本物の織姫様 4人用台本
ちぃねぇ
第1話 本物の織姫様
【登場人物】
鷲見(わしみ):チャラい男
琴乃(ことの):一方的に追いかけまわされている女
白鳥(しらとり):部長
園部(そのべ):新入部員
鷲見:ねぇねぇ、ことちゃん
琴乃:なんですか、鷲見先輩
鷲見:シたい
琴乃:はい?
鷲見:ことちゃんと、イチャイチャしたい。というか致したい。合体しよ?
琴乃:一度死んでくれませんか
鷲見:辛辣~そんなとこも可愛いぞ
琴乃:白鳥せんぱーい、バカ一人引き取ってくれませんかー?
白鳥:あー無理無理。そいつ年中発情期だから
鷲見:やだな~僕が抱きたいのはことちゃんだけですよー?それに~僕たちは何万年も前から赤い糸で結ばれてるんで~
琴乃:勝手に結ばないでください
鷲見:え~デスティニー感じてるの僕だけ?ことちゃんもほんとは感じてるんでしょ?その小指には見えない赤い糸がしっかり結ばれているんだよ~?
琴乃:じゃあ今すぐ引きちぎりますね
鷲見:なんで!
白鳥:鷲見、あんまりしつこいと部長権限で退部にするぞ。長谷部さんがタフだから聞き流せてるけど、お前の発言は完全に大学のハラスメントに抵触してる
鷲見:ハラスメントだなんて!僕はただ何万年も前から探していた恋人に愛を囁いているだけで
白鳥:お前何歳だよ。まだ二十歳じゃねぇか
鷲見:もう!そういうことじゃないでしょ!何回説明させるんですか
白鳥:何回聞いても理解できないんだよ
鷲見:じゃあもう一回だけ説明してあげますね
白鳥:いらん
鷲見:僕は、彦星の生まれ変わりなんです
白鳥:要らんって
鷲見:僕はずっと離れ離れになった織姫を探していました
白鳥:聞けよ
鷲見:どんな女の子と付き合ってもうまくいかない、長続きしない、ときめかない…これはきっと、運命の相手ではないから
白鳥:お前の付き合い方の問題だろ
鷲見:天文部に入ったのも、星好きな女の子ならば織姫の生まれ変わりがいるかもしれない、そう思ったからです
白鳥:不純な動機で入ってくんな。あとトンデモ理論だってことを自覚しろ
鷲見:僕は毎年女の子をくまなくチェックしました。新入生が入れば声をかけ、ラインのIDを交換しました
白鳥:毎年苦情の嵐なんだが
鷲見:だけどどうにもハマらない。最後のパズルのピースがどうにも見つからない!そんなとき、ことちゃんが入ってきたんです!
琴乃:入ったことを絶賛後悔してます
鷲見:僕は一目見て思ったね。気づいたね。気づいちゃったね!この子が、僕の探し求めていた織姫に違いないと!
琴乃:違うと何十回訂正させる気なんですか、この人は
白鳥:もうあれだね、頭がかわいそうなんだよこいつは
鷲見:長谷部琴乃…こんなに織姫にふさわしい名前があるか!いやない!
白鳥:反語すんな、反語
琴乃:レポート書きたいんで、静かにしてもらえませんかね
鷲見:こと座のベガ…織姫、それが君の前世の記憶だろう?
琴乃:私スピリチュアルとか興味ないんで
鷲見:照れているのかい?天文部なんてスピ系全開の部活を選んでおいてその言い訳は苦しいぞ☆
白鳥:お前マジで退部にしてやろうか
琴乃:大体、名前の琴乃はまあいいとして、長谷部のベガって、べの字しかあってないじゃないですか。あとガはどこ行ったんですか、ガは
鷲見:細かいことはいい!
琴乃:よくねぇよ
鷲見:僕の織姫。さあ、そろそろ照れるのはおしまいにして、僕の胸に飛び込んでおいで。そして二人で甘く密やかな愛に溺れようじゃないか
白鳥:全然密やかじゃねぇぞ。1ミリも秘めれてねぇぞ。完全公開だぞ
鷲見:黙れデネブ
白鳥:だからその呼び方やめろって
鷲見:白鳥座のデネブよ。生まれ変わっても僕たちの愛を邪魔しようとは、なんと汚らわしい星め
白鳥:俺の名前はしらとりだ。白鳥じゃねぇし、大体織姫と彦星の仲を裂いたのは織姫の親父だろうが。デネブ一切関係ねぇじゃねぇか
琴乃:確か、織姫のお父さんって天帝っていう神様でしたっけ
白鳥:さすが長谷部さん、詳しいね
琴乃:星、好きですから。それに七夕伝説はあまりにも有名ですし…まあ、今は心底自分の名前が恨めしいですけど
鷲見:僕の織姫
琴乃:気色悪い呼び方しないでください
鷲見:照れている君も可愛いが、何千年の時を経て再び巡り合えたんだ、まずは再会を祝って熱いキスを交わすべきじゃないかい?
