不安しかない
それから2週間がたった。
湊も明日でこの施設を退所する事となった。
怪我も完全ではないが、かなり完治してきており、固定用のギプスも必要がなくなった。
東雲や燕はもう少しここで治療を受けるそうだが、芹も一緒に退所するそうだ。
とはいえ、芹は定期的に検診を受けなければいけないそうだが。
しかし、ここで問題が一つ出てくる。
帰る家がないという問題だ。
対策庁の本部だったミラ・トレード株式会社は表向きには爆発テロで倒産したと言う事になった。
自分で物件を借りなければいけないのだが、この前まで高校生だった湊はどうすればいいのか分からない。
一応国防省の方から、面倒な手続きを省いて物件は紹介してもらえるのだが。
「湊さん」
国防省の職員の男が声をかけてくる。
「こちらの物件はどうでしょうか? 都心部のマンションですが賃料はこちらで半分受け持ちます」
そう言って物件の情報が記入された紙を見せてくる。
賃貸で月30万程度。
半分補填してくれると考えたら、15万円。
湊の所得を考えれば充分住める。
それに高層マンションの中でも、かなり上の方だ。
「少し安い場所もありますが、どうしますか?」
「せっかくなんで、ここにします」
幾つか物件を見てみたが、せっかくならここに住もう、余裕だけはある。
なんせ今月は傷病手当含めて手取り107万円も振り込まれていた。
絶対に縁がないと思っていた高層マンションだ。折角なら試しに住んでみようと思ったのだ。
「港区に住むミナト......ふっ」
咄嗟に頭に浮かんだくだらなすぎる駄洒落が口に出てしまう。
「結構くだらない洒落を言うんですね......」
職員が真顔の冷めた表情でそう言ってくる。
「いや、その......忘れてください」
自分の言った駄洒落のつまらなさに、顔が赤くなる。
「あぁ、それと湊さんの分隊のメンバーを紹介しようと思っているんですが、お時間ありますか?」
「えぇ、勿論大丈夫です」
「湊さんの分隊ーーというよりは第一機動隊は、特異能力者を多く採用しようと思っております。それでですがーー」
職員は、そこまで語って言葉を詰まらせる。
「どうかしたんですか?」
「いや、それが、その......湊さんの下につく二人が問題で」
「と言いますと?」
「一人は神格存在、もう一人は武闘派の魔女です」
湊は彼が言葉を詰まらせた意味を悟った。
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