第7話

 一人語りが始まった。

アパートの中なら、ダメージとか、ダイレクトメールとか。管理人や不動産が話していく事を理解していったからわかるんだけど。

 常世はだめだ。わたしの領分。わたしの聖域。誇るべきなのだろう。住まいの水を飲ませたのは常世と流れる時と水の、見つけ方が手っ取り早かったからだよ。  

 むかしね、わたしは、ちいさな、女の子だった気がする。ある日村の近くの森から帰れなくなった。帰りたくて覚えている道を全部試すのに、全部元の場所に戻ってしまう。神隠しだったんだろう。

 ようやく暗く黒く歪な怖い森林から出た時には、何十年と年が過ぎていて。

 近くにいた村人が言うんだ。

 あれは数年前にいなくなった男の子だろう!って。違う子だった。ずっと思ってた。神隠しのある森で、子供達は入れ替わり続けているんじゃないか。

 その村で、ぼくはね、男として生きることになった。ほんとは違うのに。辛かった。人様の前で着物を脱いで見せようかとも思ったけどできなくて。それよりももっと着る事を選んだ。

 嫁を取れと言われた時に、自分は村から逃げ出した。あっという間に泣きじゃくりながら砂と土に村人に圧されて捕まった。そこで言ったんだ。

 ひとは、伴侶を得ることも子供を得ることも呪いだ。きっと一人で生きて天寿を全うするのがいちばん、神様の供え物となる。

 辛かった。そんなこと思ってもいなかった。最初の生まれた村で、好きな男の子と暮らしたかった。

 でも、神隠しにあった後。確かにぼくは男だった。心は女でもない、なにか真ん中の、中道で、とにかく、真ん中でいたかったよ。

 長いお話。おしまい。眠ってくれたかな。きみがね、好きだよ。この住まいで手抜きして生きるきみが。

 だから、仙人になっても、こんなに人を思うなんて。千里眼のせいかな。共感や透視をしてしまっているのかな。

 気持ち悪かったらごめんね。 

 きみのことが好きだよ。この部屋で、自炊ができるよう、わたしは、ぼくは、きみを脅かすものを呪う立場の存在になってもいい。

 この住まいで、きみに幸運があるのならば。

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