第5話 約束の花嫁
「たまたま、ここに来たのに、どういう事でしょう?」
母親が、混乱していた。叔父さんが、山で、遭難して、遺体で見つかった。本来なら生きて帰ってくる筈だったが、村の人達は、大神さんの警告だと陰で言い合っていた。ここ百年位、ペンダントが現れる事もなかった。だから、お婆ちゃんの言うことも、どこからどこまでが、本当なのかは、わからないけど、ペンダントがしっかりと首に、くっついて離れないのは、真実だった。そして、何よりも、気持ちが悪いのは、石の中に瞳のような、片目が見える事だった。
「そんな話、聞いた事はない。」
父親は、そういうと黙り込んでしまった。
「まさか、今になってこんな事が起きるなんて」
お婆ちゃんも、当惑していた。山岳師としての夫や長男を失って今度は、孫が災難に見舞われるなんて、そんな女性は、滅多にいないだろう。重苦しい時間が、のしかかり時間だけが過ぎていく。明日、迎えに来るよ言っても、一体、いつなのか。黙って、なんとなく、居間に座り込み時間だけが過ぎていく。次第に、周りの闇が、消えかかり、陽が登ろうとした時に異変が訪れた。いろんな事があって疲れたのか?深い眠りに襲われた。体が、後ろに倒れてしまう錯覚があり、眠ってはいけないと、お婆ちゃんに声をかけようとしてハッとした。
「お婆ちゃん?」
お婆ちゃんは、深く項垂れ、眠りについていた。
「嘘でしょう?パパ?ママ?」
3人共、深く眠りについている。
「ちょっと、待って?嘘でしょう?」
胸がドクンと鼓動を打つ。その瞬間、ペンダントが弾け飛び、青い光が弾け飛んだ。
「やっとだ・・・」
光の中から、現れたのは、片目の大きな傷を持つ、1人の髪の長い青年だった。
「やっと、見つけた」
光の中から、現れたのは、肩から、長い毛皮のローブを身につけ、背中まで、灰色の髪を垂らした青年だった。耳は、人間の耳よりも先が細く尖り、耳元には、光り輝くアクセサリーが下がっている。
「やっと、見つけた。何年振りかな」
「もしかしてあなたは?」
「僕は、あなたの伴侶」
「おばあちゃんの話は、真実だったの?」
「噂してたの?それなら話は、早い!行くよ」
青年は、桂華の右手を掴み、部屋から出ようとした。
「待って!何処に行くの?」
「新居さ。いずれ、ここに居れなくなる。僕は、次の跡取りを探さないなきゃいけない。僕のお役目だからね」
「新居?」
大神さんは、狼と聞く。山の中の住居となると、
「ごめんなさい。山には、行けない」
「う・・・ん。そうなると、困るんだな。山に来た娘さん達から探さなきゃならないんだけど、そう、適した娘達が、いるとは限らないし・・・何人が、生き残るかは、僕には、わからない」
「他の人が、死んじゃうって事?」
「そうならないように、最初に適した人を選んでいるんだけどね」
大神さんという人の形をした狼は、片目のない顔で、優しく微笑んだ。
「君なら、立派な僕の後継を産んでくれると思うよ」
「産んで?って」
桂華は、思わず顔が赤くなった。
「そ・・・その後は、殺されるって?」
「う・・・ん。そおいう場合も、あるかな。子供が、間違えて襲っちゃう場合もあるかも」
「とにかく、あいつに邪魔される前に来て」
狼は、桂華の返事を待つ間もなく、まるで、自分の獲物を抱えるかの様に、抱え上げた。
「拒否する事はできないんだ。君の家族の事は、心配ないよ。しっかりと、約束を守ってくれればね」
そう言うと誰かに後を追われているのか、慌てて、桂華を背負い直し、屋外へと飛び出した。
「やっと見つけたから大事にするよ」
若い狼の青年は、山間の密とした空間に帯び出してった。
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