弾幕、故に交戦
しばらくそこら辺を警戒しながら歩いていると、様々なものが見つかった。
大きく実った果実や、少し背の高い不思議な形をした薬草、何かロボットが壊れた残骸など、このあとに使えそうな材料はバックパックに収納しておくことにした。
「って、
「ちょ、うるさいうるさい。それで敵に見つかったら尚更やばいじゃないか」
愚痴をこの辺りにある樹に叫びかける叶望をなだめる。
その零耶のフラグがまるで綺麗に回収されるようなことが起こる。
ふと近くでロボットのモーター音のような機械音が聞こえたのだ。ガシャンガシャンと足が地面の若草を踏みつける音がする。
樹の麓にある茂みにしゃがんで隠れながら、隙間から音のする方を見る。腕時計型端末を目に近づけると望遠鏡のようになってかなり遠くまで見える。
そこには、二足歩行をしていて、片方の腕には銃、もう片方の腕にはチェンソーのようなものが装着された物々しい雰囲気を放つロボットが3体いたのだ。頭部にある一つ目は、ギラギラと真っ赤に光っていた。
「なんだ、あいつ……どう見ても友好的な感じではないが」
小声で叶望に囁く零耶。スライムのベレーも険しい顔で茂みから顔を出す。何か言いたげだ。
「ベレーも言ってる。あいつは、敵だって。ブチのめせ、って言ってるよ」
「ホントかよ。叶望の闘争心が物申してるだけだろ」
零耶がそうは言っているものの、心の中では不意打ちをして先手必勝のごとく、瞬殺してやろうと思っていた。やり過ごそうにも、至近距離でバレてしまえばあのチェンソーで体を木っ端微塵にされてしまう。
「……叶望。君は左。俺は右。奥のやつはその後にしよう」
「ベレーちゃんの役目は?」
「こいつ……戦闘能力あるのか?」
その言葉を聞いた途端、ベレーは水滴のような形の体をブヨブヨとさせてムスッとする。
「なんだ?何かしらはできる、と言いたげだな」
任せろ、とも言わんばかりにそっと茂みから出たベレーは樹に隠れながら少しずつその戦闘ロボットに近づいていった。
そして、ベレーが手前の戦闘ロボットに突撃したのを合図に、ロボットの頭部に照準を置いていた叶望はSCAR-Lxの引き金を引いた。同時にアイアンサイトを覗いていた零耶もPhyces-54の引き金を引いた。
アサルトライフルの物理弾が銃口から炎を吹かせながらロボットの方に一直線に弾道を残す。
サブマシンガンのエネルギー弾は電気的な銃撃音を響かせながら、青い球状のレーザーがロボットにダメージを与える。
まだ慣れていないせいで、反動を制御できず、エイムがそこまで安定してなかったが、いくらかは命中した。
攻撃に気づいた3体のロボットのうち、1体は、ベレーの『口から水の泡々光線』にチェンソーで応戦している。
2体は装備している銃を2人に向けて撃つ。地面や樹の幹に弾が当たって鈍い音がする。
叶望はリロードすると、樹の幹から瞬時に顔を出してエイムを合わせて撃つ。すると、何弾か頭部に命中してパーツが吹っ飛ぶと、制御不能に陥り爆散する。
だが、すかさず残った一体のロボットが叶望に向けて銃を撃とうとする。そこを撃たせまいと零耶は、反対側から跳び出して、隣の樹の幹めがけて跳び出しながら、リロードしてロボットの手めがけて撃つ。
銃を装着していた腕を破壊された戦闘ロボットは若干怯みながらも、ドスドスと叶望に向かって走りながら、チェンソーを構える。
迂闊に顔出しができない叶望を余所目に、零耶はまたリロードして、エネルギー弾をロボットにぶち込んだ。そして戦闘ロボットは爆発した。
「大丈夫か?」
「あ、うん……そっちは?」
「こっちも大丈夫だ、けど……」
零耶はふと3体目の方を見ると、既に視界が真っ暗になった。ベレーが零耶の頭めがけて体当りしてきたのだ。途端に顔じゅうひんやりとしたぷるぷるした感触に襲われる。
突進してきた勢いで地面に仰向けに倒れた零耶に、銃を向ける戦闘ロボット。すぐに叶望が応戦するもライトアモが切れてしまう。
叶望に気づいた戦闘ロボットはすぐさま銃口を叶望に向けて発射する。いくらか叶望に当たってシールドが割れたような音がする。ボディアーマのDEFが0になったのだ。
叶望はこのままだと危ない、と思って1つ後ろの樹の幹に後退しようと全速力で走る。
一方、やっとベレーを宥めて顔から引き剥がした零耶はもう既に数歩先に戦闘ロボットが、目をギラギラさせながら銃を向けているのが目に入った。
(あ、終わった……)
そう絶望の淵に立たされた零耶だったが、カランコロン、という何か空き缶のようなものが地面に転がる音がすると、辺りは一瞬にして白い煙に覆われた。
段々と意識が遠のいていく。もしかしたら睡眠剤でも混入しているのか、と彼は思った。幾らか弾丸が空中を飛び交う音がしたあと、ガシャン、という破壊音とともに戦闘ロボットの頭が目の前に転がってくる。目の赤い光はとうに消えていた。