白鳥:何万年じゃなかったのか
鷲見:うるさい、デブ
白鳥:おいこら待て、お前今デブって言ったろ
琴乃:じゃあ仮に、ほんとに仮に、私が織姫だとして、鷲見先輩、彦星要素薄すぎません?
鷲見:え?
琴乃:鷲見って苗字はまあいいですよ、わし座のアルタイルの彦星っぽいですよ。でも先輩の名前、誠也じゃないですか。どこにアルタイルを感じればいいんですか
鷲見:それはほら、誠也って響きに星感あるし?聖夜のクリスマスっぽいし?
琴乃:無理やりすぎるでしょう。漢字に星が入ってるならまだしも、誠じゃないですか
鷲見:だから~真心こめて、誠心誠意君を愛するよ
白鳥:あとクリスマスと七夕は真逆の季節だと思うんだが
鷲見:だから黙れデブ
白鳥:おまっ!今普通に罵ったろ!あと俺一応先輩な!?
琴乃:大体、第三者のいる空間で合体とか言い出す人に誠実さを感じると思います?
鷲見:ということは、二人きりならいいんだね?
琴乃:ちげえよ、脳みそ沸いてんのか
鷲見:っ…!今の罵り、グッドだよ。僕の息子がこんにちわしそうだよ
琴乃:ひねりつぶして使えないようにしてやろうか
鷲見:ああっ!そのセリフ!その蔑んだ目!たまらないっ……!
琴乃:白鳥せんぱーい、このドMほんとに退部にしません?
白鳥:…でも貴重な男手ではあるんだよなぁ…合宿とか望遠鏡運ぶにしても重いし、こいつ免許あるし
鷲見:そうとも!僕は仕事のできるMなんだ!貴重だろう!?大切な存在だろう!?
白鳥:あー…やっぱり退部にしようかな
琴乃:黙ってれば見てくれはそこそこなのに、なんでこんなに残念なんでしょう
鷲見:おお!僕の見た目に恋しそうだって?
琴乃:耳鼻科行ってこい。あと脳外科も受けてその頭ん中綺麗に掃除されてこい
鷲見:あ~ん!やっぱり僕の織姫は君しかいないよ、ことちゃん!僕、人生でこんなにゾクゾクする人に出会ったことないよ!
白鳥:おい鷲見、お前3限取ってるんだろ?そろそろ昼休憩終わるぞ
鷲見:な!もうそんな時間!?ああ~僕のことちゃん、君と離れることの苦しさたるや
琴乃:いいからさっさと行け。…必修科目でしょ、確か
鷲見:くそっ…待っててね、ことちゃん!5限には戻ってくるからね!
琴乃:待ちません帰りますさっさと行ってください
鷲見:ことちゃん。愛してるよ、行ってきます
0:鷲見退場
琴乃:…だから!なんであの人は…もうっ!!
白鳥:ほんと、残念だよね。あと鈍いよね
琴乃:ほんとに見てくれは…タイプなのになぁ。あんなド変態にときめく自分が嫌です
白鳥:僕としてはあれを引き取ってくれるなら万々歳なんだけど
琴乃:…だって、どうせ長続きしませんもん。鷲見先輩、根っからのプレイボーイじゃないですか
白鳥:まあ、ちょっかいは掛けまくるけど、二股みたいなことはしないと思うよ
琴乃:私、織姫じゃないですもん。前世の記憶とかないですもん。ただ名前が織姫っぽいから運命だなんて、それって、私自身を見てないじゃないですか
白鳥:まぁねぇ
琴乃:なんでいきなり合体とか言うんですか。私キスもまだしたことないのに!
白鳥:愛欲にまみれてるよね
琴乃:去り際だけ!去り際だけまともなこと言って!なんなんですかもう!
白鳥:普段からあんなだったらよかった?
