俺幸せすぎだろッ

 しばらくすると晩御飯になった。

 楓の作った料理がテーブルに並べられていく。


「こりゃ、豪勢だな。ウチにあった余りものの食材でここまで作れるのか」


 信じられないことに、完璧なまでの和風ハンバーグ定食が出来上がっていた。

 大根おろしにサラダ、肉じゃがもついた定食だ。


「お姉ちゃんは昔から料理が上手だからね」

「へえ、凄いな」


 まるでお店みたいな盛り付けだ。こりゃプロだな。


「いろいろ食材を使っちゃったけど、良かったかな」

「構わないよ。いや~、腹減った。もう食べていいかな」

「どうぞ召し上がれ」


 箸を手に取り、さっそくハンバーグから味わう。

 おお……濃い味付けで美味い。

 なるほど、楓はこういう感じなのか。

 俺好みで助かる。


「楓は濃い味が好きなのか?」

「そ、そうなんだ。ごめん、微妙だった?」

「んや、丁度良いと思って」

「そっかぁ、良かった」


 嬉しそうに微笑む楓の表情に、俺はドキドキした。こんなお嫁さんがいたら……きっと、いや絶対に幸せだろうな。

 というか、俺幸せすぎだろッ。


「――っ」


 思わず涙を零すと、楓が慌てた。


「ど、どうしたの!? やっぱり不味かった?」

「これは嬉し涙だよ。美味すぎて」

「そうだったんだ。びっくりしちゃった」

「ごめんごめん」


 味わっていると風花がジロッとこちらを見ていた。さっきから見られているんだよなぁ。


 視線がちょっと気になるけど、俺は気にせず食事を続けた。



 * * *



 晩御飯を食べ終えた。


 さすがに時間も遅い。

 楓も風花もそろそろ帰るらしい。どうやら迎えが来ているようだ。

 せめて外まで見送りしよう。


「じゃあ、帰るね」

「ああ、分かった。ちなみに、明日も来れない?」

「多分ね。行ける時は連絡するから」

「了解」


 楓も風花も帰った。

 ――いや、風花が戻ってきた。


「湊……そ、その、次はあたしも料理作るから!」

「え?」


 どういうこと? と聞き返そうとしたが、風花は足早に去って行った。……もしかして対抗心ってやつ? まさかな。



 家へ戻ると、静かすぎて困った。

 ゲームでもして気を紛らわすか。


 就寝時間までゆっくりと過ごし、俺はいつの間にか寝落ちしていた――。



 今日は楽しかったな。

 まさか妹の風花が現れるとは思わなかったけど。あんなソックリだとも思わなかった。二人とも可愛くて、愛嬌があって話していて楽しかった。

 また風花とも遊べるといいな。


 なんとなくスマホを眺めていると、メッセージが入った。


 風花からだ。

 そういえば、連絡先を交換していたな。


 中身を見てみると。



 風花:今日はありがと。近い内にまた会おう



 なんとお礼のメッセージが。

 風花ってツンツンしているかと思ったけど、見た目に反して良い子だな。認識を改めねば。


 今度こそ寝ようとすると、楓からもメッセージが。

 これは直ぐに見なければ。



 楓:事務所の社長に怒られた~。明日は一日出られないかも(泣)



 マジかよ。うーん、俺もなんとかしてやりたいのだが、さすがに事務所が相手ではな……。なにか良い方法があればいいのだが。


 今のところは思いつかない。


 ぼうっと考えていると眠気に誘われ、俺は寝落ちしてしまった――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る