徐々に視界が暗くなっていく。すると、彼の朧気な視界に誰かが入ってきた。白い煙の中に映る、猫の耳が付いているような人。背中には大きな弓を背負っていた……
次に目が覚めると、彼は白い布に覆われたベットに仰向けで寝そべっていた。目線の先にはまだ点っていない真鍮製のランプが木造りの天井から吊るされていた。
ふと右腕の方に柔らかなぬくもりを感じると、既視感漂う光景があった。
叶望が腕に抱きついて心地よさそうに寝息を立てているのだ。
左の方を見ると、全身を包帯でグルグル巻きにされている戦士らしきケモミミが苦しそうに寝ていた。その人が寝返ると、そのケモミミの顔が伺えた。
黒猫のような耳が頭についていて、黒髪のショーロヘア。まつげが長くて綺麗な、同級生くらいの女の人だった。
少し猫耳がピクッとすると、彼女は重そうな瞼を開けた。
「……見たこと無い顔だな。耳もついてないし……よそ者か?」
ダウナー気味で低ボイス、でも女の子らしい声だった。
「え?ああ、まあ……はい」
「なんだその曖昧な返事は。もしや……あいつに助けられたのか?」
「あいつとは誰か分かんないですが……まあ、そういうことだと」
そう返事すると、ふうん、と言って耳をピクピク動かしたと思うと、何を思ったのか彼女は瞬時にベットにうつ伏せになって寝たフリをした。
「え?」
すると、病室の扉の向こうの方から人の声が聞こえてきて、徐々に近づいてきた。
「お前さんまーた勝手によそ者を連れてきただろう。前みたいに馬鹿な野郎どもを連れてきたわけじゃないだろうな」
「大丈夫だって。ただあの訳分からないガラクタに襲われてたから、発煙筒使って弓でぶち抜いて助けただけだって」
「とは言ってもなあ……前みたいなやつだと困るんだよな……」
彼女につられて零耶も布団を被り、寝たフリを敢行する。その瞬間、病室の木のドアが『ギギィ』と軋む音を立てて開いた。そこから2人のケモミミが入ってきた。
1人はエメラルドグリーンの鮮やかで落ち着いた色をしたセミロングのケモミミ。背中にはカーボン製の近未来的なアーチェリーを背負っていた。このアンティークな雰囲気を纏った病室とは違和感がある。
とはいえ持っている鞄や上着はだいぶ使い古されていて、なんとも産業革命時代の労働者が持っていそうなものだった。
もう1人は紫っぽい髪色をしてお姉さんな雰囲気を醸し出すケモミミ。カラダの出るところは出て美人なスタイル。綺麗な白い肌の上から白衣を着ていて、腰には不思議な物の数々が装着されていた。
「……で、どうするの?この2人。とりあえず、起きるまでお前さんはここで待っときな」
「ええ……なんでぇ。面倒くさいじゃん」
「よそ者を連れてきたお前さんが果たすべき責任だよ。また前みたいになられたら困るからね」
「はーい……」
しょぼん、として仕方なくベットの横にある椅子に腰掛ける彼女。もうひとりの方はちらっと彼らの方を一瞥したあと、戻っていった。
扉が閉まって、いつまでも待たせるのは申し訳なく思った零耶は、自然な感じで目を開けた。
「あ、気がついた……って思ったけど、今さっきから起きてたようだね。鼓動を聞いた感じ今さっきの僕たちの話を聞いてたみたい」
「分かるんですか」
「そうだよ。僕たち猫のケモミミ族は音に敏感で、僕は特に耳がいいからね」
自慢げな様子で話をする彼女。ボーイッシュな感じだが声は可愛らしい。
「あんたの耳より私の耳のほうがよっぽど使い物になるよ」
「え?……ってボタンも起きてたんだ。全然気づかなかった」
突然起きた包帯だらけの怪我人が顔だけをこっちに向けて言い張る。話から察するにこっちの黒髪のケモミミの名前はボタンというようだ。
「私は猫のケモミミ戦士だからな。まだまだ未熟で時代遅れな弓使いには負けないよ」
「えーそんなわけない!……じゃなくて、君と隣の子、大丈夫?頭とか痛くない?」
距離がバグっているのか、彼女は至近距離で零耶の顔を覗く。綺麗な若緑色の瞳と目が合う。
「えー君、ドキドキしてるじゃん!もしかして、僕にときめいた?」
「ち、違いますよ……というか、一応名前を伺っても?」
「あー僕?僕は『クローバ』っていうんだ。君は?」
彼は暫く考えた末、こう彼女に言った。
「俺は……『ゼロ』っていいます」
【銃コレクションNo.2】
Hyston.23
弾薬 ライトアモ
基本ダメージ(頭 /胴体/手足) 255/200/116
DPS 1500~1600
1マガジン/弾薬数 17/20/24/28/30
アドバンスチップ Pen/SH
発射タイプ 5点バースト
比較的リコイル制御がしやすい5点バーストのアサルトライフル。かつてのハル・セントラル・シティにあった秘密研究所が設計、制作した近未来型の銃。ライトアモのアサルトライフルの中でトップクラスの有効射程を誇る。
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