琴乃:…それはそれで心臓に悪いです
白鳥:…君たち難儀だよねぇ、ほんと
琴乃:彦星なんて…だいっきらい
0:数日後。
0:琴乃、鷲見部室にて。白鳥るんるんで登場。
白鳥:おはよーお前ら!
琴乃:わっ、びっくりした。珍しいですね、白鳥先輩ごきげんですか?
白鳥:わかる?わかっちゃう?
琴乃:こんなルンルンな先輩は初めて見ました
鷲見:なんか変なもんでも食いました?
白鳥:失礼な奴だな、俺をなんだと思ってんだ
鷲見:ことちゃんと僕の仲を邪魔する意地悪なブタ
白鳥:お前ほんとに退部にしてやろうか。…そんなことよりお前ら!新入部員だぞ!
琴乃:え?
鷲見:こんな時期に?もう11月っすけど
白鳥:珍しいけど、我が部はいつだって入部希望者大歓迎だ!これで今年こそ部長を引き継げる!
琴乃:あーほかの先輩方、あんまり部活来ないですもんね
白鳥:皆勤賞はそこのバカくらいなんだよな、悲しいことに
琴乃:みんな合宿目当てですもんね。普段から部室来てるのも鷲見先輩と白鳥先輩くらいだし
鷲見:僕的には?ことちゃんと二人っきりになれるチャンスが減っちゃうのは残念なんだけど
琴乃:うっさい黙って耳が腐ります
鷲見:おー!今日もキレッキレの愛の言葉!
琴乃:今のどこに愛を感じたんですか!
白鳥:鷲見と同じ2年の学生だ。これでまともな奴を指名して部長職を退ける!
鷲見:別に僕、部長やってもいいっすよ?
白鳥:んなことしたらめちゃくちゃになって部を崩壊させるだろうが
鷲見:信用無っ
白鳥:お前と違って、ちゃんと星が好きで入部してくれる稀有な子がいてよかった~あ、彼女もうすぐ部室来るから鷲見、変なことすんなよ
琴乃:彼女?ってことは、女性なんですね
白鳥:そうそう。しかもすごい偶然なんだけど、長谷部さんと同じでね
0:ドアをノックする音。
園部:失礼します。こちら、天文部の部室で合ってますか?
白鳥:はいはい、お待ちしてましたよ
鷲見:…え
園部:…あれ
琴乃:…ん?どうしたんですか
鷲見:…いや、なんか…初めまして、だよね?なんか、どっかで会った気がして
白鳥:お前はほんとに。女子に会ったらナンパしなきゃ気が済まんのか
鷲見:いや、そういうんじゃなくて
園部:私もなんか…すごく懐かしいような
白鳥:え?園部さんも?
園部:はい…なんか、よくわからないんですけど…会ったことあるような無いような
鷲見:わかるわかる、なんかこう、懐かしいんだけど初めてみたいな
白鳥:どういうこと?…まあいいや、園部さん、自己紹介お願いします
園部:あ、はい、失礼しました。私、園部古都美と申します。時季外れの入部になりましたが、仲良くしてもらえたら嬉しいです。
琴乃:そのべ…ことみさん?
園部:はい
白鳥:ね?すごい偶然でしょ
園部:え?
白鳥:いや、似てるんだよ、君たちの名前。彼女、1年の長谷部琴乃さん
園部:はせべ…ことのさん…確かに、結構似てますね
白鳥:ね。鷲見的には織姫が二人になっちゃったって感じかな?
園部:織姫?
白鳥:ああ、そこの変態には気を付けて。あいつ、自分は彦星の生まれ変わりだとか信じてるから。長谷部さん、名前のせいでそこの変態に「僕の織姫」って追っかけまわされてて
園部:織姫…彦星…
白鳥:ひどいよね~苗字に「べ」が入ってて、「こと」が付いた名前なんて…まあそんなに多くはないと思うけど、ごく稀ってわけでもないのにさぁ
鷲見:…あの、もしかして
園部:…彦星?
鷲見:…織姫?
琴乃:え?
園部:あれ、なんか、やだな私、変なこと言って
鷲見:あれ…なんで…えぇ?
白鳥:えぇ…もしかして園部さん…鷲見の言う織姫の生まれ変わりだったり…なーんて、そんなことないか!
園部:…かもしれません
白鳥:え?
