が潜伏しており、敵の逃げ場を完全に封鎖している。
この戦いの特色上、超常世界を知らない一般兵を動かさないと言う制約があるため、戦力は心許ない。
しかし、相手よりも有利な条件、有利な兵力差であることは変わりない。
* * * *
『全部隊に告ぐ、作戦を開始せよ』
東雲の無線機にそう連絡が入った。
湊達第一機動隊は、暗夜商会の洋館が見える茂みの中に姿を隠していた。
「攻撃命令が出た、いこっか」
東雲はそう言うと、幾つもの銃器を担いで立ち上がる。
「なんか緊張するな......」
湊はそう言って、茂みから立ち上がる。
東雲の直属としているのは湊達第一分隊だ。
それに合わせるように、芹と葬狐、レイスが後に続く。
「まぁ、普通の任務とは毛色が違うからね」
東雲はそう綽々とした態度で答える。
「貴方がミナト?」
その時だ。
背後から声をかけられる。
背後を振り向くと、巫女服に身を包んだ若い女が立っていた。
同年代程度だろうか。
「まぁ、そうだけど......」
「そう、南雲家の人間ね。落ちぶれ一族には勿体ないくらいの才能の持ち主ね」
家族のことを馬鹿にしているような言い回しだが、湊自体家族のことが大嫌いなので気にしない。
「貴方は確かっ......」
湊が言い終えるよりも前に女は答えた。
「私は、第二分隊の分隊長の
日前家ーー国家直属にして、日本中の結界などの維持を生業とする一族だ。
湊も超常の一族出身者として名前くらいは知ってる。
「日前家の人がなんで対策庁に?」
「さぁ、私みたいな霊を感知できないくせに、魔術が使えるタイプは外に出した方が有用だからじゃない?」
日和と名乗った女はそう言った。
「喋ってないでいくよ。他の部隊に遅れちゃうから」
東雲にそう注意されて、湊は前を向く。
「なんの能力もない人間が生意気よね......」
日和はそうぼそっと呟く。
「でもあの人は本当に強いからね」
「どうせ人間の身体能力なんて限界があるのに」
日和はそう言うが、概ね正解だ。
だが、東雲は別格中の別格ーー身体能力は人間の領域を超えていると湊は思っている。
「東雲隊長に失礼ですよ、ヒゼン分隊長」
その時だ、日和の背後についていた男の分隊員がそう言った。
「......わかってる、だから
日和はそういってのけた。
東雲は聞こえているのか聞こえていないのか分からないが、彼女は背後を振り向かず真っ直ぐ進みつけていた。
暫く草むらをかき分けて、進んでいると目の前に洋館の外壁の前にたどり着いた。
「やっぱり裏口の方には入り口はないか......」
東雲は壁に梱包爆弾を取り付ける。
「離れて!」
東雲がそう叫ぶと、湊達は外壁から距離を取る。
暫くの間を置いて、爆発音が響き渡る。
頭を伏せていた湊が再び顔を上げると、人が通れるくらいの大穴が空いていた。
「いくよ!」
東雲達は、その穴の中に流れ込んでいく。
洋館の中に入ると、そこは両方向に無駄に長い廊下だった。
「どうします? 東雲隊長」
日和がそう言い放つ。
「二手に分かれるーースピードが命、素早く制圧してしまおう。私と第一分隊は右に、第二、第三は左方向に」
「了解です、では行きますか」
そう短い会話を終えると、両方に別れて走り出す。
暫く廊下を進んでいると、目の前から二人の人間が扉の前に立っているのが見える。
「し、侵入者だ!!」
「う、撃て!!」
自動小銃で武装していた二人の男は、此方に銃口をむけてくる。
だが、それ以上先に東雲の銃弾が、二人の頭部を貫いた。
東雲の手には拳銃が握られていた。
やはり東雲の身体能力と動体視力は桁が違う。
「多分この中、何かあるね」
東雲はそう言って、扉を開ける。
扉の中は倉庫らしき部屋だった。
中には所狭しに短機関銃や手榴弾などの武器類が置かれていた。
「すごい量の銃......本当に日本だよね、ここ?」
湊は思わずそう呟いてしまう。置かれている量の数が異常すぎる。
「まるで戦争するみたいねぇ」
そうぼやいたのは、レイスだ。
確かにこの空間に数百丁は銃が置いてある、個人でどうこうできる数ではない。
「侵入者だ、殺せ!」
その時だ。
背後から三人の人影が姿を現した。
シノノメ達は咄嗟に物影に隠れる。
その瞬間、銃撃の嵐が襲う。
その銃撃は止まる事は知らないーー頭のだしようがない。
「私が先行して飛び出します」
そう言って、芹が飛び出そうとする。
「まって」
それを湊が芹の腕を掴んで静止させる。
「無駄に命を張ろうとしないで」
「......っ」
「私がいく」
湊はそう言って、物陰から飛び出す。
それと同時に半霊状態に移行する。
先日葬狐から教わった肉体の感覚を意識しながらだ。
すかさず無数の銃弾が、湊を襲うが身体をすり抜けて言ってしまう
「あ、当たらない!?」
「なんだ、あの女......!」
二人の男は、驚愕の声を上げる。
「死んだらそっちが悪いんだから......」
湊は地面を蹴り上げて、男達との距離を一瞬で縮める。
湊の回し蹴りが片方の男の顔に直撃する。
「うひっ」
男が情けない声を上げると、数メートル吹っ飛んで背後の壁に激突する。
「な、なんなんだ、おまっ!!!?」
残った男が驚愕の声を上げたと同時に、男の腹部に拳を打ち込む。
男は背後に数回転しながら、地面を跳ねるように吹っ飛んでいく。
死んでるか生きてるかわからないが、これで死んでしまっていては仕方がない。そう、仕方がないのだ。
「とりあえずはちゃんと制御できていそうじゃの」
物陰から頭を上げた葬狐がそう言ってくる。
「うん、おかげさまでね」
確かに葬狐のおかげで随分と燃費効率が良くなっているはずだ。
「本当に能力制御できるようになったんだね」
東雲が感心しているようだ。
「本当に大丈夫なんですか? 身体への負荷が」
「大丈夫だよ、心配はいらないよ」
不安そうにしている芹を優しく宥める。
その時だ。
何人もの足跡がこっちに向かってきているのを感じる。
「あら、随分と大人数ね、十人、いや二十に近いかしら」
そうのんきそうにレイスは言った。
「ここは私に任せて、先に進んでちょうだい? この程度の人間余裕で殺せるわ」
レイスはそう言い放った。
確かにレイスにはそれが容易に可能であろう。
「なら全員で......」
「スピードが命なんでしょ、先に向かったほうがいいんじゃない? と言うよりかは私の能力的に一人で暴れる方がやりやすいのよ」
「......分かった。レイスの力量からして大丈夫だとは思うけど、気をつけて」
「勿論よ、当然」
東雲達はレイスを置いて先へと急いだ。
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