硝煙の魔女と狐神



湊は職員に案内された部屋に入る。



職員は外で待っているとの事だ。




部屋の扉を開けて、部屋に入ると二人の人物の姿がある。




「お主がその分隊長とやらの人間か?」



片割れがそう問いかけてくる。


問いかけてきた人物は、10代前半程度、銀色の髪に整った顔立ち、狐耳と狐の尻尾を生やした人外ーーいや、神格だ。




「妾は葬狐ソウコ。隣にいる欧州の妖術師含めて、お主らとは格が違う存在じゃ、せいぜい敬う事よの」



随分と偉そうな子供ーーそれが湊の第一印象だった。



しかし、彼女の身体から溢れる霊力量は本物だ。


恐らく本当に神様の類なのだろう。




「あらあら、随分と元気なのね。動物上がりの精霊程度がーー随分と背伸びしたがりなのね」



それを横で嘲笑うような発言をしたのは、朱色の髪の女だ。20代前半くらいのような外見に感じる。




「なんじゃ不敬じゃぞ、妖術師風情が!」



女は葬狐ソウコと名乗った少女を無視して、ミナトに話しかけてくる。



「初めまして、私はレイス・フォールン。世間的には魔女って呼ばれている存在よ。訳あって日本に来てるんだけど......別にどうでもいい事よね」


「妾を無視するでない! この人もどき」



葬狐はレイスと名乗った魔女に飛びかかるが、片手で軽くいなされてしまう。




「えっと、南雲湊ナグモミナトと言います。よろしくお願いします」



状況は詳しく飲み込めないが、とりあえず挨拶くらいはすべきだろう。




「湊ね。覚えておくわ......それと、もっとラフな話し方でお願いね、あんまり堅苦しいのはきらいでね」


「わかりましたーーじゃあ、普段の喋り方で」



お狐様の方はともかく、魔女とは話が通じそうな雰囲気だ。




「それで、湊は私達を束ねるって言うんだから相当強いのよねぇ、なら今度手合わせをお願いしようかしら」


「えっと、まぁ......お手柔らかにお願いできれば嬉しいなぁ」





こんな事言ってくるやつは多分まともじゃないかもしれない。



「妾を空気扱いするな!」



そう声を荒げたのは葬狐だ。



「この妾を差し引いて、葬霊酩狐ノ巫神の名を関するこの妾を差し引いて!」



「その無駄に長い名前は自分でつけたの? 覚えられないわぁ」



ミナトもそんな名前の神様なんて知らない。もう葬狐ソウコで覚えておけば充分だろう。




「それで貴方達は、なんで対策庁に?」



「そうねぇ......恥ずかしい話、向こうヨーロッパでの立場が危うくなって逃げて来たの。最近向こうは物騒なのよ」


「妾は、不敬な人間どもーー形代連盟の奴らじゃ、奴らが妾を攫おうとするからの、敵の敵は味方というやつじゃ」




どうやら二人はかなり訳ありなようだ。

 


その点自分も似たようなものではあるが。





「それじゃあ、これからよろしく頼むわね、湊」


「こちらこそよろしく、レイス」




湊は、レイスから伸ばされた手を掴んだ。



「妾の事を精々崇めるのじゃよ、人間二人よ」



「あぁ、よろしくお願いね、ソウコ」




こうして、湊は厄介な爆弾を二つ抱える事になった。

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