園部:なんか…あれ、えと…お久しぶりです、彦星様
鷲見:……お久しぶりです、織姫
白鳥:えええ!?
琴乃:うそ…本物の、織姫様?
白鳥:マジで?マジで生まれ変わりなの!?てか鷲見の話ってマジだったの!?
鷲見:疑ってたんすか
白鳥:そらそうだろ!「前世の織姫探しに来ました~よろしくっ」とか入部挨拶するやつ、頭いかれてるんだなって思うだろ
琴乃:そんな挨拶したんだ
鷲見:えええ…ほんとに、君が織姫…
園部:はい。多分…
鷲見:そっか…
琴乃:…部長、行きましょう
白鳥:え?
琴乃:せっかく何万年ぶりの再会を果たしたんですから、空気読んで二人っきりにしてあげましょうよ
白鳥:え、でも…
琴乃:いいからっ
白鳥:あ、ちょっ
0:白鳥・琴乃退場。場面転換
白鳥:…よかったの?
琴乃:なにがですか
白鳥:なにがって
琴乃:いいに決まってるじゃないですか。ようやく織姫役から降りられたんですもん
琴乃:最初から言ってたのに、ほんと、鷲見先輩バカですよね~同じ学年に織姫いたのに全然気づかずに私なんかにアタックしちゃってさ
白鳥:…長谷部さんはそれでいいの?
琴乃:だから!いいに決まってるじゃないですか!
白鳥:もしかしたらあいつら今頃、部室でヤってるかもよ
琴乃:え?
白鳥:…想定してなかったんだ、そっちの方が驚き。基本他の部員は幽霊で、俺らがあそこを離れれば人が誰も来ないことくらいあいつは知ってる。加えて、探し続けてた織姫にやっと会えたんだよ?
琴乃:学校ですよ?校内の、部室ですよ?
白鳥:長谷部さんは純粋だよね。割と校内でおっぱじめるカップルいるよ。…部室って結構メジャーな場所なんだよね
琴乃:…そうですか
白鳥:鷲見、チャラいから。手早いと思うよ、マジで
琴乃:かもしれませんね
白鳥:だから言ったでしょ、よかったの?って
琴乃:…そんなことに使われた部屋、あんまり入りたくないですね
白鳥:…それだけ?
琴乃:それだけですよ
白鳥:ほんとに?
琴乃:……今日の部長は意地悪ですね
白鳥:そうだねぇ…長谷部さんのことはずっと、見てたから
琴乃:どういう意味ですか
白鳥:好きだったでしょう、鷲見のこと
琴乃:冗談やめてください。私はただ…ちょっとだけあの顔立ちが好ましいな、とか思ってただけで
白鳥:本気で言ってる?
琴乃:当たり前です!あんなド変態好きになるわけっ
白鳥:じゃあさ、今から俺の部屋来る?
琴乃:…へ?
白鳥:俺今日授業無いんだわ。園部さん紹介したらそのまま家帰る予定だったんだけど、長谷部さんも今日授業無いんでしょ?
琴乃:はあ、まあ
白鳥:俺、学校のすぐ近くのアパート住んでるの。鷲見もよく泊まりに来るし
琴乃:…なんでそれで部長の家に行く流れになるんですか
白鳥:だってこういうときにすることって言ったら一つでしょう?
琴乃:え?
白鳥:深いこと考えずに首縦に振って?部長権限
琴乃:なんですかそれ
白鳥:いいからいいから、さ、行っくよ~
琴乃:ええええ?
0:場面転換、部室にて。
園部:鷲見くんでいいの?
鷲見:ああうん、鷲見誠也
園部:そう…鷲見くんはずっと、織姫を探してたの?
鷲見:そう…だね。昔からよく夢を見たんだ。織姫に会えなくて会えなくて、雨の降り続ける川をただひたすらに睨んでるっていう、しょうもない夢。園部さんは見なかった?
園部:…今まで自覚がなかったけど、もしかしたらあれが前世の記憶だったのかなっていう夢なら、何回か
鷲見:どんな?
園部:私、家族の服を縫ってた。上手にできるとみんな褒めてくれて喜んでくれて、嬉しかった。でもいつからか、私それをしなくなったの。毎日毎日遊びまわるようになった。
園部:家族の服がどんどんボロボロになっていっても、気にせず遊んでて…私、夢の中の私に「なにしてんの、みんながあんたの服を待ってる、働けっ」ってハッパかけてたんだけど、夢の中の私は全然聞いてくれなくて
鷲見:七夕伝説そのままだね。織姫は服を仕立てるのを止め、彦星は飼っている牛の世話をしなくなった。見かねた織姫の父親の神様が、彦星と織姫を別れさせた
園部:私、あなたになんて会いたくなかったわ
鷲見:えっ?
