議題



国防省隷下異形物対策庁。



40年前、幾つかの怪異に関連の組織を政府主導で、一つの組織に統合した国家機関だ。



その性質上、元の組織の権力者の権限が非常な強く、国側が完全に掌握できていないのが現状だ。




主に主要な構成組織は、六つ。



斎乃宮家。


陽華山家。


日本魔術師協会。


日上仏僧連合。


陽光結社。


国防省対怪異部門。



これらの主要な組織に細々とした地方の弱小結社、国家機関の人員を加えて運用されている。



この組織の上層部というのは、主要な五の組織の長と、国防省の内務者一人により運営されている。



それゆえに、国側の融通も聞きづらい。


半分は独立した組織、全て国家の言いなりになっているわけではない。



だが、暗闇から人類を守るためには必要な組織なことも変わりはない。



国防省からすれば、非常な扱いづらいのだ。





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「吸血鬼の大量発生の件だ」



重苦しい会議室で初老の男が口を開いた。



そこには、6名の姿がある。



彼等こそ、対策庁の最高指導者達だ。




「今月と先月で、吸血鬼による事案が17件も発生している。それも東京近辺ばかりでな」



「それで隠蔽と対処の方は上手くいっているのか?」



法衣姿の老人が口を開いた。



「対処の方は問題ない。どれも下等な吸血鬼だ、通常兵器でいくらでも殺せる。隠蔽の方は少しばかり難しいがな」


「まぁ良い。今まで通り何とかなるだろう、各社メディアに圧力をよりかるべきだ。インターネットでの関連情報削除もだ」


「この事態は異常だ。こんな短期間で吸血鬼が自然発生するとは考えずらい」




本来、吸血鬼とは発生リスクが低い存在だ。



一年に多くても数回ある程度だろう。



「ではなんだ、人為的に作られたとでも?」


「その可能性もある、形代連盟にも動きがあったそうだ」



「形代連盟が吸血鬼の量産方法を編み出した......そう言いたいのか?」



そう口にしたのは、日本魔術師協会の旧統括長の男だ。



「いや、その可能性は低い、もしかしたらあるかもしれないがな......それより」



しばらくの沈黙の後、再び口を開いた。



「"真祖"の吸血鬼が生まれた、と言うのがまだ有力だろう」



真祖という言葉を聞いた一同は、しばし固まった。



「真祖か、500年単位で産まれない伝説級の異形だ.....」




記録で残る真祖は、約500年前のヨーロッパ、もう一つはローマ帝国の時代に遡る。


その真祖がこの日本で発生したと言うのは信じ難い話しだ。




「可能性の話だ。いのままに同族を増やせるのは真祖の吸血鬼だけだからな。そう考えれば辻褄が嫌でも会うのも事実」




これは対策庁のとして、あるいは国家としてかなり危険な事態と言える。



かつての記録からして、真祖を相手取れば万単位の犠牲が出る可能性がある。


そんなものが日本に蔓延っているとは考えたくもない話しだ。



「東ヨーロッパでは、ここ10年で吸血鬼の秘密結社が急速に規模を拡大しているようだがーー日本に進出したのではないか? あれらの統領が真祖という憶測もある」


「わざわざ日本にか? あれらも大組織いえど現地の対異形組織との抗争でそんな余裕はあるまいよ」



「まぁ、そちらの路線でも調査を続けていくとしよう」



「それと、懲罰部隊の生き残りーーセリはどうしたのだ」


「あのクズの子供は死んでないでしょうね。おそらくシノノメ辺りが匿っているんだろうな」


「その辺りを洗って、連れ戻すか? 殺すか?」


「いや、こんな忙しい時期に貴重な戦力と揉める必要はない。後回しだ」



そう会議はいつまでも続いていく。



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