マネージャー事件
そうだったのか。
俺と安楽島は幼馴染だったのか!
いや……記憶にないけど。
単に忘れているって可能性もあるけど、今のところ思い出せない。
「信じてくれる?」
宝石のような透き通るような眼で見られ、俺はつい返事をしてしまった。
「も、もちろん」
「良かった!」
良かったのだろうか……。
多分、ウソではないと思うけれど確信はない。けど、俺だって可愛い女の子と青春したい。しかも、相手は憧れの現役――いや、元アイドル。
この人生の一度のチャンスを逃したら、一生後悔するだろう。
ウソでも本当でもなんでもいい。
退屈で孤独な人生に終止符を打つ。
俺は安楽島ともっと話がしたい。
普通のファンが知らないようなことも、もっと知りたい。
だから……!
「安楽島、俺は……」
「うん」
友達になってくれと言おうとしたが――しかし、友達でいいのか? そこは普通、彼女ではないだろうか。けど、さすがに唐突すぎるか。
とはいえ、教室内では安楽島から告られたけど。だから付き合えると見ていいのかな。
よし、そうだ。
思い切って俺も告白をする。
振られてもいい、一度きりの告白だ。
「そ、その……俺と――」
ヤケクソで告ってやろうと思った、その時だった。
屋上の扉が物凄い勢いで開いて、中からスーツを着た男が現れてこちらに走ってきた。な、なんだあの人……学生じゃないぞ。
「ちょっと、安楽島さん! なにしているんですか!!」
「マ、マネージャー!」
なッ!!
あの男、マネージャーだったのかよ。
しかも、さわやかなイケメン。憎らしいほどに。
「安楽島さん、アイドルを辞めたと聞きました。なぜ、この俺に相談してくれなかったのです」
「メッセージアプリで言ったじゃないですか……」
「そういう大事なことは直接言ってくださらないと困ります」
「……ごめんなさい」
「とにかく、事務所へ戻りましょう」
マネージャーが安楽島を説得を試みるも、彼女は俺の方へ寄ってきた。って、俺を盾にするなァ!!
「ちょ……おま」
「さっきから君はなんです?」
「いや、俺は安楽島のクラスメイトというか、なんというか……」
「クラスメイトですか。なら、部外者はすっこんでいて下さい」
マネージャーの男は強い口調で邪魔するなと警告してきた。
こ、こいつ、目がマジだ。
いや、マネージャーなのだから仕方ないだろうけど――だけど安楽島はもうアイドルを辞めたんだ。関係ないはずだ。
背後で怯える安楽島。
俺に助けて欲しいんだ。
だからこうして頼ってきている。
ならば俺のやるべきことは……ただひとつ。
「安楽島はもうアイドルを辞めたんだ。あんたこそ、すっこんでろ!」
「なんだと……」
睨み合いになり、俺は少し気迫に負けそうになった。でも、心を強く持ち対抗した。ここで怯んでは安楽島を守れない。これから先も俺が彼女を守らなきゃいけないんだから。 負けるものか、負けてなるものか。
「すっこんでろ!!」
「貴様あああああああああああああ!!」
突然発狂するマネージャーは、握り拳を俺に向けてきた。ちょ、え……いきなり暴力とか!!
顔面にパンチが飛んでくる。
やべえ……
やべえ……
やべええええええええええ!!!
殴り飛ばされると覚悟した、その直後。
階段の向こうから複数の気配がこちらにやってきて、男達がマネージャーを取り押さえた。
「
よく見れば、それは警察官だった。
って、暴行と詐欺ィ!?
それから警察から、安楽島の元マネージャー(解雇済み)が詐欺グループの元締めであることが判明した。しかも、暴行事件まで起こしていたらしく……正真正銘のクズ野郎だった。
もしかしたら、安楽島はマネージャーの悪事に薄々勘付いてアイドルを辞めたのかもしれないな。
マネージャーは連行され、パトカーで連れていかれた。
俺は安楽島を放っておけなくて一緒に居てやった。
「ありがとね、東山くん」
「いや、俺の方こそ驚いたっていうか」
「巻き込んじゃったかな」
「とっくに巻き込まれてるさ」
事情聴取が終わり、俺と安楽島は早退となった。
どうせ学校にいても落ち着かないし、クラスメイトから何があったか聞かれまくって疲れるだけだろうしな。
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