園部:だって、もし現世で同じことになったら怖いもの。私はあなたに夢中になんてなりたくないし、やりたいことだってたくさんあるの
鷲見:…それでも僕は、君に会えて嬉しかった
園部:…ずっと探してたんだものね
鷲見:そうだね。ずっとずっと探してた。物心ついたときには、僕の織姫はどこだろうって
園部:待たせてごめんって、謝ったらいい?
鷲見:要らない。それに、随分間違えた。たくさんの人に恋をした
園部:現世の彦星様は浮気性なのね
鷲見:誰にも本気になれなくて…きっと、僕はまだ本物の織姫に出会ってないんだって思ってた
園部:ふぅん…それで?
鷲見:だけど、どうしてかなぁ…前世の僕と、現世の僕が喧嘩してる。やっと会えた君を、今すぐにでも抱きしめたい僕ともう一人…現世の僕が、ことちゃんを探してる
園部:それって長谷部さんのこと?
鷲見:そう。どうしてかなぁ…ずっと君のことを探していたはずなのに…
園部:鷲見くんはもうすでに、鷲見くんだけの織姫を見つけたのよ
鷲見:僕だけの、織姫?
園部:前世とか現世とかどうでもいいわ。今、あなたが本当に会いたい人は誰?
鷲見:…
園部:もし、あなたが私を選ぶのなら、キスくらいならしてあげてもいいわよ?
鷲見:え
園部:ずっと待たせちゃったんでしょ?いいよ、キスくらい
0:着信音(なくてもOK)
鷲見:あ、ちょっとごめん、メール
園部:どうぞ?
鷲見:…え?
園部:どうしたの?
鷲見:(呟くように)部長から…
白鳥(メール):あんまり部屋汚さないでくれよ。織姫見つかってよかったな。んじゃ俺は、偽物の織姫さんもらっとくわ
白鳥:結構前から気になってたんだよね、長谷部さん。家連れて帰ることにすっから。お前もちゃんと部室掃除して鍵かけてから帰れよ!
鷲見:あ…えっと…
園部:鷲見くん?
鷲見:ご、ごめん、僕、行かなきゃっ
園部:…なんだ、もう私のことなんかずっと、待ってなかったんじゃないの
鷲見:ごめん
園部:謝んないでよ、なんで私がフられたみたいになってるのよ。私はただ待たせたお詫びしてあげようとしただけなのに…ま、いいわ。行くんでしょ?
鷲見:ごめん、ほんとごめん!ありがと、会えてよかった
園部:はいはい。行ってらっしゃい
0:鷲見退場
園部:あれ、部室の戸締りどうすればいいのかしら
0:場面転換、部長の家。鷲見登場
鷲見:部長!ことちゃん!
琴乃:行けー!そこだそこ!
白鳥:おっと!抜かせないからねぇ?
琴乃:ちょっと部長!車で体当たりは反則です!
白鳥:そんなルールありませーん
鷲見:…ことちゃん?
琴乃:あれ。鷲見先輩、どうしてここに
鷲見:どうしてって
白鳥:あー負けた負けたーコースアウト
琴乃:え?部長勝ってるじゃないですか
白鳥:負けたんだよ。さーて!酒が切れたから買ってくるわぁ
琴乃:ええ?今からですか!?
白鳥:うん、もうなんか無性に飲みたくなっちゃったから。30分は帰ってこないから、お好きにどうぞ。30分だけな、部屋は絶対汚すなよ
琴乃:え?ええ?
0:白鳥退場
琴乃:なんなの?もう
鷲見:ことちゃん
琴乃:なんで鷲見先輩がここに?
鷲見:そういうことちゃんこそ
琴乃:部長が、ワリオカートどうしてもやりたいから付き合ってって
鷲見:ワリオカート
琴乃:思いっきり遊ぼうって半ば無理やり
鷲見:…そっか…
0:鷲見、へたり込む
琴乃:って、なんでしゃがみ込んでるんですか。…どっか悪いんです?汗だくですけど
鷲見:ああまぁ、久しぶりに全力疾走したから
琴乃:なんで?
