第3話 右目の光を閉じ込めた石
「何してんだ?」
突然、父親の声が資料室に響き、慌てて、絵画や埃玉を放り投げあ。
「今いく!」
父親は、怪訝そうな顔をしたが、
「中にある物に、触れてはいけない」
約束していた事を思い出して、慌てて取り繕う。落ちていた絵画にあった祠の絵の事も、得体の知れない埃玉の事も、父親には、言わないでいようと思った。勿論、母親にも。話せるとしたら、おばあちゃん位かな。でも、その後も、いろんな事があって、学校で見た事も、少し、忘れかけていた。と言うのも、忘れてしまう事になったのは、父親が叔父さんの遺品の中から、見つけたペンダントがきっかけだった。
「誰かにあげるつもりだったのか?」
父親は、叔父さんのバックの中に入れてあった箱から、青い石の光るペンダントをかざしながら、首を捻った。
「自分で、するつもりだったんじゃない?」
「まさか。兄貴が?」
父親は、馬鹿にして笑った。
「そんなやつではないよ」
父親は、笑いながら、ペンダントを元のバックの中に、戻しておいた。あの時、学校から遺品として、持ち帰った物だ。父親は、そのまま、おばあちゃん家の居間にバックを置き忘れたまま、幼馴染と深酒をして、寝入ってしまった。もう少し、おばあちゃんに相談すれば、良かったんだけど、叔父さんを亡くして、悲しんでいるおばあちゃんに、遺品の事とか、学校で見た絵画の事とか、言うのは、辞めた方がいいと思っていた。相談すれば、良かったのかな。
その日の夜中、隣の部屋が青白く輝いているのに気がついた。あのバックの置いてある居間の隣で寝ていた父親や母親以外、気がついたのは、私だけだった。
「パパ!起きて」
2人を揺すったり、叩いたりしたが、全く起きる気配はなかった。
「ちょっと」
青白い光は、どこから来るんだろう。隣の壁が透けそうに、光っている。恐る恐る隣の部屋を覗くと、それは、バックの中から、輝いているのがわかった。
「もしかして?」
バックの中に手を入れると、すぐに、それだとわかった。青白い光なのに、そのペンダントは、暖かく、人の肌の様だった。
「どうして、、温かいの?」
手に取り、よく見ようと宙に翳した瞬間、ペンダントについた石の中に、何か、ある事に気づいた。
「何か、ある?」
よく見ると、誰かが、自分を見つめている気がした。よく見てみる。
「あ!」
思わず、大きな声が出そうになった。ペンダントの石の中にあるのは、大きな瞳のように見える。
「どうして?」
瞳は、じっと、自分を見つめている。青白く点滅しながら。触れると温かい。思わず、ペンダントを首にかけてしまった。
「桂華!だめだよ」
突然、おばあちゃんの声がして、振り向くとパジャマのままの、おばあちゃんが顔色を変えて、そこに立っていた。
「早く、外すんだよ。なんだって、こんなもんが、ここに!」
おばあちゃんが、首から、ペンダントを外そうとするが、なかなか、外れない。
「まずいよ。まずいよ」
おばあちゃんの大きな声に、父親と母親が起きてきた。
「何も、騒ぐ事ではないだろう」
父親が言うとおばあちゃんが、激昂した。
「なんて事をしてくれたんだい。お迎えが来るよ。桂華が、娶られてしまう!」
「何を言っているんだい。母さん。これは、兄貴の遺品・・」
言いかけて父親は、黙ってしまった。
「兄貴の死とこれは、何か、関係があるのかもしれない」
ペンダントは、首にかけた瞬間、青白く光るのをやめていた。ペンダントの中の石は、青い光を讃えていて、私をじっと見つめている様だった。
「なんて、事だい」
おばあちゃんは、力が抜けた可能になり、このペンダントにまつわる話をポツリポツリと言い始めた。
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