静寂の朝



湊は目を覚ます。



昨日は寝落ちしてしまったようで、壁にもたれかかって眠っていたようだ。




自分の足元で、芹が丸まって眠っていた。




「湊ちゃん、おはよう」




その時、東雲から声がかけられる。



「おはよう、東雲さん」



自分より先に東雲が起きていたのだろう。




テーブルの上にある皿やたこ焼き機を片付けていた。




「私も手伝うよ」


「大丈夫だよ、もう終わるところだから」



東雲はそう言い制止してくる。




「なんか、申し訳ないよ」


「いいんだよ。そもそも急に誘ったのはこっちだしーーてか、あいつ起きてる癖に手伝わないし」



東雲はそう言い、部屋のはじで横になっていた燕に声かける。




「あー、バレてた?」



寝たふりしていた燕はゆっくりと起き上がった。



「普通にわかりやすいんだよ、あんた......昨日ベットで寝てたくせに朝方に戻ってきてるし」


「いや、一人だけ部屋で寝るの寂しくてなって?」


「まぁ、なんでもいいんだけどさぁ」



東雲はそういうと、たこ焼き機を担いでキッチンの方へと持っていく。




「てか、燕起きてたんだ......」


「まぁね、めんどくさいこと終わってから声かけようと思ってたんだけどさぁ」



そう悪びれもなく言う燕。




松葉杖を使えば歩けるので、片付けを手伝えないわけではない。



ただ、やりたくないだけだ。





その時だ。



湊のスマホに着信が入る。




その相手は葬狐だ。




彼女もかなり長い年月を生きてきた神格存在だ。



そんな人物が、現代技術の産物であるスマホを使用しているのもなんだかおかしく感じてしまう。




『今暇しておるか? この前言っていたお主の力の制御を教えたいのだが』


「もう少しあとなら大丈夫だけど......」


『昼前にはきてほしい。ちょうどいい練習台を見つけたのじゃよ』



練習台ーー何か嫌な予感がする。




「湊ちゃんの部隊の子?」



東雲が横からそう声をかけてくる。



「うん、葬狐」


「あのお狐様ね、にしてもとんでもない上位存在が組織入りしたね」



やはり東雲から見ても、葬狐は相当な存在なのだろう。




それにしても力を制御できるようになるのは、あまりにも嬉しいことだ。

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