鷲見:なんでだろうねぇ
琴乃:ちょっと!質問を質問で返さないでください!
鷲見:だって僕にもわかんないんだもん
琴乃:はぁ?大体、園部さんはどうしたんですか!
鷲見:ああ…置いてきちゃった
琴乃:な!やっと会えたのになにしてるんですか!
鷲見:ほんとにね~
琴乃:ちょっと、ふざけてる場合ですか!会いたかったんでしょう、織姫に!
鷲見:会いたかったよ~そりゃもう、めちゃくちゃ会いたかったよ
琴乃:だったらこんなとこに来てないでさっさと
鷲見:だってさ~僕が会いたかったのは、ことちゃんなんだもん
琴乃:……はい?
鷲見:園部さんにさ…今一番会いたい人は誰?って言われて、真っ先に…ことちゃんの顔が浮かんだ
琴乃:…なんで
鷲見:僕の織姫は、とっくの昔にことちゃんになっちゃってたみたい。部長がことちゃんを部屋に連れてくって知ったらもう…足が勝手に動いてた。ただただ走ったわ。何年ぶりだろ、こんなに走ったの。きっつー
琴乃:なんで私なんですか…なんで園部さんじゃないんですか…
鷲見:わかんない
琴乃:わかんないってなんですか!私はっ!私は織姫なんかじゃありません!
鷲見:…みたいだね
琴乃:勝手なんですよ!人の名前で勝手に連想ゲームして、勝手に織姫に仕立て上げて!うざいくらいに好きだの愛してるだの囁いて!そのくせ別人と間違えて!
鷲見:ごめん
琴乃:私何度も織姫じゃないって言ってるのに!私の中の織姫を勝手にでっち上げて勝手に恋して!私のっ…私の気も知らないで…!
鷲見:ことちゃん
琴乃:私はっ!鷲見先輩のことなんか全然、好きじゃ!ない…のにっ!
鷲見:ことちゃん
琴乃:変態だし!人の話聞かないし!ドMだし!いいとこなんかちょっと顔が好みなとこくらいでっ
鷲見:ひどい言われよう
琴乃:ホントのことでしょう!?ちょっと優しくてちょっとお喋り上手でちょっと女の子慣れしてるからっておっきな顔しないでください!
鷲見:してないんだけど…
琴乃:私は織姫じゃないんですよ!?
鷲見:さっきも聞いたよ
琴乃:織姫様、ちゃんといるんですよ!?
鷲見:そうだね。織姫様放置して、ことちゃんのとこ来ちゃいました
琴乃:先輩はバカです!
鷲見:自覚してます…ねえ、ことちゃん
琴乃:なんですか!
鷲見:泣かないで?
琴乃:泣いてません!
鷲見:じゃあこっち向いて?
琴乃:断固拒否しますっ
鷲見:…ことちゃん
琴乃:だからなんなんですか!
鷲見:…好きだよ
琴乃:っ…
鷲見:僕は、ことちゃんが…ことちゃんだけが好き
琴乃:…そんなこと言って、どうせすぐ飽きるでしょう
鷲見:飽きません
琴乃:僕の織姫じゃなかったとか言って、他の子に行っちゃうんでしょう!?
鷲見:行きません、ことちゃんだけです
琴乃:嘘です!先輩はフラフラしますもん!
鷲見:まあ、前科しかないのは認めます
琴乃:ほらぁ!
鷲見:だから、ことちゃんが捕まえててください
琴乃:ふぇ!?
鷲見:僕が他の女の子に行かないよう、ことちゃんがしっかり僕を捕まえてて
琴乃:そんな恋愛上級者テク持ってません!
鷲見:持ってなくていい。ただ、僕のこと見てて。僕と一緒にご飯食べたりゲームしたりして。あと、他の男の家にほいほい上がらないで
琴乃:なんですかそれ!
鷲見:ことちゃん、好きです
琴乃:知りませんっ
鷲見:好き。好きだよ、ことちゃん
琴乃:…わかったから
鷲見:ことちゃん、大好き
琴乃:わかったから!わかりましたから!…好きって言わないでください
鷲見:嫌だ。好きだよ、ことちゃん
琴乃:…先輩なんて、だいっきらいだぁ
鷲見:うん。それでも僕は、君が好きだよ。やっと捕まえた、僕だけの織姫様
本物の織姫様 4人用台本 ちぃねぇ @chiinee0207
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