ポールマトン

鳥なんこつ

ポールマトン

ポールマトンを知ってるかい?


とっても可愛い男の子

とっても綺麗な女の子


どっちもホントでどっちもウソ


なぜならあの子はホントはね……






ポールマトンは街のなか

広場が遠い路地裏で

お祭りなのに路地裏で


ぼろぼろの服に包まれて

さびしくふるえるポールマトン


ドンドン花火をききながら

ずずっと鼻水すすってる




すると一人の女の子

袋を抱えた女の子


「あなた いったいどうしたの」


心配そうに女の子


「キミはお使い帰りかい」


にっこり笑ってポールマトン


「今日は冬のお祭りで とても美味しい菓子パンを」


甘い匂いを漂わせ

寒い路地裏に漂わせ

ぐうと鳴ったり大きな音は ポールマトンのお腹から


「あなたもお腹が空いてるの?」


よくよく見れば女の子

ポールマトンと同じ服

ちっちゃな穴が虫食いの 

薄くて寒い古い服


ちょっと迷って女の子

袋に「えいや」と女の子


焼きたてすてきな甘いパン

ポールマトンに差しだした


ポールマトンはえんりょせず

たちまちパンを平らげた


「キミも食べれば?」


指をなめなめポールマトン


「ううん これはみんなの分」


さみしそうに女の子

お腹ぐうっと女の子


「これはこれはありがとう」


頭を下げてポールマトン


「お礼に一つ 君のなやみ なんでもきくよ」


くしゃりと顔を女の子

涙でゆがめて女の子


「パパ ママ どうしてどうして」


泣き泣き語る女の子


二人の乗った飛行機は びゅーんと墜落天国へ


うんうんうなずくポールマトン


「なるほど聞いたことがある」




『○✕便は乱気流に巻き込まれ墜落しました。乗客の生存は絶望的で……』




びっくりしたのは女の子 

ポールマトンの口から出たのは ラジオの声と同じ声



ポールマトンは頭を叩く

ポンと音立て頭を叩く


「きみののぞみを かなえよう」


にっこり笑ってポールマトン


「だけど きみにも試練をあげよう」


ニタリと笑ってポールマトン



目を丸くしてうなずく女の子


指切りげんまん ポールマトン










ポールマトンは森のなか

暗くて深い森のなか


月の光が照らす広場で

マルマルさんかくマルさんかく


「ふんづむ うんどむ いかりゃく いかりゃく!」


ぼふっと煙がたちのぼり


のっぽの紳士があらわれた

太っちょ紳士があらわれた



「お久しぶりです おぼっちゃま」


のっぽの紳士がぺこりとあいさつ



「お久しぶりです おじょうさま」


太っちょ紳士がぺこりとあいさつ



「やあやあ よくきたおまえたち」


ニッコリ笑ってポールマトン



二人の耳をつまみあげ

実はこれこれ かくかくしかじか



「なるほどなるほど」

 

のっぽの紳士はおひげをこより


「なんともそれは酔狂な」



「うるさい いいから さっさとやれ」


 のっぽのお尻をけとばして

 小さな肩をいからせて

 

 ポールマトンの剣幕に

 のっぽの紳士は背広をペロリ

 シャツをぬいで ネクタイするり


 なんと紳士のおなかには 細くて長い鳩時計

 時計の上のとびらが開き 鳩の人形くるぽっぽ


「それじゃ行きます」


 のっぽの紳士の細い指が 時計の針を逆回転


 ぐるぐるぐるぐる


 鳩の人形もくるぽっぽ

 時計の針が回るたび

 鳩の人形小さくなって

 ついには卵でくるぽっぽ


 ポールマトンはうなずいて

 太っちょ紳士とひとっとび

 

 ぐんぐんぐんぐん空をとび

 とびこんだのは飛行機のなか


「ただいま当機は乱気流のなかにいます」

「どうか皆さん席について落ちついて……」

 

 スチュワーデスさん うろうろうろ

 真っ赤な顔のおとうさん

 真っ青な顔のおかあさん

 席でふるえる子供たち


 そんなみんなににっこり笑って

 ポールマトンはこういうのさ


「ぜんぶ食べてよし!」


 太っちょ紳士は大喜びで 大きな大きな口を開く


「ではいただきまあす」 


 席でふるえる子供をごくり

 真っ赤な顔のおとうさんごくり

 真っ青な顔のおかあさんごくり


 太っちょ紳士の指のさき

 黄色い宝石 

 赤い宝石 

 青い宝石 

 キラキラキラ


 おどろくスチュワーデスさんもごくり

 眠っているおじいさんおばあさんもごくりごくり

 そのたびに 指の先の宝石キラキラ

 最後に機長さんもうしろからごくり


「ごちそうさまでしたぁ」


 太っちょ紳士はまんぞく顔

 指の宝石をながめうっとりニマニマ


「それじゃ行くぞ」 

 

 ポールマトンと太っちょ紳士

 飛行機からぴょんと飛び降りた







 ポールマトンは森のなか

 深くて暗い森のなか


「それじゃ はきだせ」


「えええ そんなせっしょうな」


 なげく太っちょ紳士のおなか

 ぐいぐい押すのはポールマトン

  

 太っちょ紳士はげーげーげー

 

 小さな子供をはきだした

 黄色い宝石なくなった

 

 おとうさんをはきだした

 赤い宝石なくなった


 おかあさんをはきだした

 青い宝石なくなった



 スチュワーデスさんも おじいさんも

 おばあさんも 機長さんも

 みんなみんなはきだした

 宝石もきれいさっぱりなくなった


 太っちょ紳士はおいおい泣いて

 のっぽの紳士は時計を回す


 くるっぽ ぐるぐる 

 くるっぽ ぐるぐる


 卵はりっぱな鳩になり ポールマトンもいなくなる





 ポールマトンが消えた森 

 二人の紳士も消えた森


 目を覚ました人たちは そろって首をかしげてる



『○✕便は乱気流に巻き込まれ墜落しました。乗客の生存は絶望的で……』


『なんと乗客全員は無事です! 全員墜落現場から少し離れた森で発見されました!これは奇跡です……!』


 









 ポールマトンは街のなか

 今日は大きなお祭りで

 きれいに着飾るポールマトン


 右手には鳩の鳥かご

 左手にはおもちゃの宝石

 とってもごきげんポールマトン


 すると前から女の子

 袋を抱えた女の子

  

 きゅーっとおなかがポールマトン

 女の子は目をみはり

 お菓子を袋ごと手渡した


「おいおい ぼくはものもちだぜ?」

 

 両手をひろげるポールマトン

 女の子は首をふり


「だっておなかがすいてるんでしょう? それに」


 女の子が振り返ったさき

 パパとママがほほえんでいる


「わたしにはパパとママがいるから ほかにはなにもいらないわ」

 

 仲良い親子を見送って にっこり笑うポールマトン

 

 だけどちょっぴりさびしげに 軽く舌打ちポールマトン












 ポールマトンを知ってるかい?


 悪魔のような男の子 

 天使のような女の子


 どっちもウソでどっちもホント




 あの子の秘密を知ってるかい?




 …神様の影は悪魔のカタチをしてるってさ!

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ポールマトン 鳥なんこつ @kamonohasi007

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