首なし
日光の光が一切届かない地下聖堂。
数百年前に迫害を受けていた秘密宗教の信者達が作り上げた空間だ。
現在ここは、欧州に端を発する異形たちの集合組織ーー首なしの拠点となっている。
「ついに四つ目回収できたんだー。私もそっちにいくよー」
随分とラフな口調で電話越しに喋っている吸血鬼の姿がある。
正気のない白い肌に真っ白な雪のような髪、そして鮮血を彷彿とさせる赤目。
それらの特徴は、リタやリアスよりも顕著で、禍々しく感じる。
その容姿はまさしく真なる吸血鬼と言える。
その少女は、携帯電話を切るとゆっくりと口を開いた。
「てなわけで、こっちの防衛は任せるよー。私は日本に行ってくるからさ」
少女は隣にいた男にそう言った。
黒髪、長髪の青年だ。
身長は2メートル近く、筋肉質だ。
彼もまた人外の気配を醸している。
「ついに始まるんだな、ユキノ」
「うん、準備は整ったしね」
ユキノと呼ばれた吸血鬼を微笑を浮かべる。
「日本かー、何年振りだろうなー、少し楽しみ」
「そういえば、ユキノは人間だった頃は日本人だったな」
「そうだね......だから大勝負の場を日本にしたんだよ。まぁ、それ以外にも理由はあるけどさ」
「なら俺も行こう。この決戦でお前の悲願が叶うかどうか決まるのだろう? ならば俺もいた方がいい」
男の発言を聞いた、ユキノは首を横にふる。
「エリンシュはこっちに残って欲しいな。聖会の動きも怪しい、北方の三大魔女達もどう動くか分からないし、まだ根強く抵抗してる連中も沢山居るしーーそれに全部対応できるのエリンシュだけだからね」
エリンシュと呼ばれた男は「わかった」とだけ短く言い放つ。
「まぁ危なくなったら助けを呼ぶよ。ミリアそこにいるんでしょ?」
ユキノがそう問いかけると、暗がりから一人の少女が姿を現す。
そのミリアと呼ばれた少女は、ローブにとんがり帽子を被ったいかにも魔女風の女だった。
「お呼びですか? ユキノ様」
ミリアと呼ばれた魔女は、何処か君の悪い微笑を浮かべる。
「私と、ナトラ、アラストル、ロナウド、ロックスを転移で日本に飛ばして欲しいんだー」
「五人だけですか? 少し人数がいた方が宜しいのでは」
ミリアから最もな質問をされる。
「いいのそれで、兵力なんて向こうの人間を吸血鬼にすればいいだけだし。それにこっちも東欧の大部分に進出してるわけだしさ、そうやすやす主力戦力は引き抜けないでしょ」
「まぁ、それはそうなのですが......」
と言っても5人とは心許ない。
「リタとリアスも先に日本にいるし、兵力としては充分」
ユキノはそういうと、その場から立ち上がる。
「ここからが正念場だよ。私は全部を賭けるよ」
ユキノは自身を鼓舞するかのように